百年来初めての大がかりな北京故宮の修復工事

このほど、国家文物局によると、今年から北京故宮博物院に対して全面的な応急修復保護をおこなうことになっている。これは1911年の辛亥革命以来の百年間における故宮に対する最大規模の修復工事となる。

国家文物局文物保護司の晋宏逵副司長はこう語っている。

故宮は1420年に築造されていらい、すでに580余年の歴史があり、歴史上しばしば自然あるいは人為的破壊をこうむったため、ほとんどの建築物が老朽化している。2008年以前に故宮が大きく姿を変え、壮大で美しい古代建築物群が姿を見せるようになることを願っている。

確定された計画によると、修復工事は今年から2008年のオリンピック開催まで続けられる。修復工事の第一段階の測量調査作業が始まった。修復の具体案はまだ検討中である。専門家たちは今年、故宮の未公開の建築物を選んでテストを行うことになっている。修復をおこないながら計画をさらに充実させていくことにしている。

古代建築物の修復は一刻も猶予できない

故宮は世界に現存する最大規模の、最も完全な形で保存されている古代宮殿建築群である。これは故宮が世界文化遺産としての主な内容である。故宮の奥まで入って行けば、これらの古代建築物の修復がたしかに一刻も猶予できないことを深く感じ取ることができる。

武英殿、慈寧殿、寿康宮はいずれも故宮にある重要な殿堂で、長年修復されないままになっているため、一般公開されることができない。それらは今度の修復の重点となっている。武英殿は故宮の重要な殿堂の一つで、それは故宮の外朝の3本の中軸線の西軸線にあり、今度の大がかりな修復工事のテストがおこなわれる殿堂と確定されている。

建築物の基座にある犬走りは排水に用られるものであるが、今ではでこぼこして、多くのレンガには裂け目が入っているため、雨が下にしみ込むことになり、夏に染み込んだ水が冬になると結氷することになる。繰り返し結氷したり溶けたりすることによってレンガがさらに裂けて壊れ、土台の安定を損なうことになる。欄干はすべて漢白玉という石でつくられ、とても素敵なものだが、風化しやすくなっている。礎石はもともとハスの花をかたどるものであったが、今ではそのようには見えなくなり、裂け目が入っているものもある。

また、古代建築物の上に描かれた彩色画は芸術的価値があり、木造の構造を保護ができる。しかし、内側が剥がれてしまったために、保護の役割を果たせなくなっている。専門家たちは「これらの問題は故宮の古代建築群の中でも典型的なものである」と語っている。

晋宏逵副司長はわれわれは修復しながら、専門家らを招いて監督に当たらせ、問題があれば、テスト作業の段階でそれを解決し、故宮の相対的な修復に影響を及ぼさないようにすると語った。

修復が直面する最も大きな難問は技術と材料の使用問題で、舗装される粘土質のレンガがもとのレンガの質と似ているようにすることも考えている。漢白玉の欄干は浸食、風化に耐えうるものでなければならない。大量の良質な木材を必要としているが、大量に森林を伐採することは不可能である。そのほかに、消防と安全システムも部分的に更新、充実させる必要がある。地上にある排水、電線、暖房などの施設は地下に埋設することになる。20世紀70年代に故宮が再開された時に舗装したコンクリート製レンガとアスファルトの路面を入れ替えなければならない。なが年他の部門に占用されていた建築物、および故宮のもとの姿にそぐわない新しい建物について引っ越すか取りこわすか各方面と話し合うことになっている。大がかりな修復作業はさまざまな関係方面とかかわりのあることであり、恐らくこの宮殿を築造することよりたいへんであろう。

文化財はよく保存される必要がある

壮麗で美しい建築物のほか、故宮のいま一つの尊いところは93万余点の珍しい文化財が収蔵されていることである。条件が整っていないため、ごく少数の一部が展示されているだけである。今度の故宮修復におけるいま一つの重要な内容は先進的な施設を備える新しい展示ホールを建設することである。

故宮の古い調度類が置かれている倉庫には、精緻で完璧な明・清時期の皇室用調度品の逸品が展示の場所の制約で展示されることができず、厚いほこりをかぶったまま置かれている。調度類に比べると、数多くの書画、刺しゅう、文房具などの文化財の保存の条件は更に厳しいものであり、地上で展示されないのは、地下に保存するしかないからである。

20世紀の80年代から、国は114の地下倉庫を建設するため1億7000万元を投入し、59万点の文化財がそこに所蔵されている。安全のため、われわれは倉庫に入って写真をとることができなかったが、スタッフは地下の倉庫から未公開の何点かの文化財を持ち出してきてくれた。

故宮の古代器物保管係によると、「これは墨であり、保存に非常に厳しい制限があり、温度、湿度に高い要求があるため、展示することができないのである」ということであった。

故宮宮廷部保管係によると、「これは刺しゅうで飾ったついたてで、すべて植物繊維で染めたものであり、地上展示ホールの光線および湿度問題がまだ解決できないため、多くのものは倉庫の中に収蔵され、展示することができない」ということであった。

故宮の収蔵品の新しい展示ホールを建設することについては共通認識を持つに至っているが、具体案については専門家たちの意見はまだ一致していない。

肖燕翼故宮博物館副院長はこう語る。

展示ホールは現代化を必要としているが、古代建築物の保護には電線など現代的なものを架設することが許されない。展示ホールは地上に建てても地下に設けても、故宮の構内でも故宮の外でも、展示ホールの建設は一朝一夕にしてできることではなく、総合的に数多くの要素を考慮しなければならない。

国家文物局および故宮博物院側は「故宮は天下無双の世界文化遺産であり、故宮に対する修復は古代建築物の保護に役立つだけでなく、収蔵されている文化財の展示と保護に役立つものである。専門家たちはこの原則にのっとって新しい展示ホールの建設方案工事の計画について詳しく検討することになっている。

「チャイナネット」2002年3月21日