２０００年１０月２９日、浙江省第９期人民代表大会常務委員会第２３回会議は、浙江省の『中華人民共和国消費者権益保護法』（以下『消費者法』と略す）の実施方法に改訂を加えたが、今回の改訂結果が公表されるや、各方面の人びとの注目を引いた。

　公平な競争を保護し、業種のカベをうち破り、市場と経営者の行為を規範するため、また、いちぶの市場統一を口実に、店舗または露店の貸出しで金儲けする一方、法律責任を逃避する市場経営者と貸出し人に対して、改訂後の実施方法は、専門的な関連条項を制定している。とくに医師・患者関係、建て売り住宅、セールス後の「三包（アフターサービス）」（修理、とり換え、返品の受理をさす）などの問題について、さらにハッキリした法律規定を行なっている。中国国家工商局法規司王学政司長は、改訂後の方法は上述『消費者法』の保護範囲に新たな分野を示し、『消費者法』の実施可能性を大きくした、と語る。

患者もまた消費者である

　近年らい、医師側と患者とのトラブルは日ましに増え、患者とその家族に、証拠提出困難、鑑定困難、法律にもとづいて公平を取り戻す困難が存在しており、これらの多数は、いずれも患者の事実を知る権利、健康権、補償獲得権、公平交易権などが当然得られる尊重が得られないこと、さらには個別の病院と衛生主管部門との相互のかばいあいと関係のあることもある。この外、医療費徴収問題は、社会では暗い洞穴とたとえられ、レシートがハッキリと「水増しした勘定」と分かっていても、証拠提出困難のため、多くの患者は怒りをこらえてじっと我慢する態度を取らざるを得ない。患者がたとえ、とことんまで、つきとめる態度を取っても、得たものは往々にして、さまざまな責任逃がれの口実しかない。

　改訂後の浙江省の『消費者法』は、医師・患者関係を『消費者法』の調整範囲に組み入れ、力強く患者の法的権利――事実を知る権利、補償獲得権を保護した。『実施方法』の第５２条は、医療機構もまた経営者に属すると規定している。第５条の規定では、医療機構などの業種のサービス対象も、消費者に含まれる、としている。

　この外、『実施方法』の第２５条、第２６条は、明確に「医療機構は、患者の、自分の病情、診断治療についての事実を知る権利に対して尊重する」と規定している。

　「医療機構が診療・看護による奉仕を提供するさい、不合格の薬品、不合格の医療器械あるいは医療管理の法律、法規、規則制度と診療・看護の規範に違反する診療や、看護のミスにより、患者に人身傷害をあたえた場合、法律に依り民事責任を負わなければならない。医療事故を構成した者は、国の規定にもとづいて処理される。」

　上述のこうした条項は、多年にわたって踏襲してきた「患者は消費者ではない」、「病院は福祉機構」として「医療リスクを引き受けるべきではない」といった古い観点に対して、根本的な是正を行なった。第２５条は、患者の事実を知る権利などの、患者と直接にかかりあう利益をいかにして保護するかについて明確に提起した。浙江省は、『消費者保護法』の実施方法の改訂を通じて、立法の角度から、患者に事前の保護をあたえ、医徳を重んじない、医術低下の医療機構と医療・看護人員に法律の威力を見せつけることによって、疑いもなく、多量の医療トラブルを減少させることになろう。

住宅の購入は安心できるようになった

　マイホームを持つことはわれわれの願いであるが、しかしこの数年、建て売り住宅の購買に関するクレームはあとをたたず、はては年毎に上昇の勢いを見せ、「いちばん多く金がかかる割に、保護をうけるのは最小」の消費財となり、金があっても買う勇気がないのが実情だ。中国消費者協会の統計によると、１９９９年に消費者が消費者協会に対して２万１２３５件に及ぶ建て売り住宅に関するクレームを寄せている。これは１９９８年より、２割増えており、２０００年の第３・四半期は１万５７４３件に達している。クレームから反映された主な問題は、ウソ偽りの広告で購入者をワナにかけ、聞こえのよい理由を出しては無償で消費者の「予約金」、「前払い金」を占有し、実用面積が不足だったり、購入後の「三包」の義務を負わず、「不動産購入証明」を発給しないなどがある。不動産業者が悪意で消費者の利益をそこなうのは、不動産業業種に国の法律の精神に合致した自己規制に関する規定を制定しておらず、消費者の実力が弱いこと、権利侵害後の証拠取得困難、行政主管部門による監督取締りでは力不足である外、非常に重要な原因の一つとして、地方保護主義が法律・法規の具体的条項の規定がないのにつけこんで、常に違法不動産業者をえこひいきしたり、悪事をかばったりすることが挙げられる。

浙江省人民代表大会は調査研究の基礎の上に、さまざまな問題について、業界の既得利益をまもる人びとの意見に大胆に否定的な態度をとり、『実施方法』の第２８、２９、３０、３１条で、家屋の返却、家屋修理の保証、不動産管理会社の選択、室内装飾などについて取り決めを行なっている。これらの規定は、建て売り住宅購入の消費者に全面的かつ有力な保護をあたえ、非合法経営者の「保護の傘」を叩きおとした。とくに、予約販売許可証を取得していないのに、建て売り住宅を予約販売し、または竣工・検査合格を経ていない建て売り住宅を引渡し、建て売り住宅の建築面積と使用面積、構造、向き、建物の階層、引渡し時間などが契約の約束に違反し、規定時間内に不動産所得税証、家屋所有権証と土地所有権証などの登録に必要なすべての資料を提供せず、または委託協議によって約束期間内に上述の証明書を完了せず、住宅区の緑化、家屋の間隔・容積率など外部環境及びその他の関連施設が承諾と合致しない（国家の建設需要により計画変更の場合を除く）などの五つの家屋返却条件の規定は、いわば非合法経営者にふりかざした「鋭い剣」となり、広範な消費者にとって安穏に暮らす「福音」となるであろう。

この『実施方法』の規定にもとづけば、消費者の家屋購入は法律的保障をもてるようになり、安心して建て売り住宅を購入できるようになる。

「三包」には細かな規定

「三包」は、中国で多年にわたって実施されてきたが、今回の浙江省『実施方法』の中で、専門の章――第三章の形式で、もとの規定について一歩進んだ細分化、量的化が行なわれ、さらに実施可能性が強まった。

きく所によると、中国の国内消費財の種類は４０〜５０万に達し、自動車、移動電話、不動産、コンピューターなどの製品もまたすでに、あるいは逐次に集団消費の分野を主としていたことから個人消費へと移りつつある。現在「三包」行政規定のある商品目録は、わずかに国家の六つの部・委員会規定の１８種類と国家の四つの部・委員会制定の農業機械の合計１９種類である。消費者に対する保護を強めるため、浙江省『実施方法』は次のように規定している――国家規定の修理、取り替え、返却請け負いの商品の外、浙江省工商行政管理部門は、浙江省の質量技術監督、経済貿易行政主管部門、関連業界主管部門と共同で、浙江省の実際にもとづいて、「三包」の商品目録及び具体的な請け負い期限を取り決め、かつ「『三包』の商品目録は、消費者協会と消費者代表の意見を聴取すべきこと」を要求している。この外、「三包」の期限を明確にし、「三包」の法律規定期限を確保し、商店によって「私定」することはないようにした。また、期限通りに修復できない場合、一日おくらす毎に商品価格の千分の一の引き延し費用を弁償することを規定した。大型家電の修理、返却、取り換えはこれまでずっと消費者にとって頭の痛い問題であった。冷蔵庫、洗濯機といった大型家電を、商店から家に運び、ふたたび家から商店へと運ぶことを考えただけでも悩みの種だが、今回、消費者利益を実際に守るため、『実施方法』は、経営者は輸送費、仕事におくれた費用、交通費などの合理的費用を負担すべきことを規定した。

きく所によると、浙江省は『実施方法』の中で、「三包」に対し、実施可能性の高い規定を定めたあと、政府は建て売り住宅、自動車、コンピューターなど３２種の商品により具体的規定を提出し、これによって、法律のすきまを狙う経営者に、消費者の合法的権利を無視する口実をなくすことになる。

消費仲裁確立の実行可能性

『消費者権益保護法』は、消費紛争解決の五つのルートを規定しているが、長期にわたって、第四のルート――仲裁は、ずっと有名無実で、効果的に運営されず、消費者が裁判所で訴訟する時は手間がかかり、骨が折れ、金がかかるだけで、消費者協会にクレームをもちこんでも強制力はない。十分な論証と社会調査を経て、浙江省人民代表大会は立法の形式で、消費者協会で消費紛争仲裁機構を設立できることを規定しており、かつ「小額消費紛争の仲裁は、仲裁費を免除または軽減できる」と規定した。この規定の公表後、多くの地区の消費者協会は、すぐ消費仲裁機構の設立に着手した。杭州市消費紛争仲裁機構成立のニュースが公表された一週間内に、杭州市消費者協会は２００あまりの仲裁要求または仲裁に関連する情報提供を求める問い合わせ電話があったという。

全国人民代表大会民法室巡視員であり、かつて『中華人民共和国消費者権益保護法』の起草に参加した専門家の何山氏は、『実施方法』に提起された消費仲裁は、多年らいの実践の中での悩みを解決したと考える。『消費者法』の中で消費紛争は仲裁を通して解決できるとしているが、しかし実践の中での仲裁活動は、主として商事活動のために準備されている。一方では、この種の仲裁機構は、基層機構で設立されておらず、いちぶの経済の発達した大都市のみに設立されており、もう一方では、商事仲裁は標的に対し最低数字の制限があり、消費紛争の中で多くの標的の数字は、その要求に達していない。この外に、商事仲裁は仲裁員に対する要求が高く、北京で一度模擬テストを行なったが、合格したものは数百人にすぎない。しかも商事仲裁員は料金を取るので、消費仲裁と適応せず、したがって商事仲裁所は小額消費仲裁には実用的ではない。このたび、浙江が消費者協会内に、消費仲裁機構を設ける規定を行なったが、それは『消費者保護法』実践に対する大胆な試みである。

新・難分野では、新しい規定

これまでの多くの消費の分野では『消法』制定の時には問題がなく、あるいは厳しい問題がなかった。しかし社会経済の発展にともない、いちぶの業種の矛盾は、ますます増大している。これらの業種に対する規範のため、今回の改訂後の『実施方法』は、多くの具体的規定を増やした。

スリルに富む遊楽の面で、これまで長い間、多くの経営者は、遊覧者の生命の安全を無視してまで最大の利潤を求めていた。応急のさいのプランがないばかりか、最も基本的な措置さえなかった。このため、『実施方法』は、スリルに富む遊楽項目について、応急措置と救護プランを制定すべきことを規定した。

ここ三年らい、ツアーはずっとクレームの多いホット・スポットで、いちぶの不法経営者はいわゆる「バラ客費用」、「最低価格」、「特別優待価格」などの名目で消費者を誘ったあと、あらゆる手だてを尽くして出費させ、消費者からクレームが出ると、さまざまな口実で責任のがれの態度を取っている。このため、『実施方法』の中で、旅行会社は、明示していない費用を取ってはならず、日程は明確にし、安全を確保すべきことを明確に規定している。

独占的地位にある公益事業については、サービス提供のさい、『実施方法』は「商品とサービスの質を保証しなければならず、提供した商品とサービスの質が国の規定する基準あるいは約束と一致せず、消費者の人身と財産に損害をあたえた場合、民事責任を負うべきである」と規定している。これで、クレームの多いホット・スポット、例えば水、電気、天然ガスなどの供給公司、航空、水上運輸、鉄道、道路の旅客輸送公司、郵便、電信、ケーブル・テレビなどは、いずれも制限を受ける。

公演については、「興行経営者は俳優、演目、時間と広告宣伝と一致すべきである」と規定し、もし一致していなければ、消費者は、「切符を買いかえまたは払い戻し」を要求する権利があり、また必要のさいは、「消費者が払うべき交通費、仕事を休んだ分の給料などの合理的費用」を弁償すべきであると規定した。これによって、若干の、無責任の演出公司または個別の俳優が大衆の利益を無視し、ニセ者の「スター」を使ったり、ナマで歌うことを録音に替えたり、はては、勝手にプログラムを変更するなどの方式で消費者をだます現象を制止することができる。

クリーニング、修理加工、撮影・現像・焼き付、美容・理髪などトラブルの発生し易い業種に対しても、詳細かつ具体的で、消費者の権益を保護するのに有利な規定を制定した。上述のサービス業種では、「高い値段をふっかける」現象が多く、トラブル解決が困難であることは公認の事実であり、これに対し、業種の行政管理部門が厳格に法律を執行しておらず、業種の自己規制が良くないのは、これまた事実であって、消費者はこれまで、すこぶる不平を並べてきていたが、法律を通じてこれらの業種に対して明確な規定があれば、消費者は安心して消費することができる。

上述の若干の規定から、読者のみなさんは、前出の記者と同じような結論を出すことができよう――浙江省の消費者は、いちばん幸わせで、本当の神様だ、と。シンポジウムで、人民代表大会の法律専門家楊明侖氏は次のように述べた――浙江省の実施方法は、全国の立法に豊富な実践を提供した。新しい方法は、市場における絶え間ない完備・発展の需要に適応し、『消費者権益保護法』を実施の中でさらに充実させ、消費者の権益保護の実施を強め、消費者協会の役割を強めたのである。

「チャイナネット」2001年1月9日