国際通貨基金(IMF)は、本日30日の理事会で、人民元の「特別引き出し権(SDR)」構成通貨への採用について投票を行う。専門家は、複数の予測や見解をもとに、人民元の「SDR採用」はほぼ確実だとし、人民元にとって歴史的な瞬間になるとの見方を示した。
アナリストは、世界貿易機関(WTO)加盟が中国の輸出型経済の急成長を後押ししたと言うなら、「SDR採用」は中国の国際的な金融ステージにおける確固たるポジション確立につながる可能性があると指摘する。また、人民元の国際化や中国の金融制度改革はもちろん、中国の民間人の海外消費や投資などについても、人民元の「SDR採用」は大きな意味を持つ。
IMFのラガルド専務理事は11月13日、「人民元は『自由に利用可能』という要件を満たしている」との声明を発表した。IMF最大の出資国であり最も大きな影響力を持つ米国も、人民元がIMFの要件を満たした場合はSDR入りを支持する計画だとしている。
業界関係者の間でも、人民元の「SDR採用」はほぼ確定的との見方が大勢を占めている。投票で想定外のことが起きない限り、人民元は、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円に続いて正式にSDRの5番目の構成通貨となる予定だ。
人民元のSDRへの正式採用には2つの「厳格な」基準を満たす必要がある。1つ目は、通貨発行国の財とサービスの輸出額が多いこと、2つ目は、IMFが「自由に利用可能な通貨」であると判断することだ。2010年にIMFがSDR構成通貨の見直しを行った時、人民元は第1の基準を満たしたものの、第2の基準を満たしていないと判断された。
IMFが今年8月に発表したリポートによると、2010年の見直し以来、人民元の国際的な使用規模は大幅に拡大していることが明らかになった。IMFスタッフが先ごろ理事会に提出した5年に1度の見直しに関する文書では、人民元は「自由に利用可能」という要件を満たしているとの指摘がある。
交通銀行の連平チーフエコノミストは先ごろ、専門的かつ技術的な観点から見て、人民元は上記の要件をほぼ満たしており、SDR入りが可能だとの見方を示した。北京大学金融証券研究センターの曹鳳岐主任は、「人民元のSDR採用は自然の流れだ」と語った。
人民元のSDR入りはほぼ確定的となったが、構成通貨のウェイトが気になるところだ。IMFの暫定報告では、人民元のウェイトは14~16%前後と、ポンドや円を上回る見通しだ。連平氏は、人民元のウェイトは15%前後に達する可能性があり、人民元のSDR入りにより、その他の4通貨の割合も相応に低下する見込みだとしている。
一方で、IMFの最終決定では各評価指標の割合が大幅に引き下げられる可能性があり、これまでの人民元のSDR構成通貨でのウェイトの想定値は高いとの見方も少なからずある。オランダING銀行は人民元のSDR構成通貨でのウェイトが9.2%にとどまると予測している。
2015年11月30日