立冬の養生
これは非常に重要な節気であり、また人々の養生と補の最もよい時期でもある。立冬は字面だけから見ると、「立は、立ち始めること、冬は、終結であり、万物の収蔵である」と解釈することができる。立冬は冬季の到来を意味する。『呂氏春秋・十二月紀』の中で立春、春分、立夏、夏至、立秋、秋分、立冬、冬至という8つの節気が確立されることになった。これは二十四節気の中の最も重要な8つの節気であり、それは四季の移り変わりの過程をはっきりと正確に示すものである。

 立冬は、冬季の最初の節気として、毎年の11月8日前後に、太陽が黄経225度に至る時に始まる。中国の南北の緯度の差のため、真の意味での冬季は、決して「立冬」を基準とするものではなく、連続して数日の気温がセ氏10度より低い期間を冬季とする。しかし、伝統的な考え方の中で「冬」はつまり「終結」であり、終わったという意味である。漢方医学では、この節気の到来は陽気が潜み、陰気がきわめて盛んになり、草木がしおれて、蟄虫が伏せて隠れ、万物の活動が休止に向かって、冬眠状態に入り、鋭気を養い力を蓄え、春の生命力の勃発のために準備するものと見ている。

 人類には冬眠があるという説はないが、民間には立冬になると冬を補うという習わしがある。この日になると、南部と北部の人々は異なったやり方で山の幸や獲物を補給する。聞くところによると、このようにしてこそはじめて寒い冬になっても厳寒の侵入を防ぎ止めることができるのである。それでは実生活の中で、立冬の日にわれわれは結局何に注意すべきか。そしてどのように養生に努めるかはわれわれの今日の主な話題である。

 中国の最も古い医学の古典『黄帝内経・素問・四季調神大論』は、「冬の3カ月には、これを閉蔵と言い、氷が張って地が裂け、陽を妨げることがなく、早寝して遅めに起き、日光を待たなければならず、志をもし伏して、隠すならば、そしてもし個人の考えがあるならば、それによってもし得るものがあるならば、冷えによる病気を治して暖になり、皮膚に泄するものなく、気を早く奪い、これは冬の気の反応であり、臓の養生の道である。これに逆らうならば腎臓が傷つき、春はなえて動かなくなり、生存者が少なくなる」と指摘している。これは精神による養生、日常生活による養生、飲食による養生の調理法を的確に論述し、自然界の変化に基づいて人体の冬季養生の原則を導入したものである。それはわれわれに、冬は気候が寒くて地が裂け、万木がしおれて、生命力の潜伏閉蔵の季節であり、人体の陽気も自然界の変化に従って内に潜んでいる、ということである。そのため、冬季の養生は自然界の閉蔵の法則に順応すべきであり、陰を集めて陽をかばうことを根本とするものである。精神養生の面で「志をもし伏させ、隠すならば、もし個人の考えがあるならば、それによってもし得るものがあるならば」ということをやり遂げるべきである。静かであることに努め、情と志の活動を制御し、精神的情緒の安寧を保ち、現さないことをも加えて、いらいらすることを避け、体内に陽気が潜むようにする。

 日常生活による養生は「陽を妨げることなく、早寝して遅めに起き、日光を待たなければならない」ということを強調し、つまり、寒い冬季において、陽気がかき乱されるために人体の陰陽転換の生理的機能を破壊してはならない。まさに「冬の時は天地の気が閉じ、血気は伏せて隠れ、人は汗が出るように働き、陽気を発散してはならない」ということである。そのため、早寝して遅めに起き、日が出たら働き、十分な睡眠を確保し、陽気の隠避に役立ち、陰、精を蓄えることになる。服装が少なすぎ、薄すぎ、室内の温度が低すぎるならば風邪を引きやすく、陽気も消耗する。これに反して、服装が多すぎ厚すぎ、室内の温度が高すぎるならば皮下と筋肉がたるみ、陽気は潜むことがなく、風邪が侵入しやすくなる。漢方医学は、「寒は陰気、邪気で、常に陽気を傷つける」と見ている。人体の陽気は天上の太陽に当たり、自然界に光明と暖かさをもたらし、それを失うならば万物が生存するすべがなくなる。同じように、もし人体に陽気がないならば、新陳代謝の活力を失うことになろう。そのため、立冬後の日常生活は「臓を養う」ということをしっかり覚えておかなければならない。

 飲食による養生は「秋、冬は陰を養う」、「陽を妨げることがない」、「虚なる者はそれを補い、寒なる者はそれを暖かくする」という教訓となる昔のことばを順守すべきであり、四季の気候の変化に伴って飲食を調節するのである。元代の忽思慧の著書『飲膳正要』は、「……冬は気候が寒く、キビを食べなければならず、その熱の性をもってその寒を治す」のであると述べている。つまり、生のものや冷たいものを少なめにするか、熱すぎるべきでもなく、目的意識をもって陰を滋養とし、陽を隠し、カロリーの高い食べものを食べるべきであり、ビタミンの不足を避けるため、新鮮な野菜、例えば牛肉、ヒツジの肉、烏骨鶏(ニワトリの一種)、フナを多く食べ、豆乳、牛乳を多く飲み、ダイコン、野菜、豆腐、キクラゲなどを多く食べるべきである。ここで注意しなければならないのは、中国は土地が広く、地理的環境がそれぞれ異なり、人々の生活様式が異なり、同じ冬季でも、西北地域の気候条件は東南沿海とまるっきり違い、冬季の西北地域の天気は寒く、養生補給はカロリー含有量が多いもの、例えば牛肉、ヒツジの肉、イヌの肉などでなければならない。長江以南の地域は冬になっても、気温は西北地区よりあたたかく、養生補給は甘で暖かいもの、例えばニワトリ、アヒル、魚類を補うべきである。高原の山岳地帯、降雨量が少なくて気候がどうしても乾燥する地帯であれば、甘で唾液の分泌を促進する果物、野菜、氷砂糖を食べるべきである。そのほか、人によって違うべきであり、食べ物には穀物、肉類、果物、野菜の違いがあり、人びとには老若男女の違いがあり、体には虚、実、寒、熱の違いがあるため、人体の成長の法則、漢方医学の養生の原則に基づいて、少年は養うことを重んじ、中年は補給の加減を重んじ、老年は保護を重んじ、高齢者は命を延ばすことを重んじるべきである。そのため、「冬季の養生補給」は実状に基づいて清く補い、温かく補い、小さく補い、大きく補うことを選んでおり、絶対に盲目的に「養生補給」を行ってはならない。具体的に食卓については、わたしは皆さんに老若男女が召し上がることのできる温和でつくりやすい次の料理を紹介したい。

黒いゴマのかゆ 『本草綱木』

[使う材料] 黒いゴマ25グラム、うるち米50グラム

[作り方] 黒いゴマを熟するまで炒めて、粉末にすって必要に備え、うるち米をきれいに洗って黒いゴマとともにナベの中に入れて煮る。強火で煮沸してから、とろ火でかゆ状になるまで煮る。

[効能] 肝臓、腎臓を補給し、五臓に栄養をつける。

注 この処方は中老年の体質の弱い者に適し、初期の老化を予防する効能がある。

冬虫夏草とアヒルの蒸し物 『本草綱目拾遺』

[使う材料]  冬虫夏草5本、雄のアヒル1羽、醸造酒、ショウガ、ネギの根、塩それぞれ適量

[作り方] アヒルの毛、内臓を取り除いてきれいに洗い、水の入ったナベの中に入れて煮る。アクをすくい取り、アヒルの頭を首に沿って横に大きく切り、冬虫夏草を入れて、糸できつくくくって、大きなドンブリの中に入れ、醸造酒、ショウガ、ネギの根、塩、適量の水を加え、さらに大きなドンブリをナベの中に入れて、水に浸すことなく約2時間蒸して熟すればよい。(気鍋という磁器製のなべで蒸してもよい)

[効能] 虚を補って精を益し、陰に栄養をつけて陽を助ける。

この処方は冬虫夏草を主とし、腎臓の陽を助けて、精、血を益する。アヒルを補とし、陰に栄養をつけて虚を補う。処方の一つは陽を補うことに重きを置き、もう一つは陰を補うことに重きを置き、両者をともに使用すれば、虚を補って精を益し、陰に栄養をつけて陽を助ける最良の薬膳となる。

注 かぜや暑気あたりの方は遠慮して下さい。

トマトとレンコンの砂糖づけ

[使う材料] トマト2個、レンコン1節、白砂糖を適量

[作り方] トマトの皮を剥いて、レンコンを沸いた湯の中に入れて3〜5分間煮て、この二つのものをお皿の中に入れて、砂糖をかければよい。

[効能] 脾臓を丈夫にし食欲を増進し、精を生んで渇きをいやす。

 立冬の日において、この2つの料理とおかゆがあなたの家庭生活に楽しみをもたらすよう期待し、同時により多くの人びとが保健意識を強めるよう期待し、皆さんが「インフルエンザ」に対する早期予防を行うことに気づかせ、ここでみなさんに民間に広く伝わる「仙人がゆ」という歌を教えておきたい。これは学びやすく、覚えやすく、つくりやすいものである。「もち米少量をかゆ状に煮て、7本のネギと7切れのショウガを入れ、熟したら杯の半分の酢を入れる。これはかぜを治し、健康の効がある」。

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