中国は世界で最も多くの隣国を持つ国だ。2万2千キロ余りの国境線と1万8千キロ余りの海岸線は、中国に30カ国近く余りの近隣国をもたらし、うち直接国境を接する隣国は14カ国に上る。歴史と伝統の豊かさ、文化と宗教の多様性、社会制度と発展水準の差異が、中国の近隣関係に特殊な複雑性をもたらし、中国の近隣外交の特殊な重要性を決定している。
中国共産党第16回全国代表大会は「隣国に善意をもって接し、隣国をパートナーとする」近隣外交政策を明確に打ち出した。これは中国の近隣外交の実践に対する権威ある概括であり、重大な大局的意義を持つと言えよう。政治的には、隣国は中国が主権と権益を守り、国際的な役割を発揮する上で、最も重要な拠り所だ。経済的には、隣国は中国が対外開放を行い、互恵協力を実施する上での、重要なパートナーだ。安全保障面では、隣国は中国が社会の安定と民族融和を守る上で、直接の周辺環境を形成する。
中国は隣国との交流の歴史において、短期間の紛争や衝突こそあれ、圧倒的に多くの期間は親しく、むつまじく過ごしてきた。1920年代に中国を訪れた英国の著名な哲学者・ラッセルは、「もし、他国に拡張する意思のない大国が世界にまだあるとすれば、それは中国だ。中国人には、他国を統治しようとしない美徳がある」と述べた。
「隣国に善意をもって接し、隣国をパートナーとする」政策は、中国が平和発展路線を堅持する上での、あるべき道理である。百数十年間、中国は列強による侮辱と戦乱による苦しみをいやというほど受け、改革開放後に、ようやく急速な発展の道を歩み始めた。だが中国は依然として世界最大の発展途上国であり、全体的に見てまだ豊かだとはいえない。このため、得難い平和発展のチャンスを十分大切にしており、発展・安寧・調和という良好な環境を、近隣諸国と共に引き続き維持し、さらに発展させていくことを心から希望している。
「隣国に善意をもって接し、隣国をパートナーとする」政策は、調和世界構築の重要な原動力である。調和世界構築の努力は、周辺地域から始めなければならないことに、疑問の余地はない。近隣外交政策の実践の過程において、中国は外交理念の平和性、軍事戦略の防御性、安全保障政策の協力性を重視し、各国の自主性を認め、地域の多様性を尊重しており、これが平和で安定した国際環境、善隣友好の周辺環境、平等互恵の協力環境、相互信頼と協力の安全保障環境の形成にプラスとなる。
「隣国に善意をもって接し、隣国をパートナーとする」の実現においては、必ずや平和共存5原則という重要な礎石、大国と小国の平等互恵を堅持し、他国の国情、他国民の自主的な選択、他国民の正当な権益を尊重しなければならず、他国の内政に干渉したり、無理強いをしたり、ましてや自己の勢力範囲の拡大を図ることがあってはならない。むつまじいつきあいを原則に、安定し調和した国家関係のシステムを、当地域で共に構築しなければならない。
「隣国に善意をもって接し、隣国をパートナーとする」の実現においては、当地域の平和と安定の維持を自己の務めとし、対話と協力による相互信頼の増進を堅持し、平和的な話し合いによって相違点を解決し、周辺の少数の国との間に存在する、歴史が残した問題を適切に処理し、相互理解と相互譲歩の、公平で理にかなう、友好的な協議を堅持しなければならない。従来型の安全保障の問題が除去されず、非従来型の安全保障の問題が急激に増加するという新たな情勢の下で、相互信頼、相互利益、平等、協力を核心とする新たな安全保障観を堅持することは、重要な意義を持つ。ただこれによってこそ、近隣諸国と手を携えて、友好と調和、平和と安寧の地域環境を構築することが可能となるのだ。
「隣国に善意をもって接し、隣国をパートナーとする」の実現においてはさらに、自発的に隣国との互恵協力を強化し、地域・拡大地域協力を深め、地域経済の統合を積極的に推進し、アジア各国との共同発展を実現しなければならない。中国の周辺諸国を見わたすと、経済成長の加速はすでに、現段階における共通課題となっている。経済的利益は日増しに中国と周辺諸国の関係発展における重要な原動力となっており、中国人民の根本利益と周辺国人民の共通利益を結びつけてこそ、協力によって発展が促進される良性循環を形成することができるのだ。
「人民網日本語版」2006年12月11日