日中の領土争いが止まらない中、国際通貨基金(IMF)のラガルド総裁は、両国の争いが悪化すればグローバル経済に危機をもたらすと警告した。中日両国ともに経済的損失は避けられない状態だ。すでに中国に拠点を持つ日本企業の一部は操業停止に追い込まれており、少なからぬ損失を被っている。
日中間を飛ぶ旅客機の本数も激減しており、乗客不足から航路のキャンセルも出てきた。日本貿易会は9月19日、中国が日本からの輸入製品の通関が遅延しがちになっていると発表した。またフィリピンの貿易官僚は9月27日、15社の中国から撤退する意向のある日本企業と交渉したと発表している。今週になって消息筋は、トヨタと関係の深いタイヤメーカーが中国の従来路線を縮小に転じたと伝えた。消息筋は、マレーシアで製造した製品を中国市場に供給することは、中国生産による供給と同程度の利便性があると説明する。
しかし、これらの変化は領土争いと関係があるわけではない。長期的な構造変化によるものだ。その主因は、2015年末に中国とASEAN諸国が自由貿易協定を締結すると予想されていることにある。そうなれば、ASEAN諸国は中国に対し、平均0.1%の関税で輸出することができる。そのため、政治リスクの比較的少ない経済圏(ASEAN諸国)に分散投資することが、日本企業にとって有利に働くのだ。たとえば、ベトナムのハノイ付近で生産される製品が広東省に運べば、中国の北方や中部で生産して南方に運ぶより安く済む。
日本の投資が中国離れを起こしているもう一つの要因は、賃金と生産コストの上昇である。日系企業以外の海外企業でも、労働コストがさらに低い地域、たとえばインドネシアやベトナム、タイ、フィリピンなどに生産拠点を移し始めている。フィリピンを例にとれば、日本で二番目に大きな造船会社である常石グループが今年、フィリピンにドックを造った。フィリピンに対する日本の投資は昨年30%増加した。現在、日本の対アジア投資の半分はASEAN諸国に向けられている。
日本企業には、長期にわたって中国で歓迎されないという問題があり、留まることのない生産コストの上昇という問題がある。数多くのASEAN諸国の国内市場は徐々に拡大している。特に人口の多いインドネシアは、数年後に「中国・ASEAN自由貿易協定」がスタートすれば日本の持つ問題を解決してくれる国と目されている。
しかし、これは長いプロセスを必要としており、限界もある。中国は世界の工場であると共に、非常に重要な市場でもある。日本企業はこのような重要な市場を放棄することはできない。また、中国はハイレベルの物流と運輸インフラを擁しており、中国に拠点を持つ企業はグローバルに展開するための強力な優位性を持つ。一部のASEAN諸国はその差を縮めるために努力を重ねているが、今のところ中国に後れをとっている状況だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年10月14日