王曦委員:生態環境保護の立法の加速を
 

わが国の現在の生態環境は「局部的には改善が見られ、全体としては悪化しつつある」という状態にるる。この数年、黄河は水涸れがますますひどくなり、長江は洪水の災禍に見舞われることもあり、北京などの地域を襲う黄砂のあらしが頻繁に発生していることから生態問題の深刻さが目に見えるものとなり、わが国の生態の安全が脅かされている。そのため、生態環境保護の立法を急ぎ、生態環境保護を法治の軌道に乗せるべきである。

わが国の現行の環境資源についての法律、法規の中には生態環境と生態機能保護と関わりのある法律がたくさんある。『自然保護区条例』『風景名勝区管理暫定条例』などのような特殊区域の生態環境保護法規は生態環境の保護を主な内容とするものである。しかし、わが国の生態環境保護の面での立法は依然として不足している。それは主につぎの面に現れている。

一、現行の環境資源の法律における立法にあたっての考え方は生態環境保護を軽視するものである。わが国の『環境保護法』は公布されてすでに20年以上になり、法律の調整範囲にはほとんど大きな変化はなく、全般的にはやはり環境汚染対策法を核心とする伝統的な環境法体系となっている。

二、現行の環境資源の法律は生態環境保護に関する管理制度と措置を欠くものである。

三、現行のさまざまな面からのタテ割りの分散した環境保護と資源管理の体制は生態環境の保護にはマイナスとなっている。

四、現行の法律にある生態環境破壊に関する法的責任についての規定を強める必要がある。多くの法律には生態環境保護に関する禁止規定はあるが、それに応じた法的責任についての規定がない。現行の法律は生態機能保護に違反する行為に対する処罰が軽すぎる。生態環境の破壊でひどい結果をもたらした数多くの違法行為には罰金だけで済ませることになっているし、罰金の額が低い気がする。また一部の社会への危害の大きい行為や草原などの生態環境を破壊する行為については、行政責任を追及するだけで、それに応じた刑事責任の条項を設けていないのでその刑事責任を追及することができない。

当面わが国の生態環境が直面している厳しい問題を解決し、環境資源の立法制度を改善するため、つぎの提案をおこなう。

一、生態機能を保護する立法を強めること。わが国の川などの水源地、重要な水源涵養区、土壌保全の重点予防保護区、重点監督区、河川洪水調整貯水区、防風砂固定区、重要漁業水域においてはいずれも生態保護を行う必要がある。現行の自然保護区、風景名勝区および森林公園についての立法はわが国の重要な生態機能を保護し回復する必要を満たすことができず、生態機能保護区の立法は非常に必要である。

二、生態環境保護の立法の中で管理手段の総合化が必要であること。第一種の手段は命令と制御で、行政管理を強調する手段だが、管理コストが高い。第二種の手段は市場による経済刺激手段であり、受け入れられやすく管理コストが低い。第三種の手段は情報公開の手段で、公衆による監督を強め、新しい生態経済文明を唱える。

三、立法の内容とレベルにおいての多元化が必要であること。生態保護の立法はレベル別、種類別に分ける必要がある。自然保護区と風景名勝区に対する立法は厳格に守るべきで、生態機能保護区の管理についてはすぐに立法して規範化すべきである。また、都市生態環境保護の立法を重視すること、地区レベルや省(省は日本の県にあたる)レベルの生態モデル区を建設すること、生態モデル区と生態農業県の管理に対して立法すること、それと同時に地方生態環境保護の法規と監督制度を充実し、改善することが必要である。

四、他の環境資源の法律を制定し改正するときには、必ず生態環境の保護と整備を強調し重視すること。

(王曦委員は武漢大学法学院の教授で、湖北省人民検察院副検察長である)

 

 
  Copyrights © 2002 China Internet Information Center All Rights Reserved