計画経済体制の下では、国家公務員や企業・事業体の労働者・職員の養老、医療などの福祉がいっさいがっさい国によってまかなれていた。国有部門に入ると、一生が保障されることになっていた。中国が高齢化社会に入るにつれて、定年退職者がますます多くなり、従業員の人数を上回る企業も現れており、企業の生産経営の重荷と悩みのタネとなっている。1990年代に入って以来、中国は養老保険、失業保険、医療保険制度の普及に力を入れ、国務院は『失業保険条例』、『社会保険料徴収についての暫定条例』、『都市部住民の最低生活保障条例』などの法規を公布し、社会保障制度の実施のための法的保証となっている。現在、養老、失業、医療、最低生活保障を一体化し、企業・事業体から切り離し、社会化した管理を実行する保障制度が一応構築されるに至った。
――養老保険。基本養老保険は国有企業、集団企業から各種所有制の企業、企業化管理を実行している事業体をカバーし、国有企業以外の企業の従業員の権益も保障されるようになった。2002年末までに全国で1億1129万人の従業員と3608万人の定年退職者が基本養老保険に加入した。
――医療保険。基本医療保険はすでに都市部のさまざまな企業・事業体、政府機関、社会団体をカバーし、社会保険制度の中でカバー率が最も大きいものの一つとなっている。2002年末現在、全国で9401万人が基本医療保険に加入した。
――失業保険。中国は人口が多いため、大きな就職の圧力に直面している。中国政府は就業の矛盾を緩和するため、1993年から労務市場政策を実施し、就職のルートを開拓し、とりわけこの数年、産業構造の調整による国有企業の一時帰休者に対し、再就業プロジェクトを実施している。2002年末現在、全国の都市部の従業員は2億4780万人に達した。1998年に入って以来、1800余万人の国営企業の一時帰休者はさまざまなルートを通じて再就職し、2002年末の失業登記率は4%であった。事業部門で実施されている失業保険制度は労働力の合理的移動と労働力統一市場の形成を促した。2002年末までに、全国の失業保険加入者数は1億182万人、保険金受領者数は440万人であった。
――最低生活保障。全国のすべての都市と県は1人当たり所得が地元の最低基準を下回る住民に基本的な生活保障を提供する「最低生活保障制度」をつくった。2002年末現在、全国で都市部の最低生活保障金を受け取るものの人数は2054万人に達し、都市部の貧困者には例外なく生活保障金を給付されたが、農村でも多くの地区で最低生活保障制度が確立し始められた。