国連エイズ(AIDS)企画署(UNAIDS)の1999年末までの統計によれば、世界におけるHIV (エイズのこと) 感染者数はすでに5310万人に達していると見られている。そのうち、生存しているものは3430万人。HIV/AIDS感染死亡者数は累計1880万人に達し、HIV感染者数は平均毎日15000人のスピードで増えている。南アジア、東アジアはアフリカに次ぐHIV感染者の増加と感染が深刻な地域と見なされている。中国ではHIV/AIDSの感染はすでに局部的地域から広い地域にひろがっており、感染率はアジアで4位、世界で17位となっている。2000年までに中国のHIV感染者は60―100万人にも達すると見られている、という厳しい状況に直面している。私たちは全国であらゆる方法でその拡大のテンポをスローダウンさせなければならない。2010年を目標に全国のHIV感染者数を150万以下に抑えることを考えているが、これは決して簡単に達成できることではない。HIV/AIDSの臨床治療は「中国のエイズ予防と制圧中・長期計画(1988―2010年)」の中で打ち出されたHIV/AIDSの予防と制圧の重要措置の一つである。HIV/AIDSの臨床治療は第一線に立つ医師と看護婦たちの責務である。
これまでの4年間に、アメリカおよびその他の先進国、例えばヨーロッパ西部地区とオーストラリアはエイズの感染ルートを遮断すると同時に、感染者に適切な治療を実施するなどの予防、制圧措置をとることによってエイズ感染者と死亡者数を減少させた。最も効果的な治療は抗HIV薬物の使用で、プロテイナーゼ抑制剤を含む二種類以上の薬物を使用する総合治療法が採用されるのが一般的である。この総合治療法は抗逆転録病毒に対する治療の最も効果的な方法である。HIV感染者に対する治療では著しい成功例が見られ、すでに16種類の抗HIV薬物がアメリカでFDAの認可を得た。効果のある抗病毒治療は成人、青少年だけでなく、児童とHIV感染妊婦にも適するため、その規範化指導方針は広く普及されている。適切に応用すればHIV感染者の予後を提示できるし、HIV感染母子の感染率も著しく減らせる。
中国の多くの地域ではエイズに対してまだ認識不足で、エイズが中国を脅かしている現実、エイズに対して世界で採用されている方法などを国の指導者、専門家たちと国民の間で広くPRする必要がある。中国ではエイズに対する臨床治療と看護は始まったばかりで、医師特に看護する人たちもエイズの臨床診断、治療と看護に関する基本知識が足りないため、中国ではエイズ感染の拡大、感染者の特徴及び社会環境に適した治療方法を制定する必要がある。1999年5月、著名なグランスウィカンモサトン製薬メーカの協力を得て、衛生部エイズ予防・制圧センター臨床病毒室が北京市地壇病院において双汰芝(combivir)と加佳息患(Indinvir)を用いて規範化抗HIV治療を行ない、喜ばしい成果が見られた。その経験を国際会議や製薬工場で紹介されることは、中国のHIV/AIDSの予防治療に対しても深い影響を及ぼすに違いない。
地壇病院の治療と同時にセンターは全国的範囲で臨床治療スタッフの養成にも着手した。1999年11月8日、北京、上海、雲南省などの省、市、自治区及び香港と台湾地からの100人の医師と看護婦、伝染病予防要員の参加する第一回HIV/AIDS臨床治療・看護学習班が広西自治区の南寧市で開催され、エイズの臨床治療に存在する諸問題について熱心に検討を行なった。この学習班をきっかけに中国各地の臨床医師と看護要員のHIV/AIDSの予防と治療への参加の序幕が切って落とされた。
HIV多発区の多くは遠い辺境の省で経費が不足しているため、第一線の医師や看護要員は訓練を受ける機会が少ないということを考慮して、エイズ予防と制圧センターは新疆ウイグル族自治区、四川省、河南省、山西省、甘粛省と雲南省を含むHIV多発の省や自治区を巡回してエイズ関係の医師や看護要員の育成訓練を始めた。
第二の臨床治療グループは默沙東公司の出資で佳息患(Indinvir)に施多寧(Strocin)を加えて治療を実施することになった。2年間にわたった臨床治療養成訓練班の成功により、各地域の関係部門のサポートを得て上海、新疆ウルムチ市、雲南省昆明市、河南省鄭州市、北京市、広州市など多くの省や市に治療ステーションを設置して多くのセンターによる発展をはかることになった。薬物を各ステーションに送り、共同で臨床治療活動(感染者20名)を展開することによってエイズの規範化治療を全国で行なうことが実現した。第三臨床治療グループは百時美施貴宝公司の出資(DDIとD4T)で(同時に勃林格殷格翰公司との協力も希望)また30名の感染者が治療のチャンスを得ると同時に、約50名の経済条件に恵まれた感染者も自費で薬を購入し、センターの指導に従って治療を受けている。
抗逆転録病毒治療法は著しい治療効果を収めたが、血液の中に微量HIV−IRNAが存在する患者の体内に、薬のまわれない所に病毒があいかわらず存在している。またHIVの薬物耐性の出現も問題になっている。多くの感染者はこの療法による治療を受けてから免疫力にある程度の改善が見られたが、その免疫システムの完全な回復と体内病毒を徹底的に取り除くことはできなかった。そして薬物が高価格であるなどの原因で薬物治療はむずかしく、特に発展途上国では難しい。中国ではエイズ感染が速く、HIV感染者が絶えず増加するにつれてエイズ患者も増えていくだろう。この現実に鑑み、保健教育を基本とする予防措置の外に、エイズ感染者と患者に積極的な治療を施すべきである。欧米諸国の効果的な薬物治療経験を参考にすると同時に、あらゆる方法で漢方薬による治療の研究に取り組み、中国独自のHIV/AIDSの予防と治療の道を開くことをめざし、それが成功すれば世界のHIV/AIDSの予防・治療に大きく貢献することになろう。
曹韵貞氏、衛生部エイズ予防・制圧センター副主任・臨床病毒室主任
「チャイナネット」2001年1月11日