国民経済と社会発展の第十次五ヵ年計画綱要に関する報告
   ――国務院総理 朱鎔基


代表のみなさん

 今年から、わが国は新世紀最初の五ヵ年計画を実施する。中国共産党第十五期五中全会で採択された『国民経済と社会発展の第十次五ヵ年計画の策定に関する中国共産党中央委員会の建議』は、今後五年間の経済及び社会発展を目ざす奮闘目標、指導方針及び主要任務を提起している。この『建議』の趣旨に基づいて、国務院は各方面の意見に真剣に耳を傾け、『国民経済と社会発展計画の第十次五ヵ年計画綱要(草案)』を策定した。私はここに国務院を代表して、大会に政府活動報告を行い、『綱要(草案)』とともに審議を求め、全国政治協商会議の委員のみなさんからもご意見を求めたいと思う。

一 「第九次五ヵ年計画」期の国民経済と社会発展の回顧

過去の五年は、全国各民族人民が中国共産党の指導の下、団結奮闘し、開拓に取り組んで新生面を創出し、各方面ともに重要な成果を勝ち取った。

 国民経済は持続的でテンポの速い、健全な発展を遂げ、総合国力はよりいっそう増強された。国内総生産(GDP)は二〇〇〇年に八兆九四〇四億元に達し、平均して年間八・三%伸びた。一人当りの国民総生産を一九八〇年の四倍増にするという任務はすでに繰上げて超過達成した。国民経済の持続的な成長と効率の改善を基礎に、二〇〇〇年度の歳入は一兆三三八〇億元に達し、平均して年間一六・五%伸びた。主要工業製品・農業生産物の生産高は世界の前列に位置し、商品が不足する状況は一応終息した。産業構造の調整には積極的な進捗が見られた。食糧など主要農産物の生産能力は目立って向上し、農産物の供給は長期不足の状況から一応総量としてバランスがとれ、また豊作の年には余剰が出るという歴史的転換を実現した。立ち遅れた工業生産能力の淘汰、過剰な工業生産能力の圧縮で成果を収め、重点企業の技術改良が絶えず推進された。情報産業などのハイテク産業は急テンポで成長した。インフラ建設には顕著な成果が見られ、エネルギー、交通、通信及び原材料の「ボトルネック」の制約が緩和された。

 経済体制改革が全面的に推し進められ、社会主義市場経済体制が初歩的に打ち立てられた。国有大・中型企業が現代企業制度を打ち立てる改革は重要な進展を勝ち取った。大多数の国の重点企業は公司(株式会社)制改革を行い、そのうち、かなりの企業が国内か海外で上場している。企業の赤字縮小・黒字増大の成果は顕著で、二〇〇〇年度、国有及び国有持株工業企業は二三九二億元の利潤を達成し、これは一九九七年の二・九倍である。国有大・中型企業の改革及び三年間で苦境から脱出する目標は基本的に達成された。公有制経済がいっそう発展をとげるとともに、私営、個人経営の経済はかなり急テンポな発展を遂げた。市場システムの構築は引き続き推進され、資本、技術及び労働力などの要素市場が急速な発展をとげ、市場が資源配置の中で果たす基礎的役割は明らかに強化された。財政・税務体制が引き続き整備された。金融改革のテンポが速められた。都市部住宅制度、社会保障制度及び政府機構等の面の改革には重要な進展が見られ、国のマクロ・コントロールシステムはいっそう整備された。

 対外開放はたえずレベルアップされ、全方位対外開放の枠組みが一応形成された。対外経済貿易体制の改革は穏当に推し進められ、輸出型経済は急速に発展している。二〇〇〇年の輸出入総額は四七四三億ドルに達し、そのうち、輸出額は二四九二億ドルで、それぞれ一九九五年比、六九%と六七%伸びた。輸出品構成が改善され、機械電子製品及びハイテク製品の占めるウェートが向上した。対外開放の分野が逐次拡大され、投資環境が引き続き改善された。外資利用の規模は大きくなり、その質も向上した。五年間に、実際に利用された外資は合計二八九四億ドル、「第八次五ヵ年計画」期より、七九・六%伸びた。国の外貨保有高は二〇〇〇年末には一六五六億ドルに達し、一九九五年末より九二〇億ドル増えた。

 人民の生活は引き続き改善され、全体としてまずまずのレベルに達した。農村住民一人当りの純収入及び都市部住民の一人当りの可処分所得は二〇〇〇年に、それぞれ二二五三元と六二八〇元に達し、平均して年間実質伸び率は四・七%と五・七%となった。市場には商品が豊富に出回り、住民の消費水準は絶えず向上し、社会消費財の小売総額は平均して年間一〇・六%伸びた。都市部住民の住宅、電信・電話及び電気などの生活諸条件はかなり大きく改善された。住民の預貯金残高はこの五年で二倍以上に伸び、株券、債券等その他の金融資産も急速に増えた。農村の貧困人口は大幅に減少し、「八・七」貧困扶助・難関突破(七年間に八〇〇〇万人を貧困状態から脱却させる)を目指す目標は基本的に達成された。

 科学技術、教育の発展は加速され、社会事業は全面的に進歩している。「八六三(ハイテク技術研究・発展計画綱要)」計画は順調に実施された。航空・宇宙飛行、情報、新素材及びバイオテクノロジーなどのハイテク分野で多くの重要な成果をあげた。基礎研究と応用研究には新たな進展が見られた。部門に所属する応用型研究院・研究所の企業化をはかる改革が基本的に完成し、その他の科学研究院・研究所の体制改革も全面的に繰り広げられた。科学技術研究成果の市場化、産業化へのプロセスが加速された。各級、各種の教育は全面的な発展を遂げている。九年制義務教育を基本的に普及させ、青壮年の非識字者を基本的に一掃する目標は初歩的に達成された。高等教育管理体制の改革は大きな進展を見せた。大学の学生募集の拡大は大衆から広く歓迎されている。人口と計画出産の仕事は新たな成果を収め、生態建設と環境保全には明らかによりいっそうの努力が払われた。文化、医療・衛生、スポーツなど諸般の社会事業は引き続き発展を遂げた。廉潔政治の建設と反腐敗闘争は絶えず成果をあげている。社会治安の総合対策はよりいっそう強化された。社会主義精神文明の建設と民主・法制の建設に新たな進展が見られた。国防と軍隊の建設では新たな一歩が踏み出された。

 「第九次五ヵ年計画」期に、わが国政府は香港、澳門に対する主権の行使を回復し、祖国の平和統一の大事業は歴史的進展を勝ち取った。香港、澳門が祖国に復帰して以来、「一国二制度」の方針と基本法が全面的に貫かれている。特別行政区政府の活動にはめざましい成果が見られ、香港特別行政区、澳門特別行政区の社会は安定し、経済は発展している。

 「第九次五ヵ年計画」の完成につれ、われわれは現代化建設の第二段階の戦略目標を達成し、「第十次五ヵ年計画」の実施を目指して、第三段階の戦略目標へと踏み出す良好な基礎をうち固めた。これはわが国の社会主義建設事業が勝ち取った偉大な成果であり、中華民族の発展史における新たな一里塚といえる。

 「第九次五ヵ年計画」期に収めた経済と社会発展の大きな成果は並々ならぬ困難を克服して勝ち取ったもので、並大抵のことではなかった。われわれは、国際的な突発事件の挑戦に成功裏に対処し、アジア金融危機の衝撃を効果的に防ぎ止め、「第九次五ヵ年計画」期前半のインフレの影響を克服したのみでなく、中・後期のデフレ傾向をも抑え、深刻な洪水・旱魃の災害にもうち勝った。こうした成果を勝ち取ったことは、江沢民同志を中核とする党中央が数多くの矛盾と困難が入り組んだ局面に対し、戦略決定を練り上げ、一連の正しい政策決定や処置を適時行い、全国人民がそのために団結奮闘した賜物である。私はここに国務院を代表し、各分野と職場で勤勉に働き、貢献した全国各民族人民に対して、崇高な敬意を表すものである。祖国の建設と統一に関心と支持を寄せる香港特別行政区、澳門特別行政区の同胞及び台湾の同胞並びに海外の華僑同胞に対して、心からの感謝の意を表すものである。

 「第九次五ヵ年計画」期の実践は、われわれが社会主義市場経済を発展する要請に基づいてマクロ経済の管理・規制を強化し、改善する経験をより豊かなものにした。

第一、発展という手段により前進途上の問題を解決することを堅持した。発展は絶対的な道理である。さまざまな社会矛盾に直面し、われわれは終始経済建設というこの中心をしっかりつかみ、効果のある措置をとり、国民経済の持続的でテンポの速い、健全な発展を促進して、他の矛盾を上手に処理するための基礎を築き上げた。これと同時に、「両手でつかみ、両手ともに力を入れる」方針を堅持し、絶えず社会主義精神文明の建設と民主・法制の建設を強化し、経済建設に力を集中させるために良好な政治・社会的環境を作り上げ、さらにそのために強大な精神的原動力を提供した。

 第二、経済情勢の変化に応じて、適時にマクロ規制政策の方向性と力の入れ具合を調整した。インフレの対策においては、経済の持続的な成長の維持に気を配り、「ソフトランディング(軟着陸)」を成功裏に実現した。デフレ傾向の抑制にあたっては、内需拡大の方針を堅持し、積極的な財政政策を躊躇なく実施し、さらに実践の中で諸般の政策措置をたえず整備した。国債を増発し投資を拡大する一方で、都市部中・低所得層住民の収入を適度に増やし、消費の増大を奨励し、二つの面から経済成長を牽引した。輸出における税還付率の引き上げおよび密輸に対する厳しい取り締りなどの措置をとり、あらゆる方法を講じて、輸出を拡大し、国際収支のバランスをはかり、人民元の貨幣価値を安定させた。穏健な通貨政策を実行して、利子率など多種多様な手段の運用によって経済成長を支えるとともに、マネー・サプライを調節し、融資投入の方向づけをおこない、金融リスクを防ぎ止め、解消することに気を配った。

 第三、内需拡大と経済構造の調整を密接に結びつけたこと。通常の加工工業の生産能力が普遍的に過剰に陥っている現実状況に基づき、国債の投資の重点をインフラ建設の面に置くとともに、農業と科学技術、教育への投入を増やし、企業の技術改良を下支えした。生産財と生産能力が相対的に余剰になっている時期を利用して、長年取り組もうとしてもできなかったいくつかの大事業をやり遂げ、当面の経済成長を牽引したばかりか、経済発展の持続力をも強化した。

 第四、改革、発展、安定の関係を正しく処理したこと。複雑で困難な状況の下で、改革は停滞しなかったばかりか、困難を押して、積極的に整然と推し進められ、経済発展を力強く促した。これと同時に、終始改革実施への取り組みを社会の受容力に適応させることに気を配った。構造調整と改革の深化が深層の利益諸関係とぶつかることを免れ得ない場合、これらのことを高度に重視し、さまざまな政策措置を講じて、広範な大衆の基本的利益を守った。再就職プロジェクトを大いに実施し、国有企業の一時帰休者の基本生活費と定年で引退あるいは退職した職員・労働者の基本養老年金を全額遅滞なく支給することを確保して、農民の余剰食糧の保護価格による無制限な買付を堅持し、社会の安定と経済の持続的成長を全体的に維持した。

 こうした成果を十分に肯定するとともに、経済と社会生活にはなお少なからぬ問題が存在していることも冷静に見て取るべきである。それは主として次のようなものである。産業構造が不合理で、地域間の経済発展のバランスがとれていないこと。国民経済の全般的体質が劣り、国際競争力が強くないこと。社会主義市場経済体制がなお完備しておらず、生産力の発展を妨げる体制的要因が相変わらず際立っていること。科学技術、教育がかなり立ち遅れ、科学技術の革新・創造力がかなり弱いこと。水、石油など重要資源が不足しており、一部の地域では生態環境が悪化していること。就業の圧力が強まり、農民と都市部における一部住民の収入が伸び悩み、なおかつ収入格差がさらに大きくなっていること。一部の分野では市場経済の秩序がかなり混乱し、安全に関わる重大な事故がときどき発生していること。汚職腐敗、贅沢、浪費の現象と形式主義、官僚主義の作風がまだかなりひどいこと。一部の地方の社会治安状況がよくないこと、などである。これらの問題が生起した原因はかなり複雑で、われわれの仕事のうえでの欠点と誤りにかかわっていることも少なくない。われわれはそれを高度に重視し、さらに施策を講じて、その解決に努めなければならない。

 二 「第十次五ヵ年計画」期の奮闘目標と指導方針

 新世紀初めの内外の情勢を展望して、これからの五年から十年までの期間は、わが国の経済と社会の発展にとってきわめて重要な時期であるといえる。世界では新しい科学技術革命が迅速に発展し、経済のグローバル化の勢いが強まり、多くの国は積極的に産業構造の調整を推し進め、周辺諸国が発展を加速させている。これはわれわれにとって厳しい挑戦であるとともに、それに追いつき、飛躍的な発展を遂げるための歴史的チャンスでもある。国内においては、われわれは経済構造調整のかんじんな時期にあり、改革は難関突破の段階にあり、世界貿易機関(WTO)の加盟にあたっても若干の新たな問題にぶつかるであろう。各方面の任務が非常に繁雑で重く、多くの深層の矛盾の解決が必要とされている。こうした情勢はわれわれに、チャンスをとらえて発展を速めることを求めている。それと同時に、われわれには数多くの有利な条件が備わっており、かなり長期間において国民経済を比較的速いテンポで発展させることができる。

 「第十次五ヵ年計画」期における情勢と任務に基づき、『綱要』では今後五年間の経済と社会発展の主要目標が打ち出された。それは次のようなものである。国民経済は比較的速いテンポの発展を保ち、経済構造の戦略的調整は明らかな効果を上げ、経済成長の質と効率を著しく向上させ、二〇一〇年までに国内総生産(GDP)を二〇〇〇年の二倍増にするために強固な基礎を築き上げる。国有企業が現代企業制度を確立するうえで大きな進捗を勝ち取り、社会保障制度を比較的に健全化させ、社会主義市場経済体制が逐次整備し、対外開放と国際協力がさらに展開する。就業のルートをさらに広く開拓し、都市農村住民の収入を持続的に増やし、物質的、文化的生活をかなり大きく改善し、生態建設と環境保全が強化されるようにする。科学技術・教育の発展を速め、国民の資質をいっそう向上させ、精神文明建設と民主・法制建設の著しい進展を勝ち取る。

 「第十次五ヵ年計画」の『綱要』には次のような重要な指導方針が具現されている。

 発展をメーンテーマとすることを堅持する。発展の速度と効率との統一を強調し、効率向上の前提のもとで比較的速い発展を実現する。市場と効率のある速度こそ、真の発展であり、はじめて絶対的な道理にかなうものである。諸方面の要素を総合的に考慮した上で、「第十次五ヵ年計画」期における年平均経済成長率の所期目標を七%前後と定めた。この成長率は「第九次五ヵ年計画」のもとで実質達成した伸び率よりやや低いが、とはいえ、尚かなり速いものであろう。効率の向上を踏まえたうえで、この目標を達成するには、並々ならぬ努力を払わなければならない。また、国外、国内いずれも一部の不確定要因が存在するため、計画における所期目標は余裕をもたせなければならない。このようにすれば、各方面の主要な力を構造調整と効率の向上に傾けるよう導き、経済の過熱および低レベルの重複建設を防ぐことに役立つのである。

 構造調整を主線とすることを堅持する。我が国の経済は今や調整がなければ発展できない時期に来ている。従来の構造や粗放型成長パターンで経済を発展させていくなら、製品に市場がなくなるばかりか、資源や環境もこれを受容できなくなる。必ず発展の中で構造を調整し、構造調整の中で比較的速い発展を維持しなければならない。今後五年間、産業構造、地域間経済構造と都市農村構造の調整に力を入れ、特に産業構造の調整をカギとしなければならない。農業の基礎としての地位をうち固め、強化し、工業の再編、技術改造と構造の最適化、グレードアップを速め、サービス業を大いに発展させ、国民経済と社会の情報化を速め、引き続きインフラ建設を強化する。

 改革開放と科学・技術の進歩を原動力とすること。経済発展や構造調整は、いずれも体制の革新と科学・技術の創造・革新によって推し進めなければならない。今後五年間、確固としてゆるぎなく改革を推進し、開放を拡大し、生産力の発展を妨げる体制上の障害を突き破って、経済と社会の発展のために大きな原動力を作り出す。科学技術、教育の発展を際立った位置に据え、科学技術・教育による祖国振興の戦略をさらに実施し、科学技術を振興させ、人材を育成し、科学技術、教育と経済の緊密な結びつきを促さなければならない。

 人民の生活水準の向上を根本的な出発点とすることを堅持する。都市農村人民の生活を絶えず改善することは、われわれが経済を発展させる根本的な目的であり、内需を拡大し、経済の持続的な成長を促すための差し迫った必要でもある。引き続き人民の生活水準の向上を重要な位置に置き、就業ルートを拡大し、住民の収入を増やし、収入の分配関係を合理的に調整し、社会保障システムを健全化させ、人民大衆がさらにゆとりがあるようになり、まずまずのレベルの生活へと進むことを保証しなければならない。

 経済発展と社会発展を結び付けることを堅持する。社会主義精神文明の建設と民主・法制の建設を大いに強化し、改革、発展、安定の関係を上手に処理し、諸般の社会事業の発展を促進し、社会の安定を確保する。人口、資源及び生態環境の問題を高度に重視し、真剣に解決し、持続可能な発展戦略を一歩進んで実施し、経済と社会のバランスのとれた発展を促進する。

 「第十次五ヵ年計画」の『綱要』は戦略的、マクロ的、政策的性格を強調し、現物指標を減らし、構造の変動を反映した所期指標を増やした。解決を必要とする主要な問題と重点的に発展させる分野をめぐって、努力目標とそれに相応する政策や措置を提出する。計画の実施は市場メカニズムの役割を十分に発揮させることを強調し、政府のマクロ規制は経済の槓杆としての役割、経済政策や法律手段をさらに多く運用しなければならない。計画の策定方法においては、社会諸方面が参与する度合の向上をはかり、計画の策定過程を民主を発揚し、大衆の英知を集めて、より大きな成果をあげる過程、各関係方面が共通認識に達する過程とすることに努める。

三 農業の基礎としての地位を強化し、農民の収入の増加のために努力する

 農業、農村及び農民の問題は改革開放と現代化建設の全局に関わる重要な問題である。「第十次五ヵ年計画」期に、農村における党の基本政策を全面的に貫徹し、農業の基礎としての地位を強化し、農民の収入を増やす。これを経済活動のもっとも重要な任務として、下記のいくつかの仕事にしっかり取り組まなければならない。

 農業と農村経済構造の調整を加速すること。これは農業の経済効率を向上させ、農民の収入を増やす根本的な方途である。耕地を確実に保護し、食糧生産能力の安定化をはかると同時に、品種の優良化、品質と効率の向上をめざして、栽培業の構造を積極的に調整する。牧畜業、林業、水産業の発展を速める。各地方の農業の比較優位を生かし、農業生産の地域的配置を合理的に調整し、特色のある農業を発展させ、規模化、専門化された生産の枠組構成を形成し、商品化率を高める。農業の産業化経営に大いに力を入れ、先頭を行く企業を助成し、「公司と農家の提携」、「注文書に基づいて生産する農業」などの多様な形態を普及し、農産物の加工、貯蔵・運搬、鮮度保持などの産業を発展させ、精加工の付加価値率を高める。郷鎮企業の構造調整、技術進歩と体制革新を導く。町・小都市を発展させ、都市化を積極的かつ穏当に推進し、農民の就業機会と増収のルートを拡大する。科学・教育による農業の振興を大いに促し、バイオ技術、情報技術などのハイテクの研究および開発、応用を強化し、優良品種と実用に適した先進技術を普及し、農業科学技術産業の発展を積極的に助成する。農産物のマーケット情報、食品の安全と品質基準及び検査・測定体系を確立する。構造の調整は地方の状況に即し、市場の法則に従い、農民の生産経営自主権を擁護しなければならず、強制命令のやり方はとらない。

 農村の諸般の改革を積極的に推し進める。土地請負関係を長期間にわたって安定させることを基盤として、条件の備わった地域が積極的に土地経営権譲渡制度の改革を模索することを奨励する。食糧の生産と流通の新たな状況に即して、引き続き食糧流通体制の改革を深化する。中央の食糧備蓄規模を適当に拡大するとともに、食糧の主要販売地では食糧流通の市場化の進捗を速め、食糧の主要生産地区と長期的な安定した、買付・販売関係の確立及び中央食糧備蓄の入替えと調節を通して、食糧の需要を保証する。食糧の主要生産地区は引き続き「農民の余剰食糧を保護価格で無制限に買い上げ、国有食糧買付・販売企業の順ザヤ価格での販売と買上げ資金の一本化政策及び国有食糧買付・販売企業の改革」を堅持し、また農民の余剰食糧の保護価格による無制限買付を堅持し、中央財政は引き続き資金の支援を与えることによって、その食糧生産の優位を十分に発揮する。こうすれば、主要生産区に販売市場を明け渡し、食糧価格を合理的回復を促すのみならず、主要販売区の農業構造の調整、農民の収入の全面的増加を促進するにもプラスになる。基本農地を立派に保護しなければならず、決して耕地を非農用地に無断変更することは許さない。これは超えてはならない「警戒ライン」である。農村における租税・費用徴収制度の改革を推し進め、現行の農業税と農業特産物税の税率を適当に引き上げるとともに、郷による統一調達、村への留保と農民に課されるあらゆる行政的性格の費用徴収を取り消す。これは農民の合法的権益を保護し、農民の負担を減軽する根本的な解決策である。安徽省のテストケースの経験を総括した上で、改革のテンポを速めなければならない。租税・費用徴収の改革と結び付けて、郷鎮機構を簡素化し、人員を削減し、補助手当てを受ける村・グループ幹部の定員数を減らす。条件が整った地方では郷鎮を適度に統廃合する。農村における金融改革を引き続き深化させ、農村の経済発展の要請に適応した農村金融システムを積極的に模索しなければならない。現地の実状に合わせ、農村信用組合の管理体制の改革を急ぐ。ポイントは、財産権関係を明確にし、コーポレート・カバナンス構造を健全化し、リスクを防ぎ止め、緩和、解消する責任をとるようにしなければならないということにある。農村信用組合は農業、農村、農民のために奉仕する方向を堅持し、経営管理を強化し、農村金融における主力軍と農民を繋ぐ金融としての役割を十分に発揮させる。農業銀行及びその他の金融機構は農業や農村経済に対するサポートを強化しなければならない。農村の供給・販売協同組合の改革を深める。

 農業と農村のインフラ建設を強化する。さらに投資を増やして、大河川・湖沼の治水を早急に進め、主要河川をコントロールする性格のプロジェクトの建設を急ぎ、崩壊の危険のある老朽化したダムの補強作業を強化し、洪水に対する調節・貯水能力を高める。大型灌漑区域における節水プロジェクトの改造に力を入れ、大衆を動員した農地・水利施設の建設を積極的に繰り広げ、水土保持に力を入れる。国の商品化食糧や良質農産物の基地の建設を強化し、農業の総合開発を立派に行う。農村の電力網、通信、ラジオ・テレビ、道路、給水などの施設の建設を引き続き強化し、農村における生産、生活及び市場の条件を確実に改善する。

 引き続き農村における貧困扶助活動を立派に行う。「八・七」貧困扶助・難関突破の任務は一応完成をみたが、根本から貧困地区の様相を一新することは、依然として長期的な困難を伴う任務である。中・西部における少数民族地区、かつての革命根拠地、辺境地区と特別貧困地区に対する貧困扶助活動を重点的に、立派に行わなければならない。開発型貧困扶助を引き続き堅持し、様々なルートを通して貧困扶助の資金投入を増やし、公共事業引き受けによる救済の規模を拡大し、貧困地区がインフラ建設の強化を図るのをサポートする。

四 産業構造の最適化とグレードアップを大いに推進する

 産業構造の調整とグレードアップは、経済構造の戦略的調整の重点である。それは次のいくつかの面にとくに力を入れなければならない。

 ハイテクや実用に適した先進技術を導入して技術改良を行うことにより在来産業のグレードアップを目指す。在来産業の再編と改造を重要な位置におき、市場志向によって、企業を主体とし、技術進歩をテコとして、次のいくつかの事業の推進にしっかり取り組まなければならない。一つは、品種の増加、品質改善、省エネルギーと消耗の減少、汚染防除、生産性向上を軸に、エネルギー、冶金、化学工業、軽工業・紡績業、機械、自動車、建材および建設などの業種において、一群の重点企業の技術改良をサポートし、製造技術や設備のレベルを確実に高めること。二つには、自主創造革新と技術の導入により、構造のグレードアップの推進に役立つ共通性のある技術や、カギとなる技術、関連技術の開発を加速すること。装置製造業の振興をはかり、至急必要とされる高能率の先進的な大型プラントを開発、製造する。三つには、株式上場、吸収合併、結合、再編などの形態を通じて、主な業種で独自の知的所有権を有し、本業が明確で、強力なコアコンピタンスを持つ若干の大会社と企業グループを形成し、それを構造調整とグレードアップを促進するための骨幹やよりどころとすること。四つには、旧工業基地の改造を積極的にサポートし、厚い基盤がある、人材が多く集まる優位性を存分に生かして、産業水準の向上に努める。それと同時に経済、法律および必要な行政手段を総合的に用い、製品の品質が悪く、資源を浪費し、汚染がひどく、安全作業の条件が備わっていない工場・鉱山をひきつづき法に基づいて閉鎖し、立ち遅れたものを淘汰し、過剰な生産能力を圧縮するとともに、それを移転して再建することを厳禁する。長期間赤字を抱えて債務超過に陥って黒字転換の見込みのない企業および資源の枯渇した鉱山は破産、閉鎖を実施しなければならない。企業の市場からの退出ルートを積極的につくり出し、逐次規範化させる。

ハイテク関連産業を発展させ、情報化によって工業化を促す。実際から出発し、情報技術(IT)や、バイオ工学、新素材などのハイテク産業の発展を選択的に加速する。高速広帯域情報通信網、カギとなる集積回路(IC)、新型運搬ロケットなどの重要なハイテク・プロジェクトの建設を重点的にサポートし、わが国のハイテク産業に群としての優勢と局部的強みをもたせる。情報関連製品製造業の発展を加速し、自主開発能力とシステム・インテグレーション能力を増強する。ソフトウエア産業を積極的に発展させる。情報関連インフラの建設を強化する。全社会で情報技術(IT)を広く推し広め、工業化と情報化をよりよく結び付ける。
 水利、交通、エネルギーなどのインフラ建設を強化し、資源戦略の問題に高度の重視を与える。水資源の不足はわが国の経済と社会発展をきびしく制約する要因である。節水を突出した位置におき、合理的な用水価格形成メカニズムを形成し、さまざまな節水の技術や措置を全面的に普及させ、節水型産業を発展させて、節水型社会の形成に取り組む。水質汚濁の防除を強化する。中国南部の水を北部へ引いてくるなどの重要プロジェクトの企画と建設を急ぐ。自動車道路や鉄道、港湾、航路、空港、パイプライン・システムの建設を強化して、スムーズに運行する安全かつ便利な現代的総合輸送システムを構築し、健全化させる。エネルギー、とくに石油の問題は、資源戦略における重要問題の一つである。国内での石油開発と生産ではすでに経済と社会の発展に応えきれず、需給の矛盾が日増しに突出してきている。あらゆる方法を講じて石油の節約に努めなければならず、そして石油と天然ガスの探査・開発のテンポを速め、国外の資源を進んで利用し、石油などの戦略的資源の備蓄制度をなるべくはやく打ち立てる。大型炭鉱の改造を鋭意推進し、高生産・高能率の炭鉱を建設し、クリーン・コールの開発・利用を重視する。既存の発電能力を十分利用し、水力発電所、大容量の山元発電所を積極的に発展させ、小規模火力発電所を圧縮し、原子力発電所を適度に発展させる。各種新エネルギーの発展を重視し、電力体制の改革を深化させ、発電所と電力網の分離や、送電網への競争入札制を逐次推進する。
 サービス業の発展のテンポを速める。これは構造のグレードアップを促し、就業機会を増やす重要な方途である。情報、金融、会計、コンサルタント、法律などの現代的なサービス業を積極的に発展させ、これによりサービス業全般のレベルアップをはかる。現代的な経営方式やサービス技術を用いて、商業流通、交通運輸、市政サービスなどの在来のサービス業を改造し、サービスの質と効率を向上させる。一般住民向けの不動産、コミュニティーサービス、観光、飲食、娯楽、健康の維持増強などと関わりのある産業を発展させ、サービスの内容を増やす。改革を深化させ、必要な政策、措置をとることにより、サービス業の発展にプラスとなる環境を整備する。

五 西部大開発を実施し、地域間のバランスのとれた発展を促す

 西部大開発戦略を実施し、中・西部地区の発展を加速することは、わが国が現代化建設の第三段階の戦略目標へまい進するための重要な布石である。「第十次五ヵ年計画」期には、重点分野を優先させ、幸先のよいスタートを切り、重点的にインフラと生態環境の建設に力を入れて、五年ないし十年間で飛躍的な進展をとげるようにし、さらに科学技術、教育にもかなり大きな発展がみられるように努めなければならない。
 力を集中して、西部の天然ガスの東部への輸送や、西部の電力の東部への輸送、青海=チベット鉄道などいくつかの戦略的意義のある重要プロジェクトを建設する。水資源の保護、節約、開発を突出した位置におき、計画性を強め、合理的に配置し、水の利用率の向上に努める。段取りを追って、地元の実情に合わせて、天然林の保護や、耕地のもとの林地・草地への復旧、砂漠化防止、草原保護などの重要プロジェクトの建設を推し進め、生態系の自然の回復力の作用に配慮しながら、わが国の西部地区に堅固な緑の生態的障壁を徐々に作り上げる。教育事業を積極的に発展させ、至急必要とされる各種人材の育成を急ぐ。科学技術への投入を増やし、科学技術の開発力を増強する。各地の実情から出発して、比較優位を生かし、産業構造を調整、最適化し、農業を強化し、それぞれの特色をもつ地域経済を育成し、形成させる。西部開発は、ユーラシア・ランドブリッジ(中国・連雲港=オランダ・ロッテルダム鉄道)や、長江の水路、西南地区から海に出るルートなどの主要交通幹線に依拠して、中心都市の凝集機能と波及作用を発揮させ、点を線で結び、点から面へ広げるようにして、連雲港=蘭州鉄道(西区間)・蘭州=ウルムチ鉄道沿線経済ベルト地帯や、長江上流域経済ベルト地帯、南寧・貴陽・昆明などの経済区を育成することにより、周辺地域の発展を促す。
国務院はすでに西部大開発に関する若干の政策、措置を公布し、国が西部地区への投入や財政移転支出を増やすことになっている。西部地区は主として自らの力に頼ることに立脚し、刻苦創業の精神を発揚し、長期にわたって奮闘する準備を整えなければならない。改革・開放のテンポを速め、良好な投資環境を創出し、国内、国外の資金、技術、人材をより多く、よりよく誘致して西部の開発に参加させる。幹部の交流を強化する。
 中部地区は地域の優位と総合的資源の優位を生かし、経済発展のテンポを速める。主要な水陸交通幹線地域を重点として、新しい経済成長スポットと経済ベルト地帯を鋭意育成する。農業をうち固め、発展させ、引き続きインフラと生態環境建設を強化する。ハイテクと先進的かつ実用的な技術による在来産業の技術改造にいっそう力を注ぎ、技術水準と競争力を向上させる。 東部沿海地区は内外の市場に目を向けて科学技術の進歩や技術革新のテンポを速め、ハイテク産業と輸出型経済の発展に力を入れ、経済の総合的体質と国際競争力を増強し、条件の整った地区は率先して現代化の基本的実現を達成すべきである。多様な形態をとって中・西部地区との経済・技術協力を強め、中・西部地区の経済発展をサポートし、促して、東部の構造調整と経済成長の発展の可能性をさらに広げる。

六 科学技術・教育による国家振興の戦略を実行に移し、人的資源を大いに開発する
 これは『綱要』の重要な内容であり、今後五年間の諸般の任務を達成するための重要な保証である。
 科学技術の進歩と創造・革新を促進し、経済の構造調整と発展に強大な原動力を提供する。一つは、戦略的意義を持つハイテクノロジー研究を積極的に推し進め、一部の国民経済の命脈と国家の安全に関わる、カギとなる技術分野において飛躍的発展を目指すこと。自主的創造・革新能力の向上に努め、ハイテク成果の産業化を促すこと。二つは、在来産業のグレード・アップに技術上のサポートを提供すること。重点としては、農産物の加工及び転化、設備製造、節水・省エネルギー、紡績品のアフター・トリートメント等の諸技術において進展が見られるようにし、在来産業へのハイテクの浸透を速める。三つは、基礎研究と応用型基礎研究を強化し、科学技術の持続的な創造・革新能力を向上させること。基礎科学の重点分野における先端的学際的な研究を強化する。わが国に優位のある、発展にとって重要な意義を持つ分野を選んで、応用型基礎研究を強化し、遺伝子工学、情報科学、ナノテクノロジー科学、生態科学及び地球科学等の面で新たな進展が見られるよう力を入れる。自然科学と社会科学の交叉融合を促進し、管理科学の発展を推進する。哲学、社会科学の発展を重視し、理論の創造・革新を推し進める。
 科学技術体制改革のテンポを速め、科学技術と経済の緊密な結合をさらに促進する。国の創造・革新システムの建設を強化する。企業が技術進歩と創造・革新の主体となるよう促す。技術開発の種類に属する科学研究院・研究所を企業に組み入れるか、企業に組織替えすることを引き続き奨励する。社会公益の種類に属する科学研究院・研究所の改革を鋭意推進する。一群の国際的な影響力を持つ科学研究機構を育成、形成する。社会化された科学技術関連仲介サービス業を発展させる。ベンチャー・キャピタルのメカニズムを整備し、起業資金調達株式市場を設立し、中小企業の技術革新をサポートする。国と社会の科学技術への資金投下を増大し、国の重点実験室の建設を強化する。
 教育の適度に先取りした発展を堅持し、国民経済と社会発展に奉仕する。教育を発展させるには現代化に目を向け、世界に目を向け、未来を見据えて、資質教育の推進に力を入れ、学生の徳育、知育、体育、美育の全面的な発展を促さなければならない。九年制義務教育の基本的な普及と青・壮年非識字者の基本的な一掃によってもたらされた成果を打ち固め、高校段階の教育と高等教育の発展を速め、数多くの高水準の大学と学科を重点的に建設する。職業教育と職業養成・訓練に大いに力を入れ、職業教育と普通教育が相互に結び付く教育体系を確立する。成人教育と多形態の生涯教育を発展させ、逐次生涯教育システムを確立する。情報技術による遠隔地教育を発展させる。経済と社会の発展の要請に応じて、引き続き教育構造とその配置を調整し、専攻学科の設置を最適化させ、教材を更新し、カリキュラム、試験評価制度と教学方法を改革し、教学の質を向上させる。徳育を改善し、学校における思想・政治教育活動を強化する。教師陣の育成を立派に行い、教師の資質を全面的に高める。
 学校運営体制と教育管理体制の改革を深化させる。法に基づいて大学の運営自主権を実行に移し、大学の庶務サービスの社会化を引き続き推進する。民間による学校運営を奨励、支持し、規範化させる。教育に対する国と社会諸方面の資金投下を増やす。貧困地区の教育に対する中央と省クラスの財政移転支出と特別項目の投入をさらに増やす。基礎教育経費に対する県レベルの政府の統一調達を強化し、教師給与の統一支給という措置を確実に実行する。奨学金、教育補助金、学資貸与等の制度を健全化させる。有力な措置を講じて、学校におけるむやみやたらな費用徴収を確実に制止する。
 人材戦略を実施し、人材の育成、誘致と人材の立派な活用を重要な任務の一つとする。現代化建設の大局と長期的な発展に着眼して、中国の特色を持つ社会主義の道を歩み続け、かなり高い政治理論の素養と開拓精神を身に付け、現代科学・文化と管理の知識を習得し、実践の試練を経た高い資質をもつ指導的人材陣を育成する。公僕意識をもち、廉潔で政務に励み、資質も高く、専門知識を身につけた公務員陣を育成する。先進的科学技術と管理知識をマスターし、創造・革新能力が強く、経済と社会発展の必要に適応できる各種専門人材陣と企業の経営管理陣を育成する。国際先端水準をもつ学科のリーダーの育成を重視する。労働者全体の科学的素養と労働技能を普遍的に向上させる。幹部人事制度の改革を深化させ、各種人材に対する選抜、任用、考課、異動・配置、インセンティブ・監督という制度を確立し、充実させ、人材の輩出及びその才能が十分発揮できるメカニズムを構築する。人材市場をつくり、充実させる。法に基づいて知的所有権を保護する。海外の優れた専門人材を誘致、招聘する。留学人員が帰国して仕事に就くか、適当な方式により祖国のために働くことを奨励する。

七 改革をさらに深化させ、対外開放を拡大する

 社会主義市場経済体制を逐次整備し、構造調整と経済発展を促進する要請に応じて、改革を鋭意推進し、対外開放を拡大しなければならない。
 企業が真に市場競争の主体となるよう、国有企業の改革を引き続き深める。この重点は現代企業制度の確立と整備を加速させることである。国有大・中型企業がルールに則った上場、中外合弁、株式持ち合い等の形によって、株式制を実行し、経営メカニズムを転換させることを奨励する。国民経済の命脈と国の安全と関わりのある重要企業に対して、国は持株によって支配権を確保しなければならない。その他の企業に対しては必ずしも持株によって支配する必要はない。国有資産管理の効果的な形態を積極的に模索する。コーポレート・ガバナンス構造を健全化させる。特に国有企業に対する監督・管理メカニズムを確立し、充実させ、監事会の役割を十分に発揮させなければならない。企業の人事、労働及び分配制度の改革を深め、インセンティブメカニズムと制約メカニズムを構築し、健全化するとともに、科学的管理を強化する。産業構造調整と結び付け、「前進もあれば退却もあり、為すところもあり為さぬところもある」という方針を堅持して、国有経済の配置の戦略的な調整を推し進める。引き続き国有中小企業を自由化、活性化させる。政府・企業の分離を一歩進めて実行し、政府の機能を着実に転換し、行政的な審査・許認可を減らす。商会、業種別協会などの仲介組織としての役割を果たす。電力、鉄道、民間航空、通信等の業種別の管理体制改革を推進し、競争メカニズムを導入しなければならない。改革を通じて、政府と企業との関係が真に社会主義市場経済の要請と合致した軌道に乗るようにする。引き続き所有制構造を調整し、整備する。公有制経済を主体とし、国有経済の主導的な役割を発揮させ、多様な形態の集団経済を発展させ、私営経済、個人経営の健全な発展を導き、それをサポートし、奨励する。
市場における経済秩序の整頓と規範化に大いに力を入れ、市場システムをよりいっそう発展させる。これは、当面における経済の正常な運営を保証する差し迫った要請であるとともに、また社会主義市場経済体制を充実させる重要な措置でもある。市場に関する法律・法規を健全化させ、厳格に法律を実行する。市場の監督メカニズムを充実させ、現代科学技術手段を運用し、監督・管理にいっそう力を入れる。手をゆるめることなく、ニセモノや粗悪品の製造・販売、脱税、税金のごまかし、外貨詐取、密輸といった違法犯罪行為を厳しく取り締まる。建材市場を整頓する。金融秩序を整頓し、規範化させる。財政・経済面の規律を厳しくする。会計監査・監督の仕事を強化する。社会仲介機構の行為を規範化させる。安全生産の管理と安全監督・検査を強化する。部門、業種による独占と地域的封鎖を打破し、全国的に統一した、公正な競争をおこなう、規範化した、秩序ある市場システムを早急に樹立し、充実させる。要素市場、とりわけ資本市場を重点的に育成し、発展させる。誠実に信用を守るという職業モラルを大いに唱導し、社会における信用制度の確立と健全化を速める。
マクロ規制を強化、改善し、引き続き財務・税務、金融、投資の体制改革を深める。経済情勢の変化に基づいて、それに応じたマクロ経済政策を実施する。今後一時期は、引き続き積極的な財政政策を実施し、投資を引き出し、消費を促進させる。法によって、財務管理を全面的に推し進め、租税の徴収・管理を強化し、財政監督を厳格にし、税金・費用の改革及び予算制度の改革を速める。財政支出構造の調整、最適化に力を入れ、社会主義市場経済の要請に適応した公共財政の枠組みを逐次構築する。引き続き国内の需要を拡大し、デフレ傾向を抑制する状況の下で、懸念される経済の過熱とインフレの防止に留意する。穏健な通貨政策を引き続き実施し、マネーサプライを適時に調節し、人民元の貨幣価値の安定の維持を図る。現代的銀行制度に則って、国有独資商業銀行に対し、総合的な改革を実施し、政策的性格の銀行としての機能を発揮させ、中小型金融機構を立派に運営する。証券市場を規範化し、健全化させ、投資者の利益を保護する。保険業をさらに発展させる。金融の監督・管理を改善、強化し、厳格な経営管理考査制度と責任追及制度を実施し、金融サービスを改善し、金融資産の質の向上に努め、金融リスクを防止、緩和、解消する。投資体制改革を深化し、投資プロジェクト法人責任制、入札制およびプロジェクト監理制、契約管理制を全面的に実行し、投資の制約メカニズムを健全化する。
経済のグローバル化の趨勢に対応して、対外開放のレベルをよりいっそう高める。一つは、世界貿易機関(WTO)への加盟の準備と移行期の諸般の作業を立派に推し進めることを急がなければならない。確実な措置をとり、政府による管理の方式を改め、企業の競争力を向上させる。改革を深め、国際規範とわが国の国情に合った対外経済貿易体制を整備する。関連の法律、法規の改正と整備を速める。国際貿易のルールに明るい専門家の育成を急ぐ。二つは、輸出入貿易をよりいっそう発展させなければならない。引き続き品質で勝負し、科学技術によって貿易を振興する戦略を実施する。輸出製品構成の最適化をはかり、ハイテク製品のウエートを向上させ、大口伝統商品の新技術応用率と付加価値を高め、サービス貿易の規模を拡大する。加工貿易の管理を規範化し、加工貿易の付加価値率を引き上げる。市場を多元化する戦略を大いに推し進め、新たな輸出市場を開拓する。それと同時に、国内で至急必要とされる先進技術、重要設備と重要な原材料の輸入を重点的に行う。多国間貿易システムと国際地域経済協力に積極的に参加する。三つは、外資利用レベルの向上に努めなければならない。段取りを追ってサービス分野の対外開放を推し進める。外商、特に多国籍企業がハイテク産業、インフラ等の分野へ投資し、またこれらの企業がわが国で研究開発機構を設置し、国有企業の再編や改造に参与することを奨励する。条件の整った企業の国外での上場を支持する。投資環境をさらに改善する。買収・合併(M&A)、ベンチャーキャピタル、投資ファンドおよび証券投資等の形態を積極的に模索し、取り入れ、外資利用の規模を拡大する。四つは、「海外進出」戦略を実施しなければならない。比較優位のある企業が国外で投資し、加工貿易を展開し、資源の共同開発を行い、海外工事請負事業を発展させ、労務供給を拡大すること等を奨励する。政策サポートシステムを確立し、充実させ、企業が国外で投資し、事業を興すための条件を整える。それと同時に監督、管理を強化し、国有資産の流失を防ぐ。
八 人民の生活を絶えず改善し、社会保障制度を充実させる
経済の発展を基礎として、人民の生活をかなり大幅に改善し、よりいっそう豊かな、まずまずのレベルの生活に向かって逐次まい進することは、今後五年間の重要な任務である。
社会保障制度の充実を加速する。これは、改革、発展、安定の全局にかかわる大事である。国有企業の一時帰休者の基本生活費と引退・退職者の基本養老年金が期限通りに全額支給されることを確保しなければならない。同時に、企業・事業体から独立した、多様な資金源を持ち、保障制度が規範化され、管理・サービスが社会化された社会保障システムを早急に形成する。都市部における社会保障システムの試行事業の健全化を鋭意推進する。社会における統一調達と個人の口座とを結び付けた、都市部職員・労働者の基本養老保険制度を引き続き充実させる。失業保険制度を逐次整備し、国有企業の一時帰休者の基本生活保障と失業保障の一本化を逐次実現する。都市部住民の最低生活保障制度を強化し、困難をかかえる大衆の生活に関心を寄せる。都市部職員・労働者の基本医療保険制度や医療機構と薬品流通体制の改革を積極的に推し進める。条件の整った企業・事業体が職員・労働者のために養老年金補助と医療保険補助を設置することを奨励するとともに、商業保険の役割も果たすようにする。安定した、信頼性のある社会保障資金調達メカニズムと効果的に運営される厳格な管理メカニズムを打ち立てる。社会福祉や社会救済、軍人遺族などに対する優遇・扶助・世話や社会における相互扶助等の社会保障事業を発展させる。女性、未成年者、高齢者、身体障害者の合法的権益を確実に保障する。身体障害者関係の事業の発展をサポートする。
あらゆる方策を講じて就業機会をさらに創出する。「第十次五ヵ年計画」期の就業機会のさらなる創出の任務は非常に重い。経済の比較的急速な発展を保つとともに、比較優位のある労働集約型産業の発展、とくに就業機会の大きいサービス業の発展を重視し、集団経営企業や私営、個人経営企業を積極的に発展させ、就職のための職場を増やすことに力を入れ、就業ルートをさらに広げなければならない。弾力的で多様な就業形態を発展させる。人々が職業選択意識を転換するよう導き、事業を興したり自力で職探しをするよう奨励する。労働力市場の建設を強め、就職サービス・システムを整備し、職業養成訓練を発展させ、市場志向の就業メカニズムを形成する。
住民の収入をたえず増やし、とりわけ低所得層の収入を引き上げる。経済成長に応じた賃金支給制度、最低賃金制度及び最低賃金基準調整メカニズムを確立し、健全化させる。各級財政は「まず食べることを、次に建設のことを考える」という原則に従って、政府機関・事業体職員の賃金と引退・退職者の年金を遅滞なく全額支給することを保証し、その賃金待遇を逐次改善しなければならない。所得分配制度の改革を深化させる。効率を優先させ、公平さもあわせて配慮するという原則を堅持する。労働に応じた利益分配を主とし、多様な分配形態を並存させる制度を真剣に貫き、資本、技術等生産要素が収益分配に参入することを奨励する。国有企業のハイレベル経営管理者や、技術者の賃金、報酬を引き上げ、かれらの労働価値を十分具現するとともに、厳格な制約・監督制度を導入して、その仕事ぶりの良し悪しや企業の効率の高低にもかかわらず一律に高給をもらうようなことがあってはならない。適任ではなく、職務に忠実でないものに対しては、それ相応の制裁措置を取らなければならない。国有上場会社の責任者や中堅技術者に対しては、年俸制とストック・オプション制を実施してもよいが、国有資産を分割して個人に分け与えてはならない。独占業種に対する所得分配の監督・管理を強化する。社会における分配秩序を規範化させ、所得分配に対する税収の調節機能を強化し、所得分配の格差が過度に拡大することを防ぐ。
消費構造を調整し、消費環境を改善する。都市農村住民の住宅、交通条件の改善に力を入れる。安価で実用的な住宅を大いに発展させ、安価な賃貸住宅供給保障システムを確立する。公共交通を積極的に発展させる。都市緑化と都市農村インフラ建設を強化し、都市農村住民の生活環境を改善する。コミュニティーにおける医療・衛生予防保健システムを発展させ、農村部での医療・衛生サービス条件の改善に努め、大衆性的なスポーツ施設の建設を強化する。

九 引き続き持続可能な発展戦略を実施する

 人口、資源、環境のバランスのとれた発展を促し、持続可能な発展戦略をさらに際立った位置におかなければならない。
計画出産の基本国策を堅持する。低出産レベルの維持に努め、少なく生んで立派に育てる政策を促進させなければならない。農村と流動人口に対する計画出産の仕事を重点的に行う。計画出産における奨励メカニズムを確立し、引き続き地方党・政府指導者責任制を実行し、人口と計画出産面での法制建設を加速する。高齢者に対する仕事を真剣に行い、高齢者関連事業を発展させる。
資源を保護し、合理的に利用する。法に基づいて淡水、土地、エネルギー等の貴重な資源を保護し、合理的に利用する。戦略物資である鉱物資源の備蓄と安定供給システムを逐次築き上げる。海洋資源に対する総合開発・利用と保全を強化する。資源のリサイクルを積極的にくりひろげ、資源の総合利用率を大いに向上させる。資源の有償使用制度を健全化させる。鉱産物などの資源の国家所有者権益を守る。資源の保護と利用に関する法律・法規を充実させ、法の執行と監督を強化する。
生態建設と環境保全を強化する。長江上流、黄河上中流域等の天然林保護プロジェクトの建設に力を入れる。引き続き東北、華北、西北地区と長江中下流などの重点防護林システムの建設を強化する。カルスト地帯の石漠化の総合的な対策を推し進める。北京・天津地区の砂塵発生源の対策に力を入れる。重点となる流域、地域、海域の汚染防除を引き続き展開する。都市公害に対する総合対策を講じて、大・中都市の環境の質が目に見えて改善されるようにする。農村における環境保護を重視し、とりわけ農業の化学物質による汚染の防除に取り組まなければならない。環境、気象、地震に対するモニタリング・システムを健全化させ、災害防止と被害軽減の仕事を立派に行う。

十 精神文明と民主・法制建設を強化し、国防建設を強化する
社会主義精神文明の建設を大いに強化する。両手でつかみ、両手とも力を入れる方針を始終堅持する。マルクス主義の指導的地位を打ち固め、強化し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論をもって人民を教育し、愛国主義、集団主義、社会主義精神を発揚する。幹部は「三つの代表(わが党は始終変わることなく中国において先進的な、社会生産力の発展を求め、中国の先進文化の前進を導き、中国の最も広範な人民の根本利益を忠実に代表することができれば、わが党は永遠に不敗の地に立つことができ、永遠に全国人民の心からの擁護を受けるとともに、彼らを導いて絶えず前進することが可能となる)」という重要な思想教育を一段と繰り広げ、学習を重んじ、政治を重んじ、正しい作風を重んじることを堅持し、正しい世界観、人生観、価値観を打ち立てる。社会主義市場経済の発展に適応した思想・モラル体系の確立に力を入れ、法によって国を治めることと徳によって国を治めることを結びつける。科学知識を普及させ、愚昧迷信に反対する。文明的かつ健康的な生活様式を提唱する。文学・芸術、報道・出版、ラジオ・テレビ・映画などの諸般の事業を一層発展させる。人民のために奉仕し、社会主義のために奉仕する方向と百花斉放、百家争鳴の方針を堅持し、よりすばらしい精神的作品をさらに多く生み出す。世論の正しい方向付けを堅持する。新しい情報メディアの建設、管理を高度に重視する。図書館、文化館、科学技術館、博物館、文書保存館等の文化施設の建設を強化し、青少年や高齢者向けの活動場所の建設を強化する。文化システムの改革を深め、文化関連産業の発展を推し進める。文化市場を整頓し、規範化させ、ポルノ一掃や不法出版物取締りのキャンペーンをたゆむことなく繰り広げていく。
 社会主義民主・法制の建設を積極的に推進する。社会主義の民主政治を発展させ、法によって国を治め、社会主義の法治国家を建設する。政治体制の改革を引き続き推進する。民主的な選挙、民主的な政策決定、民主的な管理ならびに民主的監督を実行し、人民が法に依拠して広範な権利と自由を享有することを保証し、人権を尊重し、保障する。人民代表大会の立法と監督の仕事を引き続き強化させる。人民政治協商会議の政治協商、民主的監督、政治参加、政策討議の役割を発揮する。社会主義の市場経済体制に適応した法システムを完備する。各級政府は自覚をもって同じレベルの人民代表大会の監督を受け、自ら進んで政治協商会議の意見に耳を傾けなければならない。政府活動の法制化を推進し、法に基づく行政を推進し、厳格に行政を執り行う。司法改革を深化し、厳しく法律を執行し、司法の公正化をはかる。反腐敗闘争を深く展開し、廉潔政治の建設を強化させる。法秩序の教育を強化し、公民全体の法意識を増強させる。公安・司法システムのインフラ建設を強化し、公安・司法陣の資質を向上させる。
 党の民族政策をさらに実行し、民族区域自治制度を堅持し、完備し、平等、団結、互助という社会主義の民族関係を発展させること。西部大開発と結び付け、少数民族および民族地区の経済の発展と社会の全面的な進歩を加速させる。諸民族がともに繁栄し、進歩することを促す。党の宗教政策を全面的に貫徹し、公民の宗教信仰の自由を保障し、法に基づいて宗教事務に対する管理をおこない、宗教が社会主義社会に適合するよう積極的に導く。党の華僑政策を真剣に貫徹し、海外華僑・同胞の祖国現代化建設および平和統一の大事業における役割を十分に発揮させる。
 社会の安定をさらに維持する。新しい時期における人民内部の矛盾を正しく処理する。大衆からの投書や苦情を重視する。社会治安の総合対策を立派におしすすめ、社会と国家の安全に危害をもたらす様々な犯罪活動を取り締まる。法に基づいて民族分裂活動、宗教過激派勢力、暴力テロ活動、邪教および宗教を利用した不法活動を取り締まらなければならない。「法輪功」という邪教組織に対する闘争を引き続き展開し、人類に反し、社会に反し、科学に反する邪教としての本質とわが国の社会主義政権に反対する国内外の敵対勢力の道具に成りさがった反動的本質を深く掘り下げて暴露し、批判し、法に基づいてごく少数の違法犯罪分子をたたきのめし、気をゆるめることなく大多数の騙された大衆を獲得し、教育し、救い出さなければならない。
 国防と軍隊の建設を強化すること。これは国の安全と現代化建設における重要な保証である。力を集中して国民経済を発展させると同時に積極的に国防建設を推し進め、国防力を増強しなければならない。軍隊の思想政治建設を大いに強化し、軍隊に対する党の絶対的な指導および軍隊建設の正確な方向付けを確保する。新しい時期における積極的防御という戦略方針を真剣に貫徹し、改革・革新を堅持し、戦闘力の向上を中心とする軍隊の建設や科学技術による軍事力の強化、勤倹の精神に基づく軍隊の建設および法律に依拠した軍の統轄を堅持し、中国の特色をもつ軍隊精鋭化の道を歩み、軍隊の革命化、現代化、正規化建設のレベルを全面的に向上させなければならない。全人民の国防意識の強化をはかり、国防動員体制をよりいっそう健全化させる。国防科学技術の研究を強め、国防科学技術工業の調整、改革を推進し、新型兵器・装備を発展させ、現代技術とりわけハイテク条件下におけるわが軍の防衛戦闘能力を強化し、種々な複雑な局面に対処する準備を立派に行う。
 代表の皆さん! 新しい世紀に入り、われわれはひきつづき「一国二制度」の方針および基本法に基づいて、香港特別行政区、澳門特別行政区の行政長官と政府が法に依拠して行政に取り組むことをサポートし、香港、澳門地区の長期の繁栄と安定を維持しなければならない。
 早期に台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現するということは、中国各民族人民の共通の願いであり、われわれにとっての重大な任務である。われわれはこれまでと変わることなく「平和統一、一国二制度」の基本方針を堅持し、江沢民主席が打ち出した八項目の主張を堅持し、広範な台湾同胞とともに分裂を引き起こすいかなる陰謀をも断固として阻止し、祖国の平和統一を勝ちとるためのすべての可能性をあらゆる方策を講じて追求する。われわれは一つの中国の原則を堅持し、この原則を踏まえて、引き続き海峡両岸の間の対話と交渉を推進し、両岸の経済文化交流と人的往来を発展させる。中国人民のたゆまぬ奮闘によって、祖国の平和統一の大業は必ず早期に実現されるであろうことをわれわれはかたく信じている。
 世界の多極化および経済のグローバル化が深く発展している国際情勢を前にして、われわれは終始変わることなく独立自主の平和外交政策を実行し、平和共存五原則を基礎として、世界各国との友好協力関係をさらに発展させ、長期にわたる国際平和環境と良好な周辺環境を勝ちとることに努める。中国は国際事務に積極的に参加し、世界平和を守り、国際協力を促進し、ともに発展することを実現するために、また平和で安定した、公正で合理的な国際政治・経済の新秩序の構築を推進するために新たな貢献をすることであろう。

 代表の皆さん! 二〇〇一年は新しい世紀に入り、第十次五ヵ年計画を実施する最初の年である。中国共産党の第十五期五中全会と中央経済活動会議の趣旨を全面的に貫徹し、今年度の諸般の活動を立派にやり遂げることは、第十次五ヵ年計画が幸先のよいスタートを切るために、このうえなく重要な意義をもっている。内需拡大の方針を堅持し、積極的な財政政策および穏健な通貨政策を実施する。引き続き一五〇〇億元の長期建設国債を発行し、それを着工中のプロジェクトと西部開発プロジェクトに集中的に使う。同時に、政府機関・事業体の職員の賃金を適当に引き上げ、都市部の低収入層の収入を引き上げる。農業を強化することと農民の収入を増やすことを経済活動の第一義的位置に据えて、強力な措置を講じて現在農業、農村に存在する際立った問題を確実に解決する。国有企業改革の成果を打ち固め、拡大し、現代企業制度の確立、企業経営メカニズムの転換と科学的管理の強化のうえで思いきり工夫をこらさなければならない。わが国の世界貿易機関(WTO)への加盟の諸般の準備作業を急ぐ。社会保障システムの整備を速め、多ルートを通じて就業を拡大し、人民の生活を改善させる。市場経済秩序の整頓と規範化に全力を注ぐことを差し迫った重要な任務としなければならない。精神文明と民主・法制の建設を強化する。引き続き改革、発展、安定の関係を上手に処理し、社会治安の総合対策に力を入れ、社会の安定を維持する。北京市のオリンピック誘致の活動をサポートする。統一的に計画し、各方面に配慮し、勢いに乗じて前進し、経済と社会の発展の良好な勢いを維持しなければならない。
 代表の皆さん われわれはすでに二十一世紀に足を踏み入れ、現代化建設の第三段階の戦略目標を目指して前進する新しい征途を歩みはじめている。いかなる困難、危険や障害も中国人民が勝利のうちに前進する歩みを阻むことはできない。われわれは江沢民同志を中核とする党中央の周りにかたく団結し、ケ小平理論の偉大な旗じるしを高く掲げ、党の基本路線を堅持し、「三つの代表」という重要な思想を導きとして、志気を奮い立たせ、着実に仕事に取り組み、第十次五ヵ年計画の目標を達成するため、わが国を富強・民主・文明の社会主義現代化国家に築き上げるために奮闘努力しようではないか。  

(注:この報告については、今会議で最終的に審議、採択され、新華社から発表されるものが基準となります。)