ナウルズ祭はハサク族のイスラム教信仰以前から行われている祭で、ハサク族の年代表記法に関係している。ハサク族の古くからの12支による年代記述法では、旧暦の春分の日(西暦3月22日前後)が元旦である。この日は昼と夜の長さが同じなので“年が代わる”日と見なされ、“ナウルズ“と称されたのである。“ナウルズ”はハサク語で古きに辞し新しきを迎えるという意味であり、“ナウルズ祭”は新年の到来を告げる象徴である。この祭のために、各家は家の中はもちろん家の周囲も掃除して掃き清め、家畜小屋も修繕し、元旦を過ごす為のご馳走を用意する。
祭のご馳走は主として米、粟、小麦、小麦粉、チーズ、塩、肉などを材料にした粥状の“ナウルズ飯”、保存食料である馬の大腸、馬の首、馬のばら肉腸詰め、馬の細切れ肉腸詰め、馬の骨盤包肉などの冬肉である。
この祭日には色鮮やかな民族衣装で着飾り、大勢の人が群となり村中に新年の挨拶をして回るのである。挨拶をするときには、訪問者と家の主人が抱き合い、“ナウルズ飯”を一緒に食べ、“ナウルズ歌”を歌う。歌のメロディーは決まっているが、歌詞は即興である。歌詞の内容の多くは村の老若男女がこの一年平安であること、五穀が豊穣であること、六畜(馬、牛、羊、鶏、犬、豚)が繁殖することなどの目出度い話である。
ハサク人は敬老を徳とする習慣がある。祭日には、羊の頭を先ず老人に捧げ、老人は羊の頭を受け取ると祝辞を唱えて人々の平安を願い、家畜が繁殖して乳製品が沢山できるよう祈願するのである。
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