処暑の養生
処暑は暑気の終わった時であり、「処」は身を隠し、終えるという意味を含み、文字通り、処暑は暑い天気が間もなく終わることを表わしている。『月令十二集解』には「旧暦7月の中旬に、処暑となり、終わることになるので、暑気はこれでおしまいとなる」と書かれている。この時の三伏(夏の土用の30日間)の天気は過ぎ去るか終わりに近づき、そのため、「暑気はこれで終わったのだ」と言われている。全国各地も「処暑になると涼しさが訪れる」ということわざがあり、夏の暑気が次第に消え去ることを意味している。しかし、天気はまだ本当の意味での秋の涼しい天気とはなっておらず、この時の晴れた午後の暑さは暑い夏に劣らず、これは人々が常に言うように「残暑はトラのようにすごい」ということでもある。これは人々に、秋といってもまだ暑さが残っていることを告げるものでもあり、これを夏が終わる前に一時もりかえすと見なしてもよい。『清嘉』を著わした顧鉄卿は処暑を形容した際に「習俗として処暑になってから、天気はなお暖かく、さらに18日が過ぎると涼しくなり始める。処暑になると18の盆があり、18日の入浴を言うということわざがある」。意味は約18日間は汗を流す日を経なければならないということ。この日になると、太陽の黄経は150度となり、暦書の記載によると、「斗が戊を指すと、処暑になり、暑さは退いて、伏は処に潜み、ゆえにこう名付けられた」というわけである。

 農業の角度から見て、さらに「穀物が処暑になると黄色になる」、「各農家の脱穀場では脱穀に忙しくなる」という秋の収穫の風景がある。そのほか、処暑以後の長々と続く秋雨はよく降り、そのため、農民の方々は特に天気予報に意を配り、すべての晴れた日を捉えて、時を逸することなく秋の収穫を確実に進めなければならない。

 処暑の節気はまさに暑い季節から涼しい季節に変わる移り変わりの時にあり、自然界の陽気は疎通・排泄から収斂に向かい、人体の内部の陰陽の気の盛衰もそれに伴って変わり、この時の日常生活、仕事、休憩もそれ相応に調整しなければならない。秋の養生に入ると、まず調整するのは睡眠時間であり、早寝早起きは人にとって周知の事柄であるが、歴代の医者と養生家は睡眠による養生の重視に精通した人は非常にまれで、その実、科学的な養生・保健というものは睡眠の規則と方法をより全面的に掌握しなければならない。

 漢方医学の睡眠の理論は唯物的な形と神の統一から出発し、睡眠、すっきりした目ざめが人体の目が覚めていることと眠ることの間の陰陽と動静の統一した機能状態であり、正常な生理現象だと見ており、それには次の2つの内容が含まれている。

一、 昼夜の陰陽の増減は人体の目が覚めることと眠ることを決定する。天体、

日月の運行のため、自然界は陰陽の増減の変化の中に置かれ、それは昼夜の交替の出現に現れるものであり、昼は陽であり、夜は陰である。人体の陰陽の気も増減に伴って変わり、そこで目が覚めることと眠ることの交替があるわけだ。目が覚めることは陽に属し陽気を主とし、眠ることは陰に属し陰気を主とする。人類が存在するようになってからは人類の活動の規則があるようになり、日が昇ったら働き、日が沈めば休むことであると言える。『霊枢・営衛生会』には「日が沈むと陽が尽きて陰の気が夜中に盛んになり、万民は全て横になり、命は陰に合うことである。明け方になると陰が尽きて陽の気になり、このようにやむことなければ、天地と同じである」ともいわれている。『霊枢・口問』はこれに対して、夜中に「陽気が尽き、陰気が盛んになり、眠る」、白昼に「陰気が尽きて陽気が盛んになり、目が覚める」とさらに説いている。

 二、睡眠の生理的基礎は営気・衛気の運行である。人が起きている時と眠っている時の変化は人体の営気(営気は脈の中にめぐり、栄養の作用に富む気である)、衛気(衛気は脈の外にめぐり、防衛機能をもつ気である)の運行を基礎とし、そのうち衛気のめぐりは最もかかわりのあるものである。『霊枢・衛気行』は「衛気は一日一夜体を50回めぐり、日は陽に25回めぐり、夜は陰に25回めぐる」と書いている。『霊枢・営衛生会』も「衛気は陰に25度でめぐり、陽に25度でめぐり、昼夜に分け、それゆえに気が陽に至って起き、陰に至って止む」とも言っている。ここで言う「起きる」とは起床のことを指し、「止む」とは寝つくことを指す。これをみても分かるように、衛気が陰にめぐると陽気が尽きて陰気が盛んになり、ゆえに形は静かで寝つく(人体が相対的な静止状態に入って寝たくなる)。陽にめぐると、陰気が尽きて陽気が盛んになり、ゆえに形は動いて目が覚める(人体が動態的になって目が覚める)。そのため、人体の睡眠と目ざめは心と神の指図を受け、神は静かで眠っており、神は動いて目が覚め、情、志が過ぎて眠りにくくなるわけである。

 近代医学の研究は睡眠を①寝つく時間、②浅い眠りの時間、③中程度の深い眠りの時間、④深い眠りの時間という4つの時間に分けている。みなさんが①と②に入るとぼんやりした状態で、呼び覚まされやすく、③と④に入ると熟睡の状態になり、一般的に言えば熟睡しているとき呼び覚まされにくい。

 秋の養生が睡眠の時間の確保を強調するのは、睡眠には良好な養生の作用があるためである。湖南省の馬王堆から出土した『十問』という医書の中で「人間の臥(睡眠)は生存だけでなくて民の事であり、例えばカモ、ガン、蛇檀(タウナギ)、スッポンなどのぜん動するものは、みな食べて生きている者であり、みな横になってなる……。それゆえに夕方は横にならなければ、百日も回復することができない」と書いている。これを見ても分かるように、人間は睡眠を必要とするばかりでなく、いかなる生物も睡眠から離れることはできない。つまり正常な睡眠がなければ、正常な生命活動をよく維持することができないのである。

 睡眠の役割には次の5つの面が含まれている。

 一、疲れを取り除く

 睡眠の際、人の精、気、神はみな五臓にあり、もし五臓が快適であれば、気、血が調和し、体温、血圧、脈はくはいずれも相対的に低下し、呼吸と内分泌も明らかに減り、代謝率も下がり、体力は回復する。

 二、脳を保護する

 脳は睡眠状態においては酸素消費量が大いに減り、十分な睡眠は脳細胞のエネルギーの貯蔵に役立ち、スタミナの回復を助け、知能の効率を高める。

 三、免疫を増強する

 睡眠は知力、体力の再創造の過程だけでなく、病気のリハビリの重要な手段でもある。睡眠の中でより多くの抗原抗体が生み出され、体の抵抗力を強めることができ、そのため、近代医学は睡眠を治療手段の一つとしており、治りにくい痛みと精神的疾患に用いられている。

 四、発育を促進する

 睡眠は子供の生長・発育と密接なかかわりがあり、子供の生長のテンポは睡眠状態の下で加速し、そのため、十分な睡眠時間を保証するのは子供の背が伸びる条件の1つである。

 五、美容に役立つ

 睡眠は皮膚の健康に対して大きな影響がある。これは睡眠の過程で、皮膚の表面の分泌と汚物一掃の過程が強化され、毛細血管の血の巡りが増え、皮膚の再生を加速し、皮膚が疲労しすぎたためにもたらされた顔の憔悴(しょうすい)、皮膚に現れた小じわは睡眠の中で回復する。そのため、睡眠は皮膚の美容の基本的な保証でもあると言える。

 ここで特に高齢者の方々にアドバイスしたい。加齢に従い、高齢者の気、血、陰陽がみな不足し、昼は精力がなく、夜は睡眠が少ないという現象が現われる。古代の養生家は「眠ることが少ないのは高齢者の大きな病気である」と言っている。『古今嘉言』は、高齢者は「眠気があれば寝る」べきであると見ている。これは養生学の観点に合ったものである。そのほか、古代の人びとは睡眠による養生法の中で昼寝の重要性(つまり毎日の子の刻、午の刻に寝る)を強調し、子、午の時に、陰陽は交替し、最も盛んになることから衰えることへ、体内の気、血、陰陽はバランスを失うので、静かに横になって、気の回復を待つべきであると見ている。現代の研究によると、夜の0時から4時まで、体内の諸器官の機能が最低となる。昼の12時から13時までは、人体の交感神経が最も疲れる時間である。統計データによると、高齢者にとって昼寝は心臓、脳血管病の発病率を下げることができる。そのため、昼寝は病気予防・保健の意義もあれば、養生の道にも合っている。

 もし睡眠の4つの時間に正常に入ることができるならば、あなたの脳はよく休むことができ、翌日の最もよい精神状態を保証できる。これはわたしたちにとって望ましいことであり、秋の養生の重要な方法の1つでもある。

 処暑の節気は熱を下げ、神経を鎮めるもの、例えばシロキクラゲ、ユリ、ハスの実、ハチミツ、キグチ、干し貝柱、コンブ、クラゲ、キンサイ、ホウレンソウ、もち米、ゴマ、豆類、ミルクを召し上げることをおすすめしたい。

ご参考までにおすすめする料理

ゴマとホウレンソウ

[使う材料] 新鮮なホウレンソウ500グラム、熟したゴマ15グラム、塩、ゴマ油、化学調味料それぞれ適量

[作り方] ホウレンソウの根を取り除いてきれいに洗い、湯の入ったナベで煮て、すくい取って冷たい水の中に浸し、冷やしてからすくい取って水分を乾かし、きざんで、お皿の中に盛り付け、それぞれ塩、化学調味料、ゴマ油を入れて、よく混ぜて、更にゴマをホウレンソウの上にかければよい。

[効能] 肝臓を補って腎臓を益し、胸をすっきりさせて燥を潤す。

ピーマンと豆腐のあえ物

[使う材料] 豆腐1丁、ピーマン3個、中国パセリ10グラム、ゴマ油、塩、化学調味料それぞれ適量

[作り方] 豆腐を湯でよく煮て、すくい取って冷やし、1センチの四角形のさいの目に切る。ピーマンを湯でさっとゆでて、細かく切り、中国パセリを千切りにする。豆腐、ピーマン、中国パセリ、ゴマ油、塩、化学調味料などをよく混ぜて、お皿の中に盛り付ければよい。

[効能] 気を益し、中をよくし、唾液の分泌を促し、燥を潤し、熱を下げて病毒をなくす。食欲がない、食欲不振の方々にとって特に適している。

ユリとハスの実のスープ

[使う材料] 乾燥したユリ100グラム、乾燥したハスの実75グラム、氷砂糖75グラム

[作り方] ユリを水の中に一夜浸してから、きれいに洗う。ハスの実を水の中に4時間浸し、きれいに洗う。ユリ、ハスの実を水の入ったナベの中に入れて、強火で煮沸してから、氷砂糖を入れて、とろ火で40分間煮ればよい。

[効能] 神経を鎮めて心を養い、脾臓、胃を丈夫にする。

ユリの砂糖漬け

[使う材料] 生のユリ60グラム、ハチミツスプーンに2杯

[作り方] ユリをきれいに洗って碗の中に入れ、ハチミツをかけて、蒸しナベの中に入れて30分間蒸して、ナベから取り出すか、火であぶるか、陰干しにしてもよい。7回分に分けてお休みになる前に服用する。

[効能] 心を清くして神経を鎮める。イライラして寝つけず、ビクビクして目が覚めやすい方々に適している。

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