「世に明月の夜が3分あれば、その2分は恨めしい揚州である」。佳人と別れることになった唐の詩人、徐凝が詠った「揚州を回想する」の一部だ。初冬の揚州も格別の趣がある。爛漫たる美しい花は見られなくとも、長堤の春柳、重なり合う青緑の古松、そして江南地方の流水や煙霧と同じような空気があるのだ。揚州に出かけたことのある人はよく口にする。「ぜひ行かなければならないところがある。個園だ」と。
個園は市内東関街318号宅の後方にある。園の主人は黄玉筠さん。竹の君子たる風貌を好み、また竹の葉3枚の形が「个」(個)の字に似ていることから、清代の袁枚が詠んだ「月、竹を映して千个(個)の字を成す」との句意をくみ取って、「個園」と名づけたという。重なり合った石を佳境とするその他の庭園に比べ、個園は竹と石そのものが佳境だ。初冬には、四季を通じて青々とした竹は江南の庭園の中でより個性を際立たせるからだ。
竹のほかに、個園で最も有名なのが「四季の築山」。峰の間に石を重ね合わせる手法を使い、異なる石を用いることで、春夏秋冬の四季の景色を表現しているので、四季の築山と称されている。国内の庭園では唯一のものだ。夏の山を歩いて秋の山に通ずる長い回廊で、ガイドが尋ねた。「この回廊はなぜ世界一長いのでしょう。この長い回廊は夏から秋に通じているからです」
初冬の時節、個園の壁も美しい奇跡をみせる。蔓性植物は、依然として緑をたたえるもの、薄い紅色や濃い紅色、濃い紫色に変わるもの、枝と葉を落として蔓だけを残すものがあり、それを背景に、壁の一面一面が彩色と文様の饗宴を繰り広げるのだ。これらの壁を見ていると、生命の美、自然の美が感じられる。
「チャイナネット」2006年11月6日