想像以上に深刻な、日本の「政教融合」問題

中国網日本語版  |  2022-08-12

想像以上に深刻な、日本の「政教融合」問題。日本国憲法は政教分離を規定しているが、日本の政党と宗教団体は互いに利用し、働きかけ、影響を及ぼしている。日本の内政及び外交政策の形成において、宗教が重要な力を発揮している…

タグ:統一教会 宗教 献金 信者

発信時間:2022-08-12 17:00:20 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 日本の第2次岸田改造内閣が10日、正式に発足した。岸田氏は新内閣の閣僚に対して、自身と旧統一教会との関係を見直し報告するよう特に求めた。日本の安倍晋三元首相が襲撃され死亡した後、自民党と旧統一教会の関係が日本の世論から注目されている。政党と宗教団体の切っても切れない関係もまた、日本国内で激論を呼んでいる。日本国憲法は政教分離を規定しているが、日本の政党と宗教団体は互いに利用し、働きかけ、影響を及ぼしている。日本の内政及び外交政策の形成において、宗教が重要な力を発揮している。環球時報が伝えた。

 

 信者数が総人口を上回る?

 

 「これ(宗教)は事実上、日本の政治活動の標準的な構成部分だ」安倍氏が襲撃にあった後、多くの日本人が自民党と旧統一教会の「古い付き合い」に衝撃を覚えている。ところが米ノースカロライナ州立大学の日本宗教問題専門家であるマクローリン氏はこのほど、英紙「フィナンシャル・タイムズ」の取材に応じた際に、「旧統一教会が50年代に日本で支部を設立する前にも、その他の宗教団体が日本の政治において積極的に声を上げていた」と述べた。

 

 日本の文化庁の統計データによると、2020年現在で日本には18万を超える宗教団体が存在する。これらの団体のうち、旧統一教会を除く比較的大きなものには、日本会議、神道政治連盟、創価学会などがある。

 

 NHKが2018年に行った調査によると、多くの回答者が「信仰宗教なし」と回答したが、文化庁の「宗教年鑑」によると2020年現在の日本の信者数は1億8000万人超で、当時の日本の総人口の1億2600万人を上回った。これは多くの人が同時に複数の宗教を信仰していることを意味する。多くの日本人は宗教活動を文化的な行事として参加しているだけで、そのため自分が宗教の信者であるとは考えていないとの見方がある。

 

 高い「献金集め」能力

 

 日本の一部の宗教法人は多くの信者を持つ。香港「亜洲時報」(電子版)によると、創価学会の信者数は1200万人、幸福の科学は1100万人、立正佼成会は650万人と例を挙げた。

 

 多くの信者を持つ日本の宗教団体が高い「献金集め」能力を持っていることは当然だ。日本会議を例とすると、各レベルの信者から毎年3800円から10万円の会費を取っている。日本会議はさらに2種の献金を設定し、一般的なものは1000円、特別のものは10万円としている。企業と異なり、日本の宗教法人はリスクゼロだ。あるデータによると、旧統一教会は2009−11年の間に、日本で毎年約500億円の献金を集めた。

 

 相互利用

 

 日本国憲法は政教分離を明記しているが、戦後の歴史を振り返ると、日本の政界と宗教団体は一線を画するのではなく、互いに利用し影響を及ぼしている。

 

 日本の政治家からすると、多くの信者と潤沢な資金を持つ宗教団体が、有権者からの票集めを支えてくれることは間違いない。しかも日本の宗教団体にとっては、政治家(特に有名な政治家)が信者になるか宣伝してくれれば同団体の影響力拡大につながる。団体が唱える政治的主張をさらに強め、より多くの献金と信者を集められる。

 

 保守的な宗教団体が政治の右傾化を促進

 

 戦後日本で長期的に政権運営しているのは自民党であり、安倍氏も戦後の在任期間が最長の首相になった。この背景があり、自民党及び安倍氏と保守的な宗教団体との関係が、日本の政治に大きな影響を及ぼした。

 

 安倍氏と自民党は保守的な宗教団体を利用し、票を集め政治的な主張を広めようとした。安倍氏は2012年に首相に再任したが、これは日本会議などの宗教団体の貢献が大きかった。また「フィナンシャル・タイムズ」などのメディアによると、安倍氏は2015年に新安保法案の可決を促し、1945年以降で初めて日本の海外派兵・作戦を認めたが、この行動は人々の猛反発と大規模な抗議を受けた。その後、旧統一教会と日本会議が人員を集め活動し、上述した抗議に対抗し、安倍氏の安保政策を支持した。

 

 日本会議は1997年に、「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」を統合して結成された。日本最大の保守団体である同団体は、日本の47都道府県に支部を置く。韓国紙「中央日報」によると、日本会議の正式な会員は4万人未満だが、加盟する右翼団体を加えるとそのメンバーは800万人にのぼる可能性がある。日本会議は改憲と首相による公式な靖国参拝を求め、東京裁判を否定し、「女性宮家」の創設に反対している。

 

 神道政治連盟の多くの政治的主張は日本会議と似通っている。同連盟は1969年創設で、神社本庁を母体とし、日本の各都道府県に支部を置く。傘下には8万の神社を収める。神道政治連盟の政治的主張には、天皇の権力の強化、憲法改正、政府当局者による靖国参拝、学校での神道による道徳教育の実施などがある。この民族主義団体はさらにウェブサイトで、日本の歴史に対する「間違った認識」を払拭し、日本を世界から尊敬される国にするよう取り組むとしている。

 

 米紙「ワシントン・ポスト」によると、日本政府は戦後に「新たな立場」を築くため、保守的な宗教団体と手を結んだ。政治的主張が似通っているため、安倍氏と自民党は神道政治連盟や日本会議と緊密に協力していた。豪サイトによると、2016年の安倍内閣の20人の閣僚のうち19人が神道政治連盟と関係を持ち、14人が日本会議と関係を持っていた。また日本の国会議員はさらに、「神道政治連盟国会議員懇談会」と「日本会議国会議員懇談会」を作った。神道政治連盟の公式サイトの統計によると、2022年に「神道政治連盟国会議員懇談会」に出席した議員は264人にのぼる。「朝日新聞」によると、290人の議員が「日本会議国会議員懇談会」のメンバーになっている。2つの懇談会のメンバーには、岸信夫氏や自民党副総裁の麻生太郎氏など、日本の多くの重要政治家が含まれる。

 

 大きな力を持つ神道政治連盟と日本会議は、日本による近年の政治右傾化の重要な推進者だ。その影響を受け、安倍氏は首相再任後に集団的自衛権を解禁し、新安保法を可決し、さらには「日米防衛協力のための指針」に署名した。安倍氏は2020年に健康上の理由から首相を退任してから3日後、靖国神社を参拝した。後任の菅義偉元首相も靖国神社に供物を奉納した。中央民族大学歴史文化学院の学者である羅敏氏は、「日本のハイレベル政治家が、アジアの隣国の感情を傷つけることも顧みずたびたび靖国神社を参拝しているが、これらの動きの裏側には宗教の日本政治への大きな影響力が隠されている」と述べた。

 

 しかし日本会議や神道政治連盟と異なり、創価学会は改憲や歴史などの問題で慎重な態度を示している。信者が1930年代に日本軍国主義政府から迫害されたため、創価学会は1955年から政治に参加した。命の尊厳の思想を根本とし、平和・文化・教育を促進し、人類の幸福を祈ることを主旨としている。

 

 日本の連立与党である公明党の支持母体は創価学会であり、学会の政見は公明党を通じ示される。例えば公明党は改憲の問題をめぐり慎重な立場を維持しているが、これは自民党の改憲の狙いをある程度けん制している。

 

 見直しと変化を求める国民

 

 安倍氏が旧統一教会の問題により襲撃された後、日本メディア及び国民は宗教と政治の関係を見つめ直し、本件が変化をもたらすことを願っている。


 マクローリン氏は、現状を見る限り日本の宗教と政党の緊密な関係はなおも続いており、日本で構造的な変化は生じにくいと述べた。しかし「フィナンシャル・タイムズ」は、安倍氏の死はこの状況を変える可能性があるとした。かつて日本で政治と宗教の激しい衝突が生じた後には行動があった。例えば1995年の地下鉄サリン事件後、日本政府は国会で宗教団体関連の法律改正案を可決し、宗教団体の管轄権を地方自治体から文部科学省に移し、さらにこれらの団体に財務情報の公表を求めた。


 「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年8月12日

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