中国の模倣型の消費段階がほぼ終了し、個性化・多様化した消費が主流になりつつある。日本で生活用品を買い漁る中国人は少数の富裕層ではなく、日増しに拡大する中所得層である。ウォシュレットの現象は、一部の消費の需要が国内では満たせなくなったことを意味する。さらに供給する側から見ると、中国はすでに商品の供給不足の時代を終えている。総量から見ると、一部の伝統産業の供給能力は、すでに需要を大幅に上回っている。多層的な消費の需要、特にミドル・ローエンドの需要を引き出し、これを満たすためには、供給の革新が必要になった。
この世には落ち目の産業はなく、落ち目の企業しかない。技術と理念の革新が時代の歩みについていくことができれば、商品が落ち目になることはない。供給の革新は国内消費者の消費のアップグレードの需要を満たすほか、経済成長、経済のモデルチェンジ・アップグレードをけん引することができる。
こうして、些細なウォシュレットが、「いかに供給の革新により消費の需要を引き出すべきか?」という大きな問題を突きつけている。 企業はスマイル・カーブの両端を占め、高品質のブランド商品を提供するべきだ。土地や人件費などコスト面のメリットを利用した製造業の薄利多売は、経済が「新常態」を迎えた今、持続不可能になっている。中国は先進国の製造業の先進的な点を参考にし、研究開発に取り組み独自の知的財産権を把握し、技術力を付けるべきだ。また販売面に力を注ぎブランドを形成し、全世界に名を知られるようにするべきだ。これは険しい道ではあるが、企業をバリューチェーンの高みに向かわせるのはこの道しかない。