中秋の月餅
中国には、伝統的な祭日とゆかりのある食品がたくさんある。たとえば元宵節の元宵、端午節のちまき、重陽節のむし餅などで、中秋節の伝統的な食品は月餅である。月餅は形が圓型で、団圓(団らん)を象徴し、一家団らんという人々の願いをあらわしており、このためまたの名を「団圓餅」とも呼ぶ。

月餅は唐代に起源し、宋の時代には一般に普及した。『燕京歳時記』―「月餅」には、「月餅を供える家はあちこちで見られ、大きなものは尺余に及ぶ。上には月の宮殿やひきがえる、兎の形があしらわれる。月に供えてから食べる者がおり、除夕まで残しておいて食べる者もいる」と記載されている。蘇東坡はある詩の中で、「小餅は月を嚼する如く、中に酥や飴が有り」と、月餅の形や中味を説明している。

明の時代には、民間でお互いに月餅を贈りあって、団らんを祝う風習があった。清の時代には「月餅は桃のように軟らかいあんをいっぱいに入れ、その味はアイスクリームのように甘く、色は砂糖のように白い」という説明があって、いまの月餅と非常に似かよっていることがわかる。現在の月餅はそのつくり方、味など地方によって異なり、品種も色どりも千差万別である。人々はそれぞれ自分の好みによって選ぶことができる。蘇州の蘇州式月餅の特徴はもろくて薄い皮をいく重にも重ねたことで、百果(ミックスあん)、小豆あん、椒塩(食塩と粉さんしょうを甘味のミックスあんにまぜたもの)、新鮮な豚肉あんなどの品種がある。北京の北京式月餅は、皮にもあんにも植物油が用いられるのが特徴で、潮州の潮州式月餅の特徴は、皮にもあんにもラード油と砂糖が多いことである。広東の広東式月餅の特徴は、皮に油がたっぷり含まれていて色が鮮やかで、皮がうすく、あんが多く、形が美しく、品種が多い点である。たとえば、椰蓉(やしの果肉をつぶして、こしあん状にしたもの)、蓮蓉(蓮の実をすりつぶしたもの)、五仁(落花生、スイカのたね、くるみ、ゴマ、杏仁)、蛋黄(卵の黄味)、焼鶏(焼きトリ)、ハム、木犀の花、なつめなどのあんと、いろいろな品種がある。毎年中秋節になると、人々はいそいそ月餅を買いもとめる。

中秋節には、月を祭り、月餅を食べる他に、各地でそれぞれ異なった風習がある。ある地方では中秋節に木犀の花を賞で、ある地方ではこの夜にブランコ遊びをし、また団らん飯を食べ、甘酒を飲み、蓮根やひしの実を食べる地方や、灯篭踊りをおどり、山歌をうたう地方もある。民間では、中秋節は団らんの日というしきたりが、いつのまにかできあがっているので、里に帰っている女性でも、この日は嫁ぎ先に戻って夫やその家族たちといっしょにすごさねばならない。

 
 

 

 

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