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第35回 中国人留学生の戸惑い①お礼の表現の違い
発信時間: 2009-02-13 | チャイナネット

2、友人関係を長期的観点でとらえる中国のお礼の仕方

 

中国人ももちろん何か他人からお世話になれば、お礼を言うでしょう。しかし、日本人から見ると、ちょっとお礼の表現が少ない感じがする時もあるようです。例えば、日本において、日本人が、日本人と中国人を夕食に招待したとします。日本人と中国人のお客さんは、共に夕食が終わったら、帰る前に主催者の日本人にお礼を言うでしょう。そして家に帰った後、日本人は更に手紙・葉書を書いたり、Eメールでお礼を伝えてきます。しかし中国人では、そうする人としない人がいるでしょう。しない人が多いかもしれません。

 

同じような例で、中国人が日本を訪問して、日本人が日本でその中国人を食事に招待したとします。食事が終われば、中国人はお礼を日本人に言います。中国に帰国した後、「無事に中国に帰国しました」という報告とともに、「おかげさまで、日本で快適に過ごすことができました。お忙しい中、食事にお招きいただき、ありがとうございました。」といった趣旨のお礼の気持ちを伝える手紙なりEメールを日本人に出せば丁寧ですが、そうする中国人はかなり少ないと思います。しかし、そのような手紙なり、せめてEメールを出した方が良いと思う日本人は少なからずいます。

 

私がこういう話しを中国人の友人にすると、中国人の友人達は次のように言います。

 

「中国人は、お礼を何回も口に出して言わなくても、感謝の気持ちを持ち続けており、5年後でも10年後でも、その日本人が中国を訪問したら、中国で夕食に招待するだろう。」

 

そのようなやり方でお礼の気持ちを表現するということだろうと思います。長期的な観点で人間関係をとらえており、その中でお礼の表現も考えている、という言い方もできるでしょう。日本人でも、中国(人)との付き合いが長い人達、中国(人)を研究している専門家たちは、「中国人は、人間関係、そして“貸し借り”関係を長期的に捉えている」ということを感じており、理解していると思います。(たとえば、相原茂氏著「『感謝』と『謝罪』~はじめて聞く日中“異文化”の話」(講談社)は、感謝の仕方、友人関係、貸し借り関係の清算の仕方などでの日中の違いを説明しています。相原氏は、日本人と中国人のお礼の表現の仕方の違いで、贈り物を贈るタイミングの違いも指摘しています。日本では、誰かにお世話になれば、後で「お世話になりまして、ありがとうございます」と言って、贈り物を渡すことがあります。他方、比較すれば、中国では、誰かにお世話になる場合、自分の希望をかなえてもらうために、はじめに贈り物を渡して、良い関係を築くという違いがあるということです。)

 

中国の方は、「古い友人を大切にする」「井戸を掘った人を忘れない」とよく言われます。その考え方そのものについては、多くの日本人もすばらしいと思っていると思います。ただ、もし、友人関係(貸し借り関係)を長期的観点でとらえるという中国の人間関係のあり方を背景として出てきたものだとすれば、それはやはり日本人のとらえ方、考え方の背景とは異なると言えます。どちらが良い、悪いということではなく、違いがあるということだけを指摘したいのです。(繰り返しですが、日本人は、傾向としては、借りをつくったままで長期間いることは良くないと考えます。)

 

中国(人)とあまり付き合ったことの無い日本人は、中国人の考え方、発想を理解していません。したがって、たとえば、「中国人はお礼をあまり言わない」という認識を持ち、そのことに不満というか淋しい気持ちを持つ可能性があります。

 

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