今年、日中国交正常化40周年という大変めでたい年となりました。日中がともに歩んだこの40周年の道のりは決して平坦のものではありませんが、各界の活発な交流を通し、素晴らしい実績を残してきたと思います。
本学は、創立間もない頃から中国と深い交流の歴史があります。1905年に清国留学生部を設置し、早くも中国から学生を受け入れ、李大釗、廖承志などの中国の近代化・日中関係に大きく貢献した方々を輩出してきました。こうした早稲田で学んだ優れた先輩に憧れ、優秀な中国の学生が多数本学にて学ぶようになっています。戦後日中国交のない時代にも、中国京劇の名優梅蘭芳が率いる団体を本学に招くなど、草の根の交流に力を入れました。国交正常化後、本学はいち早く80年代初期に、中国の北京大学と友好関係を築き、現在100を超す協定機関との間、共同研究、人材育成など様々な交流をしています。こうした先人たちの地道な交流を積み重ねることで、現在本学と中国の友好関係の土台が築かれています。現在の日中関係は、様々な難題を抱えていることも事実です。一方、日中間に戦略的互恵関係を作る余地が非常に多くあることもまた周知のとおりです。いま、世界には、環境、経済、貧困、食糧、貿易など一国だけでは解決できない課題ばかりです。また、日中はともに東アジアという今後数十年世界をけん引する潜在力を持つ地域の隣国であることから、協力して世界の安定と経済の発展のために努力する義務もあるように思います。
日中国交正常化40周年を記念するため、本学は桜美林大学、工学院大学と三大学共同で、東京中国文化週間を主催しました。さる6月16日から23日の一週間に、開幕式、研究シンポジウム、学生討論会、メディアから見た日中関係、文化活動等多方面にわたって、日本と中国がともに歩んできたこの40年間を多角的に議論しました。このイベントは、のべ1000名を超える方々にお越しいただく盛況ぶりでした。来場者のなかには、学生のほか、本学の卒業生、大学周辺地域の皆様も多くみられました。このように、一般の方々に日中関係に大きな関心を寄せていただくことは大変喜ばしいことと存じます。
こうした形で中国への関心が高まったことを受け、本学は日本人学生の中国への留学、中国人学生の受入を従来以上に積極的に支援する体制をとっており、様々なプログラムを中国の有力大学と共に作り上げてきています。現在、中国から1800名を超える学生を受け入れており、また毎年200名を超える日本人学生が中国に行って、勉強しています。彼らが異国の地で現地の人と友達になり、また様々な文化の違いを経験することで、本当の相手の姿を理解することができます。そうした交流の積み重ねが日中関係をよりすばらしいものに変えていく源になると思います。
かつての日中両国の交流を振りかえてみても、両国の対立の歴史よりも、互いにそれぞれの文化を吸収しあって、ともに成長する歴史のほうがずっと長く続いたと思います。今後もこの良好な関係が長く続くように、若いみなさんとともに、この日中国交正常化40周年という記念すべき年に、日中間の相互理解をさらに深めるよう力を尽くしてまいりたいと考えております。 (本文は鎌田薫早稲田大学総長が中国網に寄せた中日国交正常化40周年記念メッセージ)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年8月8日