オバマ大統領は2009年にホワイトハウスに入居すると、アジア太平洋政策を調整し、いわゆる「アジア太平洋リバランス」戦略を打ち出し、米国の同地域におけるリーダーシップを維持しようとした。
国防大学の朱成虎教授は「アジア太平洋リバランス戦略は、米国の民主党、共和党の共通認識であり、共和党の多くの関係者もその方針決定に参与している。そのためどの党の候補者がホワイトハウスに入居することになっても、アジア太平洋リバランス戦略はさらに強化されるだろう」と判断した。
ドイツ世界・地域問題研究所(German Institute of Global and Area Studies)の研究員は「ヒラリー氏は国務長官時代に、アジア太平洋政策の制定に参与した。彼女が大統領になれば、アジア太平洋リバランス戦略は高い連続性を持つことになる」と指摘した。
しかし米デンバー大学国際関係学部の趙穂生教授は「アジア太平洋リバランス戦略は成功しておらず、堅固な経済・軍事・政治的基盤を持たない。オバマ政権はアジア太平洋を重視しているが、常に中東など注意が必要な地域に足を引っ張られている。今回の大統領選で、アジア太平洋戦略は、米国の最高政策の最重要議題ではない。ヒラリー氏が当選しても、アジア太平洋は米国の重要な戦略の一つにしかならない」と分析した。
専門家は、戦略の方針は大筋で変わらないが、次の大統領が具体的な政策を調整することで、一定の変化が生じると見ている。
ヒラリー氏と比べ、共和党のトランプ候補は変わった人物で、孤立主義のカラーを示し、「米国優先」を主張している。トランプ氏は大統領選で日本と韓国を攻撃し、このアジアの同盟国は米国が提供する安全保護に「金」を支払わなければならないと述べた。ロシア国際政治鑑定研究所長は「ヒラリー氏の行動はまだ読めるが、トランプ氏は完全に予測不可能だ。これはトランプ氏が当選した場合の主なリスクだ」と述べた。
ドイツ外交問題評議会の米国問題専門家は「アジア太平洋リバランスの実施には、大きなリスクがある。つまり既得権益者、特に軍需企業が米国や同盟国に軍備を拡張し、中国に対抗するようそそのかす可能性がある」と話した。
米国のアジア太平洋戦略で、TPPは重要な一環となっている。オバマ政権はこれによりアジアの経済協力を主導し、新たな経済・貿易ルールを作ろうとしている。オバマ大統領は国会が11月の大統領選後に同協定を批准することで、自らの「アジア太平洋リバランス」政策のレガシーを救おうとしている。ところがこれは、先行き不透明だ。またヒラリー氏もトランプ氏も大統領選で、現在のTPPの内容についてはっきりと反対を表明している。
関係者は「ヒラリー氏が当選すれば、TPPの一部条項を調整することで、国内の政治的圧力に対処するだろう。しかしヒラリー氏は2018年まで待つことになっても、国会がTPPを承認することを望んでいる」と予想した。
ドイツ外交問題評議会の米国問題専門家は「TPPの運命は米国の議会に握られている。誰がホワイトハウスに入居しようとも、経済・貿易政策を推進する際に、国会の両院、もしくはどちらか一方からの妨害を受ける。これは米国最大の問題だ」と指摘した。
2016年11月3日












