中国の伝統的な芝居は戯曲という独特な呼び方がある。それはギリシアの悲劇や喜劇、インドのサンスクリット劇とともに世界の三大古代演劇文化と称えられている。中国の芝居は300余種あり、歌と踊をとり入れた形で劇のストーリーを表現することが中国の芝居の主な手法である。
京劇
京劇は最も広く伝わっており、影響力の最も大きなものであり、中国のより古い演劇芸術の昆曲から発展してきたものでもある。京劇という唱(うた)、せりふ、所作を一体化させた舞台芸術は19世紀の初めに北京で生まれたものである。200余年におよぶ舞台芸術の実践の中で、1000以上の演目が蓄積され、京劇の一組の音楽の拍子と演技のパターンが形成された。梅蘭芳、程硯秋、馬連良、周信芳、杜近芳ら数多くの優れた京劇芸術家が次々と現われ、大勢の青年芸術家が京劇の事業に身を投じた。1990年代以後、王蓉蓉、于魁智らの舞台姿の優れた若い役者の出現によって、京劇芸術はれっきとした後継ぎに恵まれることになった。
2002年に、中国京劇院は大胆な試みを行い、西洋交響楽を伝統的な京劇に取り入れ、京劇界で一致した好評を博した。2002年に、中国京劇界におけるいま一つの盛事は、京劇を保存し、伝えていくため、17年にわたって355の古典京劇の録画・録音製作をなし遂げ、1940年代から60年代にかけての若い京劇役者との共演を加えた47人の著名な京劇表演芸術家のすばらしい作品の断片を収録したことである。
地方芝居
地方芝居は伝統的なものを保つ基礎の上で絶えず革新され、姿を一新している。かなり盛んなのは黄梅劇(安徽省の地方芝居)、川劇(四川省の地方芝居)、豫劇(河南省の地方芝居)、粤劇(広東省の地方芝居)などである。チベットの地方芝居は濃厚な宗教的色彩とチベット族の特色を持つものであり、豪放な演技で、内外の人々に喜ばれている。
新劇
新劇は20世紀の初めに国外から導入されたものである。20年代から、新劇の舞台ではリアリズムと表現主義を題材とするものが登場し始めた。30年代になると、中国の新劇は成熟に向かった。芝居の大家である曹禺氏のこの時期における「三部作」―『雷雨』、『日の出』、『原野』は深い内容、円熟した技法で、中国新劇の古典的作品と認められている。いまだにこの3つの作品は依然として新劇の舞台で上演されており、何回も映画やテレビドラマに改編されたことがある。
1952年に発足した人民芸術劇院は中国の新劇の最高レベルを代表する存在である。この劇院が上演した『茶館』、『竜須溝』などリアリズムの題材の作品は内外でその名を知られている。ここ20年来、この劇院は新しい演劇を80余りも上演し、レパートリー演目も12再演し、多くの演劇作品はロングランとなり、その輝きを保ち続けている。
中国の前衛派の新劇はかなり多くの若者たちに喜ばれている。この前衛芸術表現手法が前衛的な小劇場で上演される新劇のほとんどは現代の人たちの生活を題材とし、孟京輝監督は前衛新劇の代表的人物である。