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japanese.china.org.cn |13. 03. 2021

JICA長期専門家・白出博之氏が読み解く中国の「民法典」

タグ: 民法典

 昨年5月の全国人民代表大会で採択された中国初の「民法典」が、今年1月1日から施行されています。これについて、日本国際協力機構(JICA)の中国駐在長期専門家で弁護士でもある白出博之氏は、「民法典において民事権利、人格権等に関するルールが明確に規定されたことは、人々の合法的権益を保護するための司法アクセスの確立や法に基づいて裁判を受ける権利の保障とも密接に関わるものであり、中国の法治社会建設において大きな意義を持つことだ」と高く評価しました。

 北京で10日に中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)のインタビューを受けた白出氏は「『民法典』は中国で初めて成立した統一的な民事基本法で、その制定と実施は憲法を核心とした法に基づく国家のガバナンスや、法治国家と法治社会の建設と実現の重要な基礎になる」とした上で、民法典の立法理念に関わる注目点としてまず「民事主体が享有する民事権利の拡充と保障の強化、および弱者的地位にある民事主体の保護の強化」を挙げ、次に「持続可能な発展を目指す21世紀型の民法」の特徴のあらわれである「資源節約と生態環境保護のためのグリーン原則の採用」と「環境保護専門立法との連携・調整」を挙げました。

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JICA中国駐在長期専門家・白出博之氏(3月10日 王小燕撮影)

 また、具体的な手法については「違法コスト安、遵法コスト高」(法規制を遵守するより、行政罰を払って違法操業を続ける方がコストは安くなる)の現象に対して懲罰的賠償制度の拡充で対応している点を「比較法的にみてもユニークで大胆な手法」とし、「第三編 契約」の法体系設計については「中国的特色のある合理精神に基づいたもの」として、「民法典」に見られる斬新な試みを評価しました。

 さらに、日本国内からも注目を集めている内容として、電子契約の締結・履行に関する基本的なルールが整備されている点や、遺言相続の場面で印刷や録音・録画といった新たな遺言形式が追加されている点、そして「離婚冷静期」に関する規定の創設などを挙げました。

 なお、中国で盛んに議論されている「人格権編」については、「プライバシーや個人情報保護などの権利と利益がまず民法典に明記されたことで、民事訴訟を通じた権利実現が法的保障の裏付けを得た。この意義は非常に大きい」としたうえで、「人格権編を単独の編として置くこと自体が、人格権保護の重要性を強調し、かつ人民と法執行機関に強く認識させている」と指摘しました。

 施行が始まったばかりの「民法典」の今後について、白出氏は「法律の生命力はその実施にこそあり、法律の権威もその実施にある」と強調し、「民法典」が広く中国社会に普及して、それが正しく実施され、新時代における羅針盤として中国社会に確実に根付くことを期待すると話しました。

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 5年間の編纂作業を経て昨年に成立した「民法典」は、全文10万字以上、計1260条7編(総則・物権・契約・人格権・婚姻家庭・相続・権利侵害責任・附則)からなります。

 白出氏は2011年1月からJICA法整備支援プロジェクトの長期専門家として北京での駐在を始め、その後、中国全人代常務委員会の立法業務担当機関である法制工作委員会(法工委)との交流事業で10年にわたって橋渡し役と調整役を担当してきました。2019年にはその仕事が評価されて全人代法工委の推薦を受け、中国の経済や制度、文化の発展に貢献した外国人に贈られる最高位の賞である「友誼賞」を受賞しました。

 「中国国際放送局日本語版」2021年3月13日