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戦略的選択に直面する北東アジア地域 朝鮮核問題
発信時間: 2009-06-10 | チャイナネット

時永明(中国国際問題研究所副研究員)

 

5月25日、朝鮮は2回目の地下核実験を行い、国際社会からの強い反応を引き起こした。2008年6月27日、朝鮮が寧辺核原子炉の冷却塔を爆破したときには、国際社会がこれを歓迎する光景が見られた。それから1年も経たないうちに、朝鮮半島の情勢には大きな変化が起きた。朝鮮・韓国の関係断絶、対決状態にある朝韓関係、朝鮮の衛星発射、6カ国協議からの退出、核実験、停戦協定の無効化など、これら一連の事件は朝鮮半島の情勢を完全に逆転させた。このような局面を招いた原因は何か、国際社会はどのように対応すべきか、北東アジア情勢はどのように進展するのか、これらの問題は国際社会を悩ませている。

 

5月30日、ゲーツ米国防相(中)、浜田靖一日本防衛大臣(左)、李相熹韓国国防相がシンガポールで朝鮮半島情勢の進展について会合を行った

 

朝鮮、絶望後の方向転換

今回の朝鮮の核実験は表面的に見れば2006年のそれと似ているところがある。当時もまずミサイルの発射実験を行い、その後核実験を行った。しかし、今回は2つの面で前回とは顕著な違いがある。1つは、朝鮮が相手に明確な要求を提出しなかったため、相手が交渉によって問題を解決しようとしても、手のつけようがないことだ。もう1つは、朝鮮は今回の衛星発射実験で、基本的には国際ルールを守り、過激な反応に遭遇した後、核実験の時には断固とした態度を示したことだ。

 

朝鮮は何のためにこうした行為を行ったのか。実は、6カ国協議が始まった当初から、多くの人が、朝鮮の目標は核兵器を保有することであるため、交渉の成功は難しいと見ていた。今回の核実験はこのような観点を持つ人により多くの論拠を提供するに違いない。しかし、朝鮮がなぜ核放棄を求める6カ国協議の一連の文書への調印に同意したのかについては、この観点からでは説明することができない。朝鮮をどのように判断しようとも、6カ国協議が少なくとも核開発計画の放棄を書面で朝鮮に同意させるという成果をあげ、そして朝鮮も予定より早く冷却塔を爆破するという行動で世界に合意履行の誠意を示したということは、われわれが軽視できない事実だ。それにしても、いったい何が朝鮮の態度を180度変えさせたのか。

 

昨年の6カ国協議のプロセスを振り返って見れば、米国が約束履行の時に示したためらいがちな態度が、まず当時のブッシュ政権に対する朝鮮の自信を喪失させてしまったことがはっきりと見て取れる。それより前に、日本は冷戦時代が残した「拉致問題」を口実に、6カ国協議の朝鮮への経済補償協定の履行を拒否し、米国が同盟国の中で局面を支配する局面への信頼度をひどく弱めた。そして、李明博(イ・ミョンバク)政権が、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が提唱した対朝鮮和解政策を大きく調整したことは、朝鮮の疑いをさらに増大させた。だが、このような情勢の下でも、朝鮮は依然として米国との間で達した了解を踏まえて核放棄の約束を履行し続けていた。しかし、ブッシュ政権は日本および米国国内の一部政治勢力のけん制を受けて、朝鮮の核申告書に対する検証をテロ支援国家指定解除の前提条件とすることを主張し、朝鮮をテロ支援国家リストから簡単に解除しようとしなかった。米国が約束の履行を引き延ばしている間に、一連の事件が発生し、局面を微妙に変え始めた。一方、韓国は金剛山の観光客死亡事件を口実にして取り上げ、ひいてはこの事故を政治化、国際化するとともに、ASEAN(東南アジア諸国連合)フォーラムのような多国間外交の場でも大げさに問題にしたが、首脳会談の成果を履行するよう求める朝鮮の声は聞こうともせず、これによって朝韓関係を大きく悪化させた。もう一方、朝鮮に反対する一部の勢力は朝鮮指導者の健康問題の噂話に熱中し、依然として朝鮮政権の改変を求める意図を示した。このような複雑で錯綜した関係の中、6カ国協議でつけたばかりの外界に対する朝鮮のわずかな自信は急速に蝕まれてしまった。10月11日、米国は朝鮮との合意を達成するもとで、朝鮮のテロ支援国家指定解除を決定したものの、時すでに遅かったようだ。ブッシュ政権に残された時間が限られている一方で、朝韓関係がすでに悪化し始めていたというわけだ。

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