よく知られているように日本の古代建築はほとんど木製である。屋根はたいてい茅と樹の皮でできている。このため火災はこれまで古代建築保護の大敵であった。1949年1月26日に、世界最古の木造建築である法隆寺金堂の壁画が火事で消失した。この事件は日本の文化財保護の歴史における一大事件として、多くの国民に衝撃を与えた。
日本ではこれを契機に1950年に「文化財保護法」が制定され、文化財は法律の保護の対象となった。重要文化財を破壊した者は5年以下の懲役か30万円以下の罰金が科せられる。たとえ文化財の所有者であっても2年以下の懲役か20万円以下の罰金に処される。その後、日本では国宝級の建築物が火事で消失する事件は起きなかった。それまで火災はほとんどが放火だったと思われる。法律が大きな力を発揮したといえる。
日本ではさらに1955年に1月26日を「文化財防火デー」とすることが決められた。毎年その日には、文化庁や消防庁、教育委員会、文化財所有者が合同で消火訓練を実施し、文化財の防火キャンペーンを行う。さらに国庫負担により国宝級の建築物には火災報知器やスプリンクラーなどの消火設備が取り付けられている。
文化財保護の防火活動に取り組むのは政府だけでなく、地方自治体も力を入れている。各自治体も火災を防止し全国レベルのキャンペーンを盛り上げるために、防火設備を点検するだけでなく、消防庁と各地の消防署は文化財の所在地で防火訓練を行い、国民の文化財に対する保護意識を高めている。
▼厳格な消防法▼
日本では文化財に指定された建築物は消防法に基づいて火災報知器と消火器を設置しなければならない。しかし寺院など文化財の面積が広いためその費用は多額となる。このため政府は所有者の経済状況を考慮して、最高で85%の補助金を付与している。このほか、「文化財保護法」に指定されたすべての重要文化財は3年に1度、現地の消防署長に報告書を提出しなければならない。報告書の提出を怠ったり虚偽の報告を行った場合は、30万円以下の罰金又は拘留に処される。
消防法第17条第3項では、建築物の所有者、管理者若しくは占有者は消防システムを検査し、定期検査の後、その結果を現地の消防署長に報告しなければならないと規定している。
また同23条では、市町村長は必要に応じて重要文化財に周囲に一定の区域を設定し、一定の期間たき火や喫煙を禁止できると規定している。消防法は各違反行為に対して、個人の場合には3年以下の懲役及び300万円の罰金、法人の場合には1億円以下の罰金を科すことができると規定している。
日本で仕事をしていると、中国では見ることのできない唐や宋の時代の建築物や古い城に心を打たれることがある。これらの建築物が千年以上もそのまま保存されているのは、日本人の文化財に対する愛情の賜物であり、厳格な消防対策と強い消防意識によるものでもある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年1月9日