全国日本経済学会、中国社会科学院日本研究所、社会科学文献出版社は17日、北京で『日本経済青書:日本経済と中日経済貿易関係研究報告(2021)』を発表した。
報告によると、日本の対中直接投資は調整転換期に入り、投資の動機も多様化している。以前のように資源または市場を単一的に探すのではなく、各分野によって投資ニーズが異なり、生産、市場、情報ニーズが入り混じった総合的な投資動機となり、特に市場追求型と戦略資源追求型の動機が目立つようになった。
1つ目は、市場追求型の投資は依然として直接的な原動力となっている。日本の対中直接投資が全面深化時期に入って以降、市場追求型の投資動機が非常に目立つ。中国経済はモデル転換・グレードアップに直面し、中米貿易摩擦は不確定性をもたらしたが、日本企業にとって中国市場は代わりがきかず、中産階級が拡大し続け、市場発展の将来性があり、市場規模も拡大しているため、市場追求型の投資動機は依然として首位を占めている。新型コロナの影響を受けても、日本の対中直接投資の利益低下は限られており、中国事業を行う日本企業の投資行為は比較的活発で、中国市場依存度は高く、中国経済の見通しに期待している。
2つ目は、生産型、効率型の投資動機は業種によって異なる。まず、労働密集型または生産技術の複雑度が低い日系企業の中国生産事業への投資動機は弱まり、その生産ネットワークは東南アジアに移る傾向にある。例えば、洋服や靴・帽子などの軽工業商品がそうである。これは主に中国の人件費、経営コストが大幅に上昇したためである。
資本密集型、生産技術が複雑な日系企業の中国生産事業への投資動機は比較的安定し、「地産地消」型産業の日本企業の対中投資は増加傾向にある。これは主に中国が世界の産業チェーンとサプライチェーンに深く溶け込み、そのサプライチェーンと産業付帯能力は世界に代わりのきかない競争力を形成しているためである。商品供給業者の中で、ランクの低い業者ほど生産が専門的で、巨大なサプライチェーンネットワークに頼る必要がある。中国事業を行う日本企業にとって、移転しやすいのは最後の組み立てを行う工場である。そのほか、「地産地消」型産業の日系企業の対中投資は増加し、中でも自動車および部品関連の日系企業で最もその傾向が目立つ。
3つ目は、戦略資源追求型の投資動機が目立つようになった。中国のインターネットサイト開設、およびサイトを通して「店舗×EC×物流」を実現した新生業種(自転車シェアリング、出前サイトなど)は日本よりリードしており、中国企業は次世代IT、オンライン娯楽、自転車シェアリング、、モバイル決済、ECなどの分野で世界の基準設定者となっている。人工知能(AI)、スマート製造、新エネルギー、医療健康などの分野は、一部の技術と管理に中日間でまだ差があるものの、その差は中国の科学技術力の向上に伴い縮小している。2019年、中国のPCT特許申請件数は初めて世界一になった。世界知的所有権機関(WIPO)などが発表したグローバル・イノベーション・インデックス(GII)によると、2019年から中国は日本を超えて14位につけ、2020年も14位を維持した。日本は16位にランクダウンした。科学技術革新クラスタトップ100には中国から17クラスタがランクインし、うち「深セン―香港地区―広州」は2位につけた。一方、日本は「東京―横浜」が1位につけるが、ランクインしたのは中国の3分の1にも及ばない5クラスタのみだった。現在、中国事業を行う日本企業は北京、上海、広州などの研究センターまたは中国企業との技術連携実験室を積極的に設立し、戦略追求型の投資動機は強まっている。
注意すべきは、日本企業の対中投資は中国の経済政策、制度環境の変化にも影響される点である。例えば、中国の環境規則の厳格化に伴い、中国の発展方針と合わない高汚染・高消費エネルギーの日系企業は調整を行う必要がある。また、中米関係の不確定性の影響も受け、中国を生産基地とし、商品を米国に輸出する日系企業は生産ネットワークを移転する傾向にある。これらの企業は調整を実施または計画しているため、新型コロナ流行による影響はせいぜい推進器になったにすぎない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年9月18日