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多田麻美:映像がもたらす感動と触れ合い
発信時間: 2009-04-14 | チャイナネット

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ライターの多田麻美さん:胡同暮らしに魅せられて

 

多田麻美

著者プロフィール 1973年生まれ。京都大学で中国文学を専攻後、雑誌の編集、記者を経て、現在、フリーランスのライター兼翻訳家として活躍。芸術・文化関連の記事を中心に執筆中。ペンネームは林静。翻訳書『北京再造』(王軍著)ほか。

学術目的でないボランティア主体の初の日本ドキュメンタリー映画祭として北京で脚光を集めた「2008REAL 日本ドキュメンタリー映画交流会」。映像が伝える「ありのままの日本」は、氷点下の北京で熱い共感を呼んだ。

まだまだ「交流」不足

2008年は、「日中青少年友好交流年」だった。ところで、この「日中青少年交流年」という言葉は、「シルバーシート」に似ている。専用シートなどなくても老人には席を譲るべきなのと同じで、日中の青少年は、交流年でなくても常に交流すべきだからだ。「交流年」など設けなくて済むのが一番だろう。

だが実際は、日中の交流はまだまだ不十分。映画を例にとっても、中国では日本映画はめったに劇場公開されず、日本でも、全国規模で放映される中国映画はまだまだ少ない。地方都市となればなおさらだ。

映画評論家戴錦華氏の主宰で進められた交流

交流会では四川大地震被害地への募金活動も行われた



このような、とても隣国同士とは思えないお粗末な交流レベルを思えば、昨年末、民間のボランティアが主体となって開かれた「2008REAL 日本ドキュメンタリー映画交流会」は、今後の定期的な開催が望まれる、実に画期的なイベントだった。

交流会では、中央戯劇学院を会場に日本人監督による六作品を公開。上映の合間には、日本から訪れた放映作品の監督や『一瞬の夢』『世界』などで知られる中国の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督をはじめ、映画評論家の戴錦華氏や北京電影学院の司徒兆敦氏などがディスカッションを繰り広げた。

横浜の記憶を綴る

開催初日の第一弾は、中村高寛監督の『ヨコハマメリー』。横浜の街の伝説的な娼婦、「メリーさん」の実像に迫った作品で、長い歳月をかけた周辺の人々へのインタビューが、強いインパクトを残す。

『ヨコハマメリー』


中村監督は1975年生まれ。『ヨコハマメリー』は、若い世代の監督がメリーさんという人物像を通じて横浜という街の記憶を探り、戦後を見つめ直した作品だ。上映後の対談で監督は、撮影の動機を「メリーさんは決して誰もが知る有名人というわけではない。しかし、横浜に暮らす人は誰もが知る存在。ならば、彼女について深く掘り下げることで、何か社会へのメッセージが見つかるのではないか」と語っている。

社会の底辺で生きた人物の姿を通して語られた歴史は、生の横浜像を人々に焼き付けたようだ。ある観客はアンケートに答え、「横浜という街の数十年の移り変わり、この街で暮らす人々の思いは、時が経つにつれて薄れていくものでは決してない。逆に変化する街の躍動的な美しさが感じられた」と述べた。

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