前世紀60~70年代に行われた日本の国民所得倍増計画は、中国の収入分配改革を考える上で一定の参考価値があるとの見方がある。現在、中国の都市化レベルは1960年の日本の65%という数字より低いのが現状で、この都市化レベルを高めることによって都市と農村の収入格差を縮小することができるという。
「中国が収入分配制度改革を推し進める時期と背景は、日本がかつて経済急成長を成し遂げた時期とよく似ている。日本が1960年に国民所得倍増計画を推進したのであれば、当時の日本人1人当たりの平均GDPはおよそ米国の17%だったが、計画の順調な実施に伴い、1970年にはそれが40%にまで増加している。中国は2011年の時点で国民1人当たりの平均GDPが米国の11%前後、ここから考えれば、両者のスタートラインはほぼ同じということになる。」スペイン対外銀行のベテラン経済学者である夏楽氏はこのように分析する。「また、政策実施の動機という点でも、当時の日本は今の中国と非常に似通っており、国民所得倍増計画によって社会の公平性だけでなく、経済の継続的発展を促進するという重大な任務を背負っていた。」
収入分配改革における両者の違いについては、次のように述べている。第一に、日本が1960年に国民所得倍増計画をスタートさせた際、人口ボーナスの状態には達していなかった(つまり、この後の段階において労働市場に参入する人口は継続的な伸びを見せた)。中国の現状は違う。人口ボーナスは間もなく過ぎ去り、2015年には中国の労働力人口が総人口に占める割合はピークに達するとの試算がある。それは、これから労働者たちにのしかかる負担がどんどん重くなることを意味している。なぜなら、退職保障等の負担は、その大部分が労働人口によって支えられているものだからである。この点で、中国の政策は日本より出遅れたと言えよう。また、それにより、その難易度も高くなっている。