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第35回 中国人留学生の戸惑い①お礼の表現の違い
発信時間: 2009-02-13 | チャイナネット

3、国際的に習慣は収斂していくのか?

 

日本と中国の習慣の話から離れて、国際的にはどのような習慣なのでしょうか?私は、これまで日本と中国以外には、アメリカ、フランス、ロシアで生活(勉強と仕事)をしてきました。またパリでは、OECD(経済開発協力機構)というヨーロッパ、アメリカ、カナダ、メキシコ、トルコ、韓国などが加盟している国際経済の協力機関にある日本政府代表部でも3年間働きました。諸国の習慣がいろいろ異なる中で、外交官の間ではある程度共通した習慣が確立しています。

 

それはまず「相互主義」です。これは、たとえば、食事に招待されたら、必ずお礼として同じようなことを行い、お返しする、ということです。特に、外交官は常に頻繁に異動があるため、誰か他の国の外交官に食事を招待されたら、その外交官と自分が異動する前にお返しに食事に招待するように努力します。外交官どおしで別の国でもまた再会するということもありますが、それは非常に珍しいことです。だから外交官の付き合いは長期的視点というよりも、短期的視点で考えざるを得ません。

 

また外交官どおしで「お礼状」の習慣もあります。つまり、誰かの家に招待されて夕食をごちそうになったら、翌日にお礼の手紙を出すことです。但し、お礼の手紙を出さない人もいます。

 

私が外交官どおしの習慣を紹介したのは、それを見習うべきだということを言いたいからではなく、状況・必要に応じて、ひとつの習慣ができあがり、それは、欧米の習慣を基礎としながらも、その他の習慣が異なるさまざまな国の出身のかなりの人たちにも受け入れられるものであるということの例を挙げたかったからです。

 

異なる習慣が出てきた社会事情などが異なるので、当面は異なる習慣が世界で併存していくでしょう。中国では、従来は長期的な人間関係を構築・維持することが可能だったし、重視されていたのだと思います。しかし、改革・開放とグローバライゼーションが進み、生活のスピードと活動範囲・交際する相手が急激に変化・拡大し、更に多様な外国人との交流も増えれば、習慣の変化もやがて起きるかもしれません。しかし、変化しないところもあるのかもしれません。

 

結局、いろいろな習慣の背景を理解するということ、そして自分と異なる習慣に対しても寛容になるということがまずは重要だと思います。私自身は、当面は、中国人と付き合う時には中国風の習慣にしたがって、また日本人と付き合う時には日本風の習慣に従ってやっています。日本の習慣には確かに形式的になっている部分もあり、日本人自身が簡素化する方向で改革している部分もあります。日本の習慣も急激に変化しているところもあるので、将来は、日本と中国の習慣も似通っていき収斂していく部分もあるかもしれません。

(井出敬二 前在中国日本大使館広報文化センター所長)

 

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「チャイナネット」2009年2月13日

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