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江原規由氏:新たな三国時代の始まりか |
発信時間: 2009-03-16 | チャイナネット |
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中国の『三国志演義』の白眉ともいえる場面を扱った映画『レッドクリフ』(赤壁)が大入り満員とのことです。国家関係にせよ、人間関係にせよ、「三」という数字は実に意味深です。例えば、三本足の椅子は実に安定しますが、例えば、三人(国)集まると二人(国)が一人(国)に対抗する構図が容易にでき上がってしまいます。呉と蜀が連合して魏に挑んだ史実を扱った『レッドクリフ』もこの例に当てはまるといえます。「安定」と「対立」、そして「利」と「害」といった二律背反性を「三」という数字は合わせもっているわけです。 2008年12月13日、日本の福岡県太宰府で麻生太郎首相、温家宝総理、李明博大統領の日中韓三国首脳による初のサミット(注1)が開催されました。首脳会議のテーマは多岐にわたりますが、三国協力による世界的金融危機へ対応がメーンテーマでした(注2)。 会議後、三首脳は未来志向と包括的協力をうたった『三国間のパートナーシップに関わる共同声明』に署名しました。とくに、金融危機でウォンが急落し、韓国の外貨準備が不足する事態に備え、中韓、日韓が外貨を融通しあう「外貨スワップ」の規模が拡大された点は会議の大きな成果です。まさに利害関係を超えて協力しあうという姿勢といえるでしょう。 期待される三本足の椅子 アジア、とくに東アジアは「世界の成長センター」です。下り坂にある昨今の世界経済を反転させる上で、アジア、中でも中国に対する世界の期待には大きいものがあります。 かつてアジアでの経済発展は雁行型とされた時代がありました。まず日本が、次いで韓国、香港、台湾、シンガポールが、そして、東南アジア諸国連合(ASEAN)へと順を追って発展段階を迎えるという「雁行型経済発展」理論ですが、「改革・開放」で急成長しつつあった中国は、この雁の一群の着地点として、東アジアにおける「世界の成長センター」の形成に最大の機会を提供したといえます。 その東アジアで日中韓の三国が協力し、アジアそして世界経済の安定的発展に向け、ともに飛び立つ準備がなされたのが、今回の日中韓サミットであったと位置づけられるでしょう。東アジアを代表する日中韓三国が三本足の椅子のように安定すれば、上に載る「世界」も安定するということになります。 変化の原動力は中国 2007年の日中韓、ASEAN、米国間の貿易の流れを見ると、日中韓三国間貿易関係では、日中はほぼ均衡、中韓では韓国が、日韓では日本が黒字(注3)となっています。その背景には、投資先としての中国、輸出先としての米国、そして生産国としての日中韓、ASEANという構図がありました。 金融危機の影響もあり、こうした構図は今後、大きく変化するのではないでしょうか。その原動力は中国といえるでしょう。具体的には①中国の対外展開の進展(注4)②輸出市場としての中国の役割強化、です。直近の事例では、対日投資では中国企業の愛知県や横浜市への進出が相次いでおり、対韓投資では全羅南道・務安郡での中国企業主導による工業団地の建設計画などが指摘できます。 また、中国は内需主導の成長路線への転換、輸入促進が中長期的課題として希求されており、輸出市場として大きくクローズアップされています(注5)。 開かれるFTAへの道 さて、今回の日中韓三国サミットの成果を延長すると、「ASEAN+3(日中韓)」のFTA(自由貿易協定)締結への道に通じていくかもしれません。今のところ三国は、ASEANと双務でFTAを締結しています。
その後には、世界貿易機関(WTO)での多国間協定締結での三国の足並みをそろえた貢献が期待できるというものです。世界経済がブロック化し、発展が阻害されないよう、日中韓三国にはさらに次元の高い協力関係の構築を期待したいものです。 冒頭の「魏呉蜀」と「日中韓」は「三国」が関係しているという点では同じですが、前者は熾烈な覇権争いに終始しました。しかし後者は今回、経済的利害関係を超えて協力する姿勢を全面に打ち出した点で大きく異なります。 来年は中国で、再来年は韓国で首脳会談は開催される予定です。「三人寄れば文殊の知恵」という諺があります。「日中韓三国寄れば、東アジア経済発展の知恵」となって世界貿易の舞台で、『レッドクリフ』をはるかに上回る観客動員の拍手喝采を期待したいものです。
「人民中国インターネット版」より2009年3月16日 |
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