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japanese.china.org.cn |01. 05. 2020

「山川異域、風月同天」に応え、俳句でお返し

タグ: 俳句 夏瑛 

▲日本が中国へ寄贈した感染症対策物資の上には、「山川異域、風月同天」という文字が印刷されていた(写真はネットより)

あなたはまだ、「山川異域、風月同天(山河は異なろうとも風や月は同じ天の下にある)」という言葉を覚えているのか?

2カ月余り前、日本が中国へ寄贈した感染症対策物資の箱に印刷されたこの詩句が、中国のソーシャルメディアSNSに繰り返し書き込まれ、日本社会各界が中国における感染症対応の正念場にくれたさまざまな支援と同じように、中国の人々の心に深く刻まれている。

今では、新型コロナウイルスは日本で拡散を続けていて、中国政府と社会各界は日本に大量のマスクなどの感染症対策物資を寄付している。

「鴻雁北一衣帯水の絆かな」

美しい善意のこもった便りが、同様に中国から日本への援助物資の箱にも示され、「山川異域、風月同天」と空を隔てて呼応している。

中国浙江省の企業が寄付した2万枚のマスクが、先日東京に到着した。日本浙江総商会のスタッフは、マスクをいっぱいに詰めた段ボール箱の一つひとつにカラープリント用紙を貼り、そこには日本語で作った俳句と、中国語に訳した漢俳、そして俳画が描かれていた。

▲鴻雁北一衣帯水の絆かな(春暖雁北、捎心意越洋)(写真提供・夏瑛)

古詩を贈られ、俳句でお返しする

俳句は、日本の古典的短詩であり、五七五の計17音からなり、世界で最も短い詩歌形式で、余韻、余白、深い思考を誘うことを極めている。俳画とは、俳句のイメージを表現したものだ。

「相手が分かる言葉を用いて、われわれの本当の気持ちを伝えたかったのです」と、上述の俳句の作者である浙江大学経済学院の夏瑛先生は、俳句を作った考えについて語る。

夏瑛さんは長い間日本で仕事をしてきた。4月中旬以降、日本の新型コロナウイルス情勢が日ごとに厳しさを増し、杭州のある匿名の企業が日本に2回目の寄付活動を行うことを決めた。今回の企業寄付のコーディネーターとして、夏瑛さんは、寄付する側の気持ちをよりよく表現するために、俳句づくりを引き受けることとなった。彼女は友人である人民中国雑誌社の王衆一総編集長、俳画について詳しい浙江農林大学芸術デザイン学院の王玉紅副教授を誘い、共に俳句と漢俳、俳画を一体とした美しい作品をつくり上げた。

▲鴻雁北一衣帯水の絆かな(春暖雁北、捎心意越洋)(写真提供・夏瑛)

夏瑛さんはそのうちの「風雨同舟」という俳画作品について、右側の船は中日文化交流史における遣唐使を象徴しており、左側の隋塔は日本の天台宗の発祥の地、中国天台山の国清寺を示していて、左右をつなぐ「之」の字状の長い川は、浙江省の人々の気持ちを示すとともに、中日両国が海を隔てた隣人であり、困難を共に乗り越えていく存在であることを象徴していると紹介した。

感染症の前で共にする運命

早くも3月下旬には、この思いやりのある企業は、日本浙江総商会を窓口として2万枚のマスクを寄付しており、早稲田大学、東京大学、日中児童の友好交流後援会などの機関に提供された。

「当時、私は『山川異域、風月同天』のイメージで、希望に満ちた春霞という季語を選び、感染症が拡大する中にいる日本の方々に、春の暖かさを感じてほしいと思って贈りました」と夏さん。

王衆一総編集長はこの俳句を、「春闘春寒、山川異域同風雨、共画同心圓」と訳し、王玉紅さんはこれに基づいていくつかの俳画を創作した。

この三人の息の合った作品が、ある東京大学教授の目にとまり、彼らのことを、中国俳界の「三剣客」と親しみを込めて呼んだ。

▲山川と風雨を輪に春霞(春闘春寒、山川異域同風雨、共画同心圓)(写真提供・夏瑛)

小学校の教員から大学の教師、高齢者、医療従事者、そして多くの日中友好人士がこの二回の感染症対策物資の寄付を受け取った。

日本浙江総商会はさらに夏瑛さんの提案に基づき、対象が異なる感染症対策物資には異なる俳画を貼った。多くの日本の友人たちはマスクを受け取った後、感謝の手紙を書き送り、わかりやすい俳句と俳画が彼らを感動させた。

東京大学から送られて来た感謝の手紙には、「夏先生の俳句の意境の如く、中国の皆さまとの友好協力のもとで、心を同じくしてこの人類的難局に当たれば、いつか春の日のようにうららかで平和な日常を取り戻せるにちがいないと信じています」と書かれていた。

▲日本浙江総商会の林立会長(右)とスタッフが1回目の感染症対策物資を受け取った(写真提供・夏瑛)

書画によって気持ちを伝え、心をつなぐ

2016年夏、ある偶然の機会により、当時日中友好会館留学生事業部の部長だった夏瑛さんは、俳句との縁をもった。2年後、彼女は日本の俳人組織である「天為俳句会」主宰で、元文部大臣の有馬朗人氏により、同人として推薦された。彼女は仲間たちへの自己紹介の時、「俳句を通して中日両国文化の相互理解を増進し、中日友好を促進したい」と言ったことをはっきりと覚えている。

夏瑛さんは、「今回の感染症が拡大する中で、俳句が中日民間人士の相互理解とコミュニケーションを促進することになるとは意外でしたが、私が望んでいた効果を得ることができ、今後も日本人に親しまれる俳句を用いて、われわれの善意と友情を伝えていきたいと思います」と感慨深げに語った。

現在、日本へ援助する感染症対策物資のために夏瑛さんに俳句創作を頼む中国の機関がまだたくさんあるという。

 

▲玄鳥至時空を越えて古都と古都(玄至、跨越時空古都市、双城新故事)(写真提供・夏瑛)

 

杭州のある物流企業が京都府に寄付した感染症対策物資のために俳句を創作していた時、京都も杭州もどちらも著名な古都であることを考え、夏瑛さんは『山海経』に登場する中国古代の神鳥「玄鳥」を季語とし、『詩経』商頌·玄鳥の中の「天玄鳥に命じて 降りて商を生ましむ」から取って、新生と希望をもたらすという意味を込めた。俳画の中で、鳥は杭州の六和塔から出発している。「玄鳥至時空を越えて古都と古都」。「三剣客」によるまた一つの俳句作品は感染症対策物資と共に届けられ、日本への中国の情誼を伝えたのだ。    文=姜俏梅(新華社)

 

人民中国インターネット版 2020年5月1日