バイオテクノロジーはすでに遺伝因子プロジェクト、蛋白質プロジェクト、細胞プロジェクトと動物のクローンなど多種多様の内容を含む現代ハイテクへと発展している。またバイオテクノロジーは新薬品の開発、病気の予防、農業における品種改良、生態系の回復、生物多様性の保護、バイオ資源の持続可能な利用など、数多くの人々の生存と切っても切れない関係があり、もっとも前途のあるテクノロジーの発展方向を代表するものである。本世紀ではもっとも影響力のあるハイテクの新産業群であり、最も生命力のある経済成長チェーンである。
30年以上の努力を経て、わが国のバイオテクノロジーとその産業がある程度の発展をおさめ、遺伝因子プロジェクト、バイオ製薬、クローン技術などで世界の先進レベルに達している。1999年遺伝子交換植物を30万f植え、世界で第四位となっている。しかし、わが国のバイオテクノロジー、特にバイオテクノロジーの産業化は先進国とはかなりのギャップがある。わが国のバイオ製薬技術についてのみ言うならば、バイオ製薬企業は271社もあるが、生産能力のあるものはわずか60社で、産品の種類はわずか21種で、2000年の生産額はわずか30億元で、そして産品のほとんどは模造したもので独自の知的所有権を欠いている。バイオ技術の面では全体のレベルから言えば、アメリカと日本とは10年ぐらいのギャップがある。そのため、われわれは21世紀の最初の10年間にバイオテクノロジー産業を大いに発展させる必要がある。それによってわが国のバイオテクノロジーを世界の先進国の仲間入りを果たせ、新しいバイオテクノロジー産業をわが国の経済の新しい中堅業種へと発展させなければならない。現在、わが国のバイオテクノロジーの研究と産業の発展には真剣に検討し、改善しなければならない問題がいくつか存在する。
一、基礎が薄く、功を焦り、国の戦略措置が欠けること。わが国のバイオテクノロジーの主な基礎は数十年来の外国先進技術への追跡と模倣によるものであり、系統的、独創的な基礎的作業を欠いている。しかし、新しいものを作るには基礎が必要であり、長期的で系統的な仕事と蓄積が必要である。現在、一部研究プロジェクトは短期の応用だけを追求し、自主的知的所有権を持たず、低いレベルで重複するだけで、研究成果の質量が向上せず、進展もあまりなく、目に見える成果もない。
二、科学研究計画においてはめいめいが思い思いのことをやり、調和とチームワークが欠けること。現在わが国のバイオテクノロジープロジェクトに関する国家科学技術計画には「863」、専門テーマの研究、科学技術の高峰の極める、重要プロジェクト、基礎研究、遺伝子植物の特定プロジェクト、自然科学基金など七項目がある。各部門と地方は自ら設置した各種科学研究への助成も一定の規模に達している。しかし、プロジェクトの管理においては上下の計画がうまく繋がらず、互いに協力せず、平行的に発展するなどの問題があり、低いレベルでの重複と資源の無駄使いとなっている。そして各計画そのものも力不足と他のものの協力がないため、研究をふくらませ、向上させ、成功することが難しい。
三、科学研究の力が比較的に分散し、全局的な考え方が欠けること。わが国のバイオテクノロジーの研究力は主に中国科学院、教育部(部は日本の省にあたる)、衛生部、農業部など幾つかの部門に集まっており、機構と学科の設置はほとんど伝統的な仕組みで行われている。ここ数年、一部の改革と調整が行われてはいるが、その基本的なパターンは根本的には変わっていない。そのため、新たに生まれたバイオテクノロジーは独立の部門がなくて伝統的な各学科に分散されたことになっている。研究テーマはそれぞれに分かれて合力となるに至らない上に、大きな成果はなおさら上げる事ができない。したがって、このような体制を打破して高効率的で、精鋭からなるバイオテクノロジー研究所と研究センターを設立し、なるべく早く国家クラスのバイオテクノロジーのプラットホームを作るべきである。
わが国の生命科学とバイオテクノロジーの分野はチャンスに直面問にいると同時に挑戦にも直面している。われわれは戦略的にまたは全局的にバイオテクノロジーの研究とバイオテクノロジーの産業の発展を重視し、発展させる必要がある。そのために私たちはつぎのように提案する。
一、バイオテクノロジーとその産業群の開発への取り組みを強化すること。21世紀におけるわが国のバイオテクノロジーとその産業の発展戦略の目標はバイオテクノロジーをわが国の経済と社会の発展への寄与率の向上に努めることである。それによってわが国のバイオテクノロジーの革新創造能力と国際競争力を強め、バイオテクノロジー産業群が国民経済の中堅の一つとなるようにし、国防建設の中堅分野の一つとなるようにする。
現在、経費の不足はバイオテクノロジーの発展を阻む最大の障害である。研究開発経費の投入は国民生産総額の0.5%しか占めていないが、アメリカは2.6%、日本は2.87%、ドイツは2.58%、イギリスは2.08%、フランスは2.42%、インドは0.89%である。「第九次五カ年計画」期間(1996〜2000年)における「863」計画、国家科学技術専門研究計画、重要基礎研究計画と自然科学基金がバイオテクノロジーと生命科学の分野における一年の経費投入は4〜5億元であり、これは外国の一大手会社の一年の研究投入にも及ばないものである。したがって、バイオテクノロジーの開発プロジェクトの研究と生産を保障するため、国がバイオテクノロジーをバックアップする専門基金を設立することをわれわれは提案する。また、全国のバイオテクノロジーの研究、開発、人力、財力、物力を統一に協調させ、重複したテーマを避け、資源のよりよい配置を実現することを提案する。国はバイオテクノロジーの開発、研究、製造、生産に従事する科学研究院・所と企業に免税政策を実行し、社会でのバイオテクノロジー開発企業とセンターの設立を認可し、助成する必要がある。個人の投資をひきつけるため、政府はそれに応じた法律を定め、実効のある専門項目と知的所有権保護の措置をとる必要がある。それと同時になるべく早くベンチャー投資制度を確立し、規範化すべきである。バイオテクノロジー産業は異なった発展段階に資金を持続的に投入することが必要である。十分な資金の保障があってこそはじめて創意に富んだ大きな市場潜在力のあるプロジェクトが成長できるのである。先進国の実践からベンチャー投資はその中でのバックアップとブースターの役割を果たしていることが分かる。
二、丹念に画策し、合理的に配置し、バイオテクノロジーの新しいものを創造する仕組みを確立すること。国家バイオテクノロジー新製品創造指導グループを成立し、指導の力を強化することを提案する。配置が合理的で、分業がはっきりした、高効率のバイオ新物質創造システムと市場化の運営機能を確立する。国家バイオテクノロジーセンターを早くつくるべきである。このセンターはバイオ情報分析、遺伝因子の順序の測定、遺伝因子の機能の鑑定、遺伝子交換技術、バイオ安全研究評価、動物クローンの条件を含むものである。特色のある研究をすすめている地方は協業ネットを構築し、特殊な専門的な任務を担当し、それは動態的で、固定していない作戦メンバーとする。ともにわが国のバイオテクノロジーが中心のある、外部組織のある、点もあればネットワークもある戦略的配置を構成することを目指す。
三、戦略的重点を選定し、専門研究の期限を決めること。国はまず戦略的な意義のある重要プロジェクトを専門研究のテーマにすべきである。例えば、人類遺伝子グループ計画の完成と製薬業との関係、重大な病気に関わる遺伝因子のクローンと鑑定、動物のクローンと組織器官のプロジェクト、遺伝因子チップなどがそれであり、これらの研究の優れた成果の獲得を目指すのである。
(作者は中国老齢協会の元会長)
「チャイナネット」2002/04/08