中国人は春節の時に多くの人が餃子を食べ、また魚(「年年有余」)、鴨(「圧住財富」)、鶏(「積ドン(口の中に屯)」)と、おめでたい語呂の食べ物も食べる伝統があると聞いています。(三つの食べものの中国語の発音が、豊かになることを表現する熟語と語呂が通じています。)
日本人もお正月におめでたい料理である「おせち料理」を食べます。「おせち」というのは、もともとは季節の変わり目の節句に神様に捧げるためのものでした。同時に家族の繁栄を願う縁起物の家庭料理でもあります(飯倉晴武氏編著『日本人のしきたり』青春新書より)。
読売新聞が10~30歳代の日本人に「おせち料理を毎年食べますか?」と質問したところ、以下の結果が出たそうです(インターネットで調査。1020人が回答。2008年12月12日付読売新聞報道)。
「おせち料理を毎年食べる」・・・73%
「食べる年もある」・・・17%
「食べない」・・・10%
おせち料理は、前の年の年末のうちに作っておきます(または買っておきます)。日持ちのする保存ができるように作ってあり、家族で正月三が日の間食べると共に、お客さんが来たときにお客さんにも出します。主婦がお正月に働かなくて良いように、作ったまま食べられるようになっています。みな冷たい料理です。この点、中国の人にとっては、冷たい料理のおせち料理だけだと、満足できないだろうと思います。
おせち料理以外に、お正月にはお餅を食べます。これは焼いたり、お雑煮に入れたりして、温かくして食べます。(お餅については、別の機会に説明します。)
今回はおせち料理8種類を以下の通りご紹介します。写真はすべて私の自宅で撮影したものです。本来は四角い容器(「重箱」)に入れておきます。(私の家に重箱が無いので、重箱の写真を示せないのが残念です。)下記以外にも、魚、エビ、タコ、その他の野菜などもおせち料理に使われます。なお、中国では料理は8種類が良いという考え方があると聞きましたが、日本では品数は奇数にしたほうが良いという考え方があります。
①「黒豆」:まめに(=丈夫に)暮らせるようにとの願いが込められたもの。甘煮にします。この点、中国での豆の食べ方と異なります。(写真1)
②「ごまめ」(「田作り」):カタクチイワシの幼魚の煮干しを、から煎り(=お鍋にいれて、水分をとばす)します。そしてしょうゆ、みりんなどを煮詰めて、からめたもの。中国では「みりん」は殆ど使わないと思いますが、米のでんぷんを糖化させたもので、アルコール飲料の一種ですが、調味料として使われます。カタクチイワシは、良い田をつくるための高級肥料としても使われていたので、そのためこの「ごまめ」は別名「田作り」とも呼ばれ、豊年豊作を祈願します(写真2)
③「昆布巻き」:野菜、魚などを昆布でまいて、かんぴょうでしばりって、甘辛く煮たもの。「昆布巻き(こぶまき)」と「よろこぶ」の語呂を合わせて、縁起物として食べられます。(写真3)
④「きんとん」:甘く練ったさつまいものあんに、栗を入れたもの。縁起の良い「金団」(金の団子)という文字から。黄金にかがやく財宝にたとえて、今年も豊かな一年であるようにとの願いが込められています。(写真4)