過ぎ去ったばかりの8月と9月、世界の目が北京に集まる一方、北京も世界に向け自らを示すチャンスを得た。中国人あるいは外国人の目を問わず、北京には独特の「符号」があり、こうした符号が北京に対する認識に直接影響を与えている、と言ってもいいだろう。では、北京を代表する符号とは何か。かつて古都を守った城壁か。それとも縦横に交錯する「胡同」(横丁)か。長城、故宮か。または近代化された中関村、CBD(商業ビジネス地区)だろうか。古い北京の「小吃」(軽食)か。あるいは百年の老舗か。もちろん、瑠璃厰や天橋、京劇、老舎や王朔とも言える。2006年北京主催の大学入試での作文テーマは「北京の符号」だった。五輪後、北京の符号にまたどんな変化が生じたのだろう。
北京の符号も絶えず書物に描かれてきた。梁実秋に老舍、林海音、徐城北、翁立、肖復興、王朔…。1世代また1世代と、こうした作家たちは自らもなかなか理解できない北京との気持ちのつながりを表現しようとしてきた。物質的な符号や非物質的な符号、古い北京の符号や新しい北京の符号との間で、この都市の変遷を目の当たりにしながら、北京の符号に独自の思いを抱くようになった。
帰納すれば、北京の符号はおよそ以下のいくつかに分類できる。
故宮は北京の皇室符号の代表
◆政治符号:北京は遼、金、元、明、清の5王朝の古都、新中国建国後にも再び中華人民共和国の首都となったことから、その政治符号としての意義は言うまでもない。故宮や天安門、中南海、十三陵などもこうした意義では北京の符号に帰納できるだろう。
◆歴史符号:歴史的な符号は時間が悠久であり、過去を振り返ることで、そこから直接、北京の歴史の長さを感じることができる。周口店や長城、天壇、頤和園などの符号も歴史符号の代表と言えるだろう。
「胡同」は北京の平民符号の代表
◆平民符号・老北京符号:前門や大柵欄、老舗、王府井、天橋、胡同、潘家園(骨董品市場で有名)…。これらは、古い北京の人びとの頭のなかから消すことのできない北京の符号だ。生活の息吹にあふれ、市井の風情に富んでいる。
中央テレビビルは新たな北京符号に
◆新北京符号:五輪の開催で「鳥の巣」や「水立方」などの符号は世界に広く知れわった。こうした特色のある建築物が新しい北京の符号になったのは間違いない。中関村やCBD、国家大劇場、中央テレビビル、北京南駅なども将来、人びとの印象に残る代表的な符号となるだろう。
◆文化符号:老舎や王朔、徐城北、劉一達などの小説、京劇や新劇、漫才なども北京独特の風土や人情、人びとがどう生活し交流するかを教えており、目に見えない形で北京に対する人びとの連想に影響を与えてきた。例えば、現代芸術の拠点として注目される798なども、徐々に符号化されつつある。
一部の学者が考えているように、北京の符号そのものについて言えば、ずっと異なる見方が存在していたということだ。一人ひとりそれぞれの心に北京の符号があるからなのだ。それを示す明らかな例は、梁実秋や林海音、梅蘭芳が北京の「豆汁」(緑豆で春雨の作る際の残り汁)を片時も忘れられなかったことにみられる。林海音は晩年、北京に戻ると一気に6碗も飲みほしたという。作家の肖復興は「その味は必ずしもうまいとは言えず、飲み慣れない人もいる」と話してはいるが。北京は日進月歩の勢いで発展し、絶えず新しい符号を創造すると同時に、過去の符号は一部徐々に姿を消しつつある。それがまた人びとの思いを募らせている。社会の進歩、文化の発展はまさにこのように自身の新陳代謝を推し進めているのでないか。
「チャイナネット」2008年9月19日