秋分の養生
旧暦によると、秋分はちょうど秋の90日間の真中にある。この日から、直射日光の射し込む位置は引き続き赤道から南半球へと推移し、北半球は昼が短く夜が長くなる。この時になると、中国のほとんどの地域はさわやかな秋に入り、南下する寒気が次第に衰える暖かくて湿った空気と出遭うと、一回また一回と雨が降るようになり、気温も毎回下がってくる。まさに人々が常に言うように、「秋の雨が一回降るとそれだけ寒くなる」時分になるが、秋分以降の日間降水量はそれほど大きくはない。

 秋分の節気はすでに本当に秋に入ったため、昼夜の時間が等しい節気として、人々は養生の中で陰陽のバランスをとる法則に基づいて、体に「陰平陽秘(陰陽のバランス)」という原則を保たせ、『素問・至真要大論』の説によると、「謹んで陰陽の所在を調べ、バランスを期し」、陰陽がアンバランスにならないようにする。

 精神の養生で最も主要なことは楽観的な気持ちを保ち、神、志の安らぎを保ち、草木を枯らす気を避け、神の気を収斂し、秋のおだやかで寛容な気に適応するのである。体質の養生は中国古代の民間の九九重陽(旧暦の重陽節)に高い所に登って景色を見る習わしを選ぶこともよく、高い所に登って遠くを見渡すと、心を晴々とさせ、気持ちがふさぐすべてのこと、憂うつなことなどの好ましからぬ気持ちはたちどころに消え去り、これは養生における養生収斂法の1つであり、精神を調節するよいやり方でもある。

 飲食の養生の面では、漢方医も陰陽のバランスの面から出発し、飲食を適度にすることと、やめることに分けられる。陰平陽秘に利するものを適度とし、これに反すればやめるのである。異なる人には違った適度というものとやめることがあり、例えば陰気が不足し、陽気が余っている高齢者には、カロリーが多く滋養分の高いものは避けるべきである。発育のさなかにある子供たちにとっては、もし特殊な原因がないならば過度に補すべきではない。痰の湿気の体質のものにとっては、脂っこいものは避けるべきである。木火の質のものにとっては辛いものは避けるべきである、皮膚病、ぜんそくにかかっているものにとってはエビ、カニなどの海産物は避けるべきである。胃の寒なるものにとっては、生ものや冷たいものは避けるべきである。どんなものであろうと、その本質は実の者が更に実となり、虚の者が更に虚となることを防いで陰陽のアンバランスを避けるべきである。飲食の養生の面では「虚ならばそれを補し、実ならば下し」、「寒の者はそれを温め、温の者はこれを寒にする」という原則を具現すべきである。食品の組み合わせと飲食の調節の面では、漢方医も陰陽の調和を重視している。食と薬を一体化させた養生観の中で、同じ天然産物に属する漢方薬と食物は、いくつかの性質、特に人体の陰陽の気、血の機能を補するか、養生する面で本来通じ合っているものであり、水と乳のように溶け合い、分かちがたい関係があることを強調している。

 数千年来の食文化の歴史によると、中華民族の飲食の習慣は精進料理を踏まえて、肉料理と精進料理を組み合わせ、トータルな食事を目指している。いわゆるトータルな食事とは飲食内容の面でできるだけ多様化を長期的あるいはしばしば目指すようにし、肉料理と精進料理、主食と副食、ランチと間食、飲むものと食べるものの間の合理的な組み合わせを重んじることが求められる。食して偏ることなく、量が多過ぎてもいけないと主張している。海の幸、山の幸、ニワトリ・アヒル・魚・肉、美酒・銘茶、飲み食いおよび過渡の清貧をよしとするやり方はいずれも取り柄はない。

 古代の医学者は長期にわたる生活の実践の中で食物の性質を次ぎの3つの種類に帰した。つまり寒・涼類、平性の類、温・熱類である。そのうちよく見かける300余りの食物の統計データから見ると、平性の食物が多数を占め、温・熱性はこれに次ぎ、寒・涼性は更にこれに次ぐのである。

 その効能について言えば、寒・涼性の食物は陰を滋養し、熱を下げ、のぼせをなくし、血を涼にし、解毒の作用があり、これらの食物としてはスイカ、マクワウリ、バナナ、サトウキビ、マンゴー、ビワ、リンゴ、ナシ、カキ、クログワイ、ヒシの実、クワの実、トマト、キュウリ、ニガウリ、トウガン、白いダイコン、ヘチマ、レンコン、マコモダケ、タケノコ、クワイ、ワラビ、スベリヒユ、キンサイ、薄味の納豆、海藻類、コンブ、カニなどが含まれる。

 温・熱性の食品は温経のものが多く、陽を助け、血のめぐりをよくし、経絡をすっきりさせ、寒を発散させるなどの作用があり、そのうちトウガラシ、サンショウ、からし、マスなどは熱性の食物であり、サクランボ、レイシ、竜眼、アンズ、ザクロ、クリ、ナツメ、クルミの実、ニンニク、カボチャ、ネギ、ショウガ、ニラ、ウイキョウ、タウナギ、レンギョ、イガイ、エビ、ナマコ、トリ肉、ヒツジの肉、シカの肉、ハム、ガチョウのタマゴなどは温の性の食物である。

 平性の食物としてはスモモ、イチジク、ブドウ、ギンナン、ユリ、ハスの実、落花生、ハシバミの実、黒ゴマ、白黒キクラゲ、金花菜、タマネギ、ジャガイモ、黒豆、アズキ、ダイズ、インゲンマメ、ササゲ、キャベツ、サトイモ、ニンジン、ハクサイ、チャンチンの若葉、青蒿、ダイトウサイ、クラゲ、キグチ、コイ、ブタ肉、ブタのヒヅメ、牛肉、スッポン、ガチョウの肉、ウズラ、タマゴ、ウズラのタマゴ、ハトのタマゴ、ハチミツ、ミルクなどがある。

 二十四節気の養生篇の最後に、みなさんのために『寿親養老新書』の中の、どのように正気を保養するかについての透徹した言葉を選んでまとめ、本の中では「一は口を少なく開き、内の気を養う。二は色欲をやめ、精、気を養う。三は味を薄くし、気、血を養う。四は唾液を飲み込んで、臓の気を養う。五は怒ることなく、肝臓の気を養う。六は飲食はおいしいものにし、胃の気を養う。七はあまり考えすぎず、心の気を養う……」と述べられている。これをみても分かるように、これは長生きするための根本的なやり方である。

秋分の節気にみなさんに次のような料理をおすすめしたいと思う。

カニと味噌の煮物

[使う材料] シナモクズガニ(カニでもよい)500グラム、ショウガ、ネギ、酢、しょう油、白砂糖、乾燥した小麦粉、化学調味料、みりん、カタクリ粉、食用油それぞれ適量

[作り方] カニをきれいに洗って、鋭い爪を切り取り、カニの腹部を上に向けて真中から2つに切って、カニの内臓をえぐり取って、カニの腹部の切られたところに乾燥した小麦粉をまぶす。ナベを熱くし、ナベの中に油を入れて熱したと思われるまで火を通し、カニ(小麦粉をまぶした側を下に向ける)をナベに入れて揚げ、カニがこがね色になってから、ひっくり返して揚げ、全体がムラなく揚げられるようにし、カニの殻が真赤になると、ネギ、ショウガのみじん切り、みりん、酢、しょう油、白砂糖、水を入れて、8分間前後煮てカニの身がすっかり熟してから、汁を煮詰め、化学調味料を入れて、といたカタクリ粉であんかけをし、少量のあぶらをかけてからナベから取り出せばよい。

[効能] 陰を益し骨髄を補し、熱を下げて鬱血をなくす。

乾燥むきエビとタケノコの炒め物

[使う材料] タケノコ400グラム、乾燥むきエビ25グラム、みりん、塩、化学調味料、薄味のスープ、植物油それぞれ適量

[作り方] タケノコをきれいに洗って、庖丁でたたいて、長さ4センチにきざみ、更に一の字の形に拍子切りにし、湯の入ったナベに入れてさっとゆでて、渋味をすくい取って冷たい水でこす。油をナベの中に入れて熱したと思われると、タケノコを入れて少し揚げ、すくい取って油をきっておく。ナベの中に油をすこし残して、タケノコ、薄味のスープ、塩を入れて炒め、味が出るとナベから取り出す。更にナベの中に油を入れて熟したと思われるまで炒め、乾燥むきエビ、みりん、薄味のスープ少量、化学調味料を入れて、タケノコをナベの中に入れてムラなく炒めてからお皿に盛り付ければよい。

[効能] 熱を下げて痰を取り除き、かぜを治し、解毒する。

サトウキビのかゆ

[使う材料] サトウキビの汁800ミリリットル、コウリャン200グラム。

[作り方] サトウキビをきれいに洗って汁を搾り、コウリャンをきれいに洗い、サトウキビの汁とコウリャンをナベの中に入れて、更に適量の水を入れて、グツグツ煮て薄いかゆにする。

[効能] 脾臓を補し、消化を助け、熱を下げ、唾液の分泌を促す。

Copyrights © 2002 China Internet Information Center All Rights Reserved