中国では昔、官吏昇進を1月7日に決めていたそうです。そのため、その朝、薬草である若菜を食べて立身出世を願ったそうです。
この習慣は古くから日本に伝えられ、平安時代(794年~1192年)には宮廷の儀式として「七草がゆ」(七種類の菜を入れたおかゆ)を食べるようになり、江戸時代(1603年~1868年)に「七草がゆ」を食べる習慣が一般の人にも定着しました。
江戸幕府は、一年のうちの重要な5つの式日を「五節供」として定めました。
① 1月7日「七草の節供」(人日)
② 3月3日「桃の節供」(上巳)
③ 5月5日「菖蒲の節供」(端午)
④ 7月7日「七夕祭り」(七夕)
⑤ 9月9日「菊の節供」(重陽)
(飯倉晴武氏編著『日本人のしきたり』青春新書より)
それぞれ、中国に起源をもちますが、日本の習慣と合体したり、日本で変化したりしています。それぞれ、またこのブログで説明していくつもりです。
さて、今の中国では、1月7日に若菜を食べる習慣は残っていますか?
日本では今でも1月7日に「七草がゆ」を食べる習慣があります。私の家でも毎年1月7日、「七草がゆ」を作って食べることにしています。今年も1月7日朝、食べました(写真1)。
この「七草がゆ」を食べると、楽しかったお正月も終わったな、という気分になります。(私の仕事は1月5日から始まりました。私の子供が通っている大学は6日から、中学校は7日から授業が始まりました。
「七草がゆ」に入れる菜は、昔は家の周りで集めることもできました。しかし、都市化が進んだ東京近郊では、今やお店で買うしかありません。私の家も、近所のスーパーマーケットでパッケージ入りのセットを買い求めました(写真2)。398円でした(=約25人民元)。
この7種類の菜は、以下の通りです。(菜は似ているので、植物図鑑を見て確認しながら並べました。)
写真3:左から①セリ、②ナズナ、③ゴギョウ(ハハコグサ)
写真4:左から④ハコベラ(ハコベ)、⑤ホトケノザ、⑥スズナ(カブ)、⑦スズシロ(大根)
今の日本では、「七草がゆ」には立身出世を願うという意味は全くありませんし、おそらく普通の日本人はそのような中国からの起源を知らないでしょう。むしろ今年一年の無病息災を願い、またお正月にいろいろなものを食べたりお酒を飲んだりした結果疲れた胃を、この「七草がゆ」を食べることで休め、またビタミンを補給するという意味が強く意識されています。(特にスズナ、スズシロにはビタミンA、Bが豊富ということです。)
科学的にも、以下の効能が証明されているそうです(1月5日付東京新聞報道)。
① セリ:利尿、食欲増進
④ ハコベラ:止血、歯槽膿漏予防
⑥ スズナ:整腸、美白
⑦ スズシロ:消化促進
ただそれほど沢山の量の菜を食べる訳でもありませんので、やはり節目節目の気分を味わうためのものと言えましょう。
(井出敬二 前在中国日本大使館広報文化センター所長)
「チャイナネット」2009年1月7日