立秋の養生
大暑の後において、四季が移り変わり立秋となった。秋は草木が枯れる季節であり、秋の到来を予告するものである。暦書によると、「斗が南西を指すと、立秋となり、陰の意は大地を出て万物を弱めることに始まり、秋が示すところは、穀物が熟すことである」。この時の太陽の黄経は135度となる。この日から、空高く天気がさわやかで、月が明るく、風が清らかで、気温は暑いことから次第に下がるようになる。ことわざによると、「立秋の日になると、涼しい風が吹いて来る」、つまり立秋はさわやかな季節の始まりである。しかし、中国は国土が広く、緯度、海抜が異なっており、実際には立秋の日になっても、同時にさわやかな秋に入ることはできないのである。その気候の特徴から見て、立秋になっても盛夏の余熱が残っているため、秋の日差しはほしいままにふるまい、特に立秋の前後に、多くの地域は依然として蒸し暑く、それゆえに平素から「残暑」のいわれがある。気象データによると、このようなむし暑い気候は、往々にして9月の中旬と下旬までつづき、そのあと、天気が真にさわやかになる。

 立秋の日は農民の方々にとってとくに重要であり、農作業の諺によると、「秋に雷が鳴るならば、冬の農作物は減収となり」、「立秋に1日晴れるならば、農夫は力を入れることがなくなる」。これは立秋の日に雷を耳にするならば、冬になると農作物が減収になることである。もし立秋の日に晴れ渡っているならば、天候は順調である。農作業は日照り、過度の降雨量などの心配をすることはなく、何もせずに豊作を待つことができる。

そのほか、「旧暦の7月に立秋になるならば何でも取り入れることができ、旧暦の6月に立秋になるならば何もかもなくなる」、「立秋の前に北風が吹くならば立秋の後に雨が降る。立秋の後に北風が吹くならば川の水がなくなる」という言い方もある。つまり、旧暦の7月に立秋になるならば、五穀豊作の見込みがあり、もし立秋の日が旧暦の6月であれば、五穀は熟していないので必ず減収になる。立秋の前に北風が吹き始めると、立秋の後に必ず雨が降ることになり、もし立秋の後に北風が吹くならば、その年の冬に干ばつが発生する可能性がある。

 中国の封建時代においては、立秋の日に秋を迎える習俗があり、この日になると、帝王たちは文武百官を郊外に率いて、壇を設けて秋を迎える。この時は兵隊は戦闘の技を磨き、戦いにそなえる季節でもある。これをみても分かるように、立秋の日がどんな天気であるかはこれほど重要なのである。

 立秋は秋に入る始まりであり、『管子』の記載によると、「秋になると、陰の気が下がり始め、ゆえに万物は収斂する」。秋の養生の中で、『素問・四気調神大論』は「四季の陰陽は、万物の根本であり、そのため、聖人は春、夏になると陽を養い、秋、冬になると陰を養い、その根から養い、ゆえに万物と成長の入口で栄枯盛衰し、その根に逆らうならばその本を切り、その真を悪くする」としている。これは四季の保養に対する古人の目的であり、四季の養生に順応するには春に生え、夏に生長し、秋に収穫し、冬に蔵するという自然の法則を知らなければならない。寿命を延ばす目的を達成するにはそれに順応し、それに従わなければならない。

自然界全体の変化は順を追って漸進する過程であり、立秋の気候は暑いものから涼しいものへと引き継ぐ節気であり、陽の気がだんだん収斂し、陰の気がだんだん長くなり、陽の旺盛から陰の旺盛に次第に変わる時期でもあり、万物が熟して収獲する季節であり、人体の陰陽交替に陽が消え、陰が生長することが現れる過渡期でもある。そのため、秋の養生は、凡そ精、神、情、志、飲食、日常生活、運動は収斂を養うことを原則とし、具体的に言うと、漢方医学の理論の中の物事の属性の五行(木、火、土、金、水)を分類してまとめることである。たとえば自然界の五音(角、征、宮、商、羽)、五味(酸、苦み、甘、辛、塩辛い)、五色(青、赤、黄、白、黒)、五化(生、長、化、収、蔵)、五気(風、暑、湿、燥、寒)、五方(東、南、中、西、北)、五季(春、夏、長い夏、秋、冬)。人体の中の五臓(肝臓、心、脾臓、肺、腎臓)、六腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)、五官(目、舌、口、鼻、耳)、五つの形体(筋、脈、肉、毛皮、骨)、五つの情と志(怒ること、喜ぶこと、思い慕うこと、悲しむこと、恐れること)、五声(叫ぶこと、笑うこと、歌うこと、泣くこと、うめくこと)。

これをみても分かるように、秋の養生は肺に適応し、肺にとっては志は悲しみ(憂い)で、悲しむならば肺を傷つけやすく、肺の気が弱まるならば好ましからぬ刺激に対する体の耐性が低下し、悲しむ情緒を起こしやすくなる。そのため、自ら養生に取り組む時に自然の法則に絶対に背いてはならず、古人の綱要に従って「志を安寧にさせ、秋の刑罰をゆるめ、神、気を収斂させ、秋の気を平らにし、外にその志がなく、肺の気を清くし、これは秋の気の適応であり、収斂を養う道でもある」。

一、精神による養生 心を静かにし、神と志が安寧で、気持ちがのびのびするようにすれば、心配事を悲しみ、感傷的になることをぜひ避けねばならない。感傷的になることにぶつかっても、進んでそれを解決し、草木を枯らす気を避けるべきであり、同時に神の気を収斂させ、秋の平らな気に適応すべきである。

二、日常生活による養生 立秋になると、すでに空高く天気がさわやかになる時であり、「早寝早起きし、ニワトリのときの声と共に始める」ということを始めるべきである。早寝は陽の気の収斂に順応し、早起きは肺の気を広げさせ、収斂しすぎることを防ぐべきである。立秋になると、初秋の季節となり、真夏の暑さはまだ終わっておらず、涼しい風が吹くが、天気はたえず変化し、同じ地区でも「一日に四季があり、十里(5キロ)には異なった日がある」という状況も現れる。そのため、衣服は多すぎてはならず、さもなければ気候が寒くなることに対する体の適応能力に影響を及ぼし、冷え込んで風邪を引きやすくなる。

三、飲食による養生 『素問・臓気法時論』は「肺は秋を主とし……肺は収斂し、急いで酸っぱいものを食べてそれを収め、酸っぱいものを使ってこれを補い、辛いものを使って下痢をすることになる」と書いている。これを見ても分かるように、酸味が肺の気を収斂させ、辛の味は発散して肺を傷つけ、秋になると、発散すべきでなく、収斂すべきであり、そのため、できるだけネギ、ショウガなどの辛いものを少なめにし、酸味のある果物、野菜を適切により多く食べる。秋は肺の金が盛んになり、肺の金があまり盛んになれば肝臓の木を克ち、それゆえに『金匱要略』には「秋になると、肺を食べない」という言い方がある。秋になると、燥の気が盛んになり、唾液を傷つけやすく、そのため、飲食は陰を滋養して肺を潤すべきである。『飲膳正要』は「秋の気は乾燥し、麻(ぴりぴりしたもの)を食べてその燥を潤し、冷たいものを禁じるべきである。更に秋になると、生地のかゆを食べ、陰を滋養して燥を潤さなければならないと主張する人もいる。要するに、秋には、ゴマ、もち米、うるち米、ハチミツ、ビワ、パイナップル、乳製品などの柔らかいものを適切に食べたほうがよく、胃を益し、唾液の分泌を促すのである。

四、運動による養生 秋になると、さまざまな運動を展開するよい時機であり、それぞれの具体的状況に基づいて違った運動種目を選ぶことができ、ここでみんなさんに秋の養生功をおすすめしたい。つまり『道臧・玉軸経』に記載されている「秋季吐納健身法」であり、具体的なやり方は次の通り。明け方に顔を洗ってから、室内で目を閉じて静座し、まず歯を36回叩き、さらに舌を使って口の中をかき回し、口の中に唾液がいっぱいになると、数回練習して、3回に分けて飲み込み、意を使って丹田まで送り、片時止めて、ゆっくり深呼吸をする。息を吸い込む時、舌は上あごをなめ、鼻で息をし、意を使って丹田まで送る。更に息を口の中からゆっくりと吐き出し、息を吐き出す時に灑という字を黙読するが、声を出してはならない。これを30回繰り返す。秋になって、この功を堅持すれば、肺を守り体を丈夫にする効がある。

立秋のメニュー

生地黄のかゆ

[使う材料] 生地黄25グラム、米75グラム、白砂糖ちょっぴり

[作り方] 新鮮な生地黄をきれいに洗ってきざみ、適量の水を入れて火の上に置いて30分間ほど煮沸してから、薬の汁をきって、さらに一回煮て、2回の薬を一緒に入れて100ミリリットルまで濃縮し、必要に備える。米をきれいに洗って白いかゆになるまで煮て、熱いうちに生地の汁を入れて、よく混ぜて召し上がる際に適量の白砂糖を入れて味をととのえればよい。

[効能] 陰を滋養し胃を益し、血を涼にして唾液の分泌を促す。このメニューは肺結核、糖尿病の患者の食事とすることができる。

黄精とブタのもも肉の煮込み

[使う材料] 黄精9グラム、党参9グラム、ナツメ5個、ブタのもも肉750グラム、ショウガ15グラム、ネギ適量

[作り方] 黄精を薄切りにし、党参を短くきざみ、ガーゼの袋の中に入れて、口のところをくくる。ナツメをきれいに洗って必要に備える。ブタのもも肉をきれいに洗ってお湯の入ったナベの中に入れてゆで、薄い血をすくい取って必要に備える。ショウガ、ネギをきれいに洗ってたたいて必要に備える。

 以上の材料を同時に土ナベの中に入れ、適量の水を入れて、強火の上に置いて煮沸させ、浮かんだアクを取り去り、とろ火で汁が濃くなり、ブタのもも肉がよく熟するまで煮込み、包みのヒモを取りはずして、ブタのもも肉、スープ、ナツメを同時にお碗の中に入れて出来上がりとなる。

[効能] 脾臓を補い肺を潤す。脾臓、胃が弱い、食欲がない、肺が虚弱である、せきをする、病みあがりの体が弱い者にとってとくに適している。

5つの果物

[使う材料] リンゴ1個、ナシ1個、パイナップル半分、ヤマモモ10個、クログワイ10個、レモン1個、白砂糖適量

[作り方] リンゴ、鴨梨(ナシの一種)、パイナップルをきれいに洗って皮を取り除き、それぞれさじを使ってボール状に掘って、クログワイをきれいに洗って皮を取り除き、ヤマモモをきれいに洗って必要に備える。白砂糖を50ミリリットルの水の中に入れて、ナベの中に入れて溶解するまで火を通し、冷却してからレモン・ジュースを入れて、5つの果物を望ましい図案となるように並べ、召し上がる時にあめの汁を果物の上にかければよい。

[効能] 唾液の分泌を促し、渇きをいやし、胃を和し、消化を助ける。

キグチの酢あんかけ

[使う材料] キグチ1尾、中国パセリ、ネギ、ショウガ、コショウ、醸造酒、ゴマ油、化学調味料、新鮮なスープ、白酢、塩、植物油それぞれ適量

[作り方] キグチをきれいに洗って庖丁で花のような紋様にきざんで必要に備え、ネギ、ショウガをきれいに洗って千切りにする。油の入ったナベを熱すまで火を通し、魚をナベの中に入れて両側が黄色になるまで炒め、すくい取って油をきる。ナベの中に少量の油を入れて、熱してから、コショウ、ショウガの千切りをナベに入れてすこし炒めて、すぐ新鮮なスープ、酒、塩、魚を入れて、魚を熟するまで煮て、すくい取ってお皿の中に入れ、ネギの千切り、中国パセリを入れて、ナベの中のスープを煮沸させて白酢、化学調味料、ゴマ油を入れてよく混ぜてお皿の中に盛り付ければよい。

[効能] 脾臓を丈夫にし食欲を増進し、精を増やし、気を益する。

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