2014年の日本経済を振り返る 「アベノミクス」限界あらわに

文=日本企業研究院・陳言

2年前の12月と同様、安倍晋三首相が衆院選で成功を収めた。今回の選挙では、これまで日本の市民にとってはっきりしなかった「アベノミクス」に明確な目標ができた。日本経済は表面的な株価の上昇や為替レートの下落だけに頼っていてはならず、消費・投資・輸出の面で成長を実現し、生活の変化を庶民にもたらさなければならないということだ。

2014年の日本経済を振り返ると、昨年の株価上昇と円安の傾向が続いたことが最大の特徴となった。だが「アベノミクス」の新鮮なイメージはもはやなくなり、安倍首相を支える経済学者もその限界を認めている。安倍内閣の今年の経済政策にはこれと言って評価できる成果はなかった。

株価の上昇、円安の進行

2014年の日本経済の課題は、安倍内閣または日銀の最もシンプルな言い方にならえば、2%の物価上昇率の実現だった。だが日本の物価は相当程度高まってはいるものの、2%のインフレターゲットは実現できていない。

これまで日本経済の発展を阻んできたのがデフレだった。日本の産業のグローバル化に伴い、日本の調達体系のグローバル化も進んだ。日本市場は、自らの求める価格や質に応じて世界から製品を調達するようになった。こうした傾向は日本の物価を絶えず引き下げてきた。経済が長期的に不振に陥り、賃金がなかなか上がらない状況で、人々は、自らの実際の生活に影響がないよう物価の下落を求めてもいた。

だがインフレが日本にもたらしたのは、日本国内で企業が投資をしにくいという状況だった。価格が低くなるほど、世界市場から調達した製品によって、より安い製品を求める消費傾向に対応せざるを得なかった。円高の進行も、この仕組みの長期的な存続を支えた。

金融市場に資金を注ぎ込み、通貨を増刷すれば、インフレを誘発できる。日銀はそう判断した。国債の購入などにあてられた資金は今年、50兆円から80兆円に拡大され、日本の財政収入2年分に達した。大量の資金が市場に入り込み、インフレの前にまず、通貨レートの低下をもたらした。今年の日本円の対ドルレートは117円前後で、安倍首相が就任する前の76円と比較すれば円安幅は35%前後に達した。この状態を維持すれば、経済発展を阻む為替要素の制約が取り除かれるはずだった。

株式市場では、円安の進行に伴い、大きな変化が現れた。株価の急上昇である。日本の株価は昨年、1万6千円にまで上昇した。だが今年上半期になると、株価は昨年末の水準には届かなくなった。その大きな原因の一つは、企業の生産が一向に成長しなかったことにある。株価の急上昇は、実体経済の変化を示すものではなかった。

日本の大企業の国際化率は50%以上に達している。つまりほとんどの大企業は国内と国外の両市場で利潤を得ている。国外で稼いだ1ドルは、安倍首相の就任前のレートでは76円に相当する。だが今年のレートではこれが117円に化け、41円多く稼いだことになる。このレートの差は企業にとっては「棚からぼた餅」で、企業収益を数字の面でアップさせ、株価の上昇をもたらした。

だが日本の本当の発展は、このようなトリックでは実現できず、経済を含む様々な方面での革新が必要となる。だが惜しいことに日本にはこうした革新の予兆はまだ見て取れない。

消費税で景気腰折れ

今年、日本の最大の問題となったのは、4月1日に消費税が引き上げられたことだった。増税は、経済発展の歩みを再び乱すことになった。

消費税増税はこれまでも、政局の動揺と経済発展の停滞を招いてきた。最も影響が大きかったのは1997年の消費税引き上げで、日本経済はこれによって完全に不振に陥り、その傾向は20年近くにわたって続いた。消費税引き上げの影響に対する自民党の準備は今回も十分とは言えない。今年4-6月期のGDP成長率は増税の影響で年率換算マイナス7.6%に落ち込んだ。自民党はこれを十分に重視せず、7-9月期には回復するだろうとの楽観的な見方を示していた。だが実際には1.6%のマイナス成長となった。安倍首相の自民党はここで初めて問題の深刻さを認め、2015年10月に予定していた8%から10%への消費税引き上げを2017年4月へと一年半延期した。

だが今年の企業投資と今後の投資意欲に関するデータから見ると、増税延期の決定は遅きに失したと言わざるを得ない。一部の企業には投資の意欲がある。とりわけ上場企業は金融市場から直接、大量の資金を得ており、投資を行う能力はある。だが本当に投資をしている企業は依然として少ない。

日本市場は成熟市場であり、開拓できる新たな市場にはもともと限度がある。消費税の引き上げは、消費の意欲を深刻に損なうことになった。市場のこうした欠陥は、日本企業の国内投資を難しくさせている。一部の日本企業が分厚い資金を貯めこんでいるにもかかわらず投資に踏み切れないのは、消費税の引き上げによって市場が委縮しているためだ。企業は投資に対して慎重にならざるを得ない。

日本企業のうち海外に工場を建てられる企業はすでにそのプロセスを終えている。そのため円高が進行しても、為替レートの影響で輸出が減るという事態を避けることができた。逆に円安になっても、日本の輸出が増えることはない。日本の輸出入体制は、為替レートの影響を受けないようにすることで円高に適応してきた。だがこの体制は、円安に対応できるものとは言えないようだ。円安は日本の輸出を増やさないばかりか、原料や燃料などの輸入価格を高めており、その限界は明らかになりつつある。

日本が国家として消費税の引き上げを選んだのは、福祉問題を重く見たためだが、経済全体への影響に対する評価は正確さを欠いていた。今年の日本のGDPはドル換算で深刻な縮小となるが、実体経済も同様に委縮していることは疑いようのない事実だ。

中日関係の冷え込みも影響

安倍内閣は今年、経済面での成功を求めていた。だが安倍首相本人が熱心だったのは、中国の牽制を中心に据えた「価値観外交」であり、国内での集団的自衛権容認の強行だった。経済面では、「既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になる」と豪語したが、目立った成果は上げられなかった。

中国市場は世界最大規模を誇り、その潜在力も最高水準に達する。各国は中国との貿易を伸ばしている。価値観外交を取る日本だけが中国との貿易総額を減らしており、対中投資額は大幅に下がっている。2014年の下げ幅は43%を超えた。

中国の市場が大規模でなかた頃、日本は最大の対中投資国だった。中国に巨大市場が生まれたここ数年は、シンガポールなどの国が中国最大の投資国となり、日本は年々後退している。

安倍首相は今年、50カ国を訪問したが、その度に可能な限りの企業家を率いていた。だが中国に訪問した際には、安倍首相は日本企業を売り込もうとしなかった。順調とは言えない中日関係は間違いなく経済にも影響している。

中日関係は来年、転機を迎えることになるだろう。「アベノミクス」の成功は中国市場なくしては実現できない。株価の上昇や為替レートの引き下げだけでは安定した経済発展を望めないということは、今年、多くの日本の消費者と日本企業の実感となった。

 

2014年12月18日

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