公民には旅行先を選択する権利がある。今この時期での日本旅行は、国家の利益を損ねるものだろうか。双方の立場からの意見のぶつかり合いは、全面的かつ真実の中国を反映している。
この時期に日本ツアーの広告
黒のウインドブレーカーに身を包んだ林雅蘭さんは9月2日早朝、青島流亭国際空港でツアー客を待っていた。林さんは青島市某旅行会社の日本ツアーのガイドだ。林さんはこれから1週間に渡り、25人の中国人観光客を連れ、大阪・東京・箱根・浜松を訪れる。同ツアー「ロマンあふれる日本金秋の旅」の旅行費用は、1人当たり7000元強だ。
興奮に胸踊らせる観光客を乗せた航空機は、2時間半のフライトを経て関西国際空港に着陸した。これらの中国人観光客らは数日後、憧れの日本製品(資生堂の化粧品、キヤノンやニコンのカメラ、カシオやシチズンの腕時計、現地の食品)を詰め込んだ買い物袋を両手に下げていた。1人当たりの消費額は、5000元以上に達した。
箱根の温泉につかった女性は、林さんに目配せをし、「とっても気持ちいい」と溜息をもらした。林さんは、釣魚島問題による影響を受け、日本旅行を希望する中国人観光客が減少を続けることを予想していたが、林さんにとってこれが最後の日本ツアーになるとは思わなかった。
9月前、林さんは毎月1、2回は日本を訪れていた。林さんの旅行会社は9月12日、現地の新聞に日本ツアーの広告を掲載した。同日午前、同社の業務部の電話が鳴った。担当者が受話器を取ると、「この時期に、なぜ日本ツアーの広告を出すんだ?」というクレームだった。