アルシャー盟は内モンゴル西部に位置し、総面積は約27万平方キロメートルに達するが、その3分の1以上が砂漠に覆われている。これは浙江省をすっぽり覆うほどの砂漠だ。アルシャー盟の砂漠は長年に渡り、毎年353平方キロメートルのペースで拡大している。砂漠化は鉄道の基礎と橋に損傷を与え、交通を断ち切り、さらには道路が使用不能になる。川やダムに黄砂が降り積もり、水質が低下し使用に影響が生じる。砂漠では砂を伴う強風が吹き、作物の種子と苗を吹き飛ばし、枯れさせる。根こそぎ引き抜くか砂に埋れさせる。さらには航空機の離着陸に影響を及ぼす。
最も恐ろしいのは砂嵐だ。アルシャー盟で砂嵐が発生すれば、砂塵が3日内に北京に届く。中国華北地区の砂塵の圧倒的多数が、アルシャー盟の砂漠から来る。ここは中国最大の砂嵐発生地だ。
面積が広く人が少なく、生態系が脆弱で、食糧を産出するわけでもなく、牧場もない。一年を通し砂が舞い、乾燥し雨がほとんど降らない。これはアルシャー盟の特徴だ。
アルシャー盟は今年、数十年に一度の干ばつを迎えた。植樹シーズンにも雨が降らず、干ばつが深刻化し、風が猛威を振るう。「3、4月に植えた木は、やっとのことで活着したが、枯れてしまった」枯れた木の苗を見ながら、呉向栄さんは思わずため息を付いた。
2003年に日本留学を終えた呉さんは強い決意を持ち故郷に帰り、中途から砂漠化防止事業に従事した。その後の16年間に渡り、呉さんは仲間と共にアルシャー盟の砂漠を守っている。砂漠化の拡大を防止する緑の帯を作ろうとしている。
呉さんは中国網の記者に「私たちは砂漠を変えようとしているのではなく、砂漠も私たちによる変化を必要としていない。砂漠をオアシスにしようとする行為は、逆に生態系のバランスを損ねる」と話した。
トングリ砂漠生態公益プロジェクト基地の責任者である呉さんは、今やアルシャー盟の模範人物になり、多くの一般人にこの砂漠との綱引きのような戦いに加わるよう呼びかけている。
左右沙発(ソファー)は2016年に基地と協力し、緑の帯に「幸福林」を作った。3年間で幸福林の花棒と沙拐棗が生い茂り、緑と砂漠の黄色の境界線ができた。風が吹くと砂と石の音がするが、空が黄砂に覆われることはなくなった。