これは人類史上初のブラックホールの写真だ。北京時間10日午後9時頃、中国を含む世界各地の天文学者が初のブラックホールの写真を同時公開した。ブラックホールが予言されてから百年になるが、人類に目撃されるのはこれが初めてだ。
今回の歴史的な発見の裏側に隠された秘密を、次の分かりやすい対話形式で明らかにしていこう。
ーやぁブラックホールさん、まずは自己紹介を。
ブラックホール:私は100億年以上生きているが、ついに人類に写真を撮影されることになりました。私の写真を撮ってくれたのは、口径が地球サイズの「仮想」望遠鏡です。200人以上の科学研究者が地球各地にある8つの電波望遠鏡を組み合わせ、ついに私の顔を撮影したのです。
ーブラックホールさん、あなたはこれまでは「噂」に過ぎなかったのですね?
ブラックホール:その通りです。
解説:『インターステラー』などのSF映画で、私たちはブラックホールの姿を「確かに」目にしたことがあるが、あのような映像は映画監督の「独りよがり」な想像に過ぎない。ブラックホールの真の姿を目にした人はいなかった。
約100年前、アインシュタインを始めとする偉大なる科学者は、大質量恒星は燃料が尽き命の終結を迎えた後、内部の中心に向かい崩壊しつつ集まり、最後にブラックホールを形成すると予言した。
ブラックホールは当初、ニュートンの万有引力の法則、アインシュタインの一般相対性理論の公式と方程式にしか存在しなかったため、あまりにも人類の理解を超えていた。最も早く予言した人でさえも、その実際の存在を疑っていたほどだ。今回の国際協力に参加した中国科学院上海天文台の沈志強台長は、「人類は2015年に初めて2つのブラックホールが合体することにより発生した重力波を検出し、ブラックホールの存在を力強く証明した。しかしこれは間接的な証明に過ぎなかった」と説明した。
ーあなたはいったいどこに隠れていたんですか?
ブラックホール:私とあなたの間の距離ということならば、5500万光年離れていたことになります。
解説:
沈志強氏:人類が撮影したこのブラックホールは、おとめ座にある銀河「M87」の中心にあり、地球から5500万光年離れている。私たちの銀河系も、おとめ座銀河団の一部だ。
ーあなたは限りないほど大きいそうですが、どのぐらいの大きさなんですか?
ブラックホール:違います。私はとても重いですが、体積は小さいです。
解説:多くの人はブラックホールの大きさは、人類の直観的な認識を上回ると想像している。しかし今回の国際協力に参加した中国科学院上海天文台の路如森研究員は、「ブラックホールは質量と密度が想像を上回るほど大きいだけだ。例えば今回撮影されたブラックホールの質量は太陽の65億倍で、特大質量ブラックホールだ。ところが体積は小さく、その内部にほぼ隙間がないほどだ」と説明した。
沈氏は例を挙げ、「例えば太陽をブラックホールに変えようとするならば、太陽を非常に小さな半径の空間内に圧縮しなければならない。そうなれば、この太陽はブラックホールと名を変えることができる。これには非常に強力な引力があり、周囲のガス、塵、さらには近くの恒星と小さなブラックホールを飲み込むことができる。強い重力により、ブラックホールは極めて暴力的なやり方により陣地を広げ、自分の縄張りを示す」と話した。
ーあなたは初の写真でどこを撮影されたのですか?
ブラックホール:私の横顔の輪郭です。
解説:今回の国際協力に参加した論文発表チームのメンバーの一人である、中国科学院上海天文台の袁峰副台長は「写真の黒く丸い影の中央には、ブラックホールの真の姿が隠されている。外側の光の輪は、ブラックホールの周辺のガスが出す光だ。そのため正確に言えば、初の写真が撮影したのはブラックホールの輪郭だ」と説明した。
ーブラックホールさん、あなたは本当に黒いんですか?
ブラックホール:外側は黒いのですが、中は黒くないかもしれません。
解説:ブラックホールは底なし沼のようなもので、光であってもそこから出ることはできない。しかし科学者の故スティーブン・ホーキングは、ブラックホールは想像されるほど暗くなく、その中から逃げ出すこともできると推測した。
沈氏は「写真を見ると、ブラックホールの勢力範囲の中は確かに真っ暗だが、その範囲の中にある質量が非常に大きく体積が非常に小さな天体がどんな色をしているかについては、写真ではまだはっきりしない」と述べた。
ブラックホールに飲み込まれたものに、SF映画が想像するような「脱出ルート」があるかについて、路氏は「まだ分からない。写真で目にすることができず、ないかもしれない」と述べた。
ー物理の教科書の一部の理論は時代遅れになったそうですが?
ブラックホール:喜ぶのはまだ早いですよ。
解説:科学者は2016年、人類が2015年に初めて観測した重力波のデータを分析した後、ブラックホールの周辺では一般相対性理論が通用しないと表明したが、これは本当だろうか。
ブラックホールの初の写真は、この謎を明らかにした。袁氏は「ブラックホールの写真が撮影されるまえ、科学者は一般相対性理論に基づき、ブラックホールの周辺の暗いエリアと光の輪の構造を正確に計算した。ブラックホールの写真を撮影した後、実際の状況が計算結果と一致することが分かった。観測結果も、一般相対性理論を検証した」と述べた。
しかし沈氏は、現時点ではブラックホールの内側を目にすることができないため、そこの法則が人類の物理の法則と食い違うかについては不明と話した。
ー人類が待ちに待った写真が撮影されましたが、その後はどうなるのでしょうか?
ブラックホール:私が宇宙で最も凄まじい存在であるかを知りたくないのですか?
解説:袁氏は「ブラックホールの初の撮影は、人類がブラックホールを認識する歴史的な一歩を踏み出したに過ぎない。今後は観測する望遠鏡の数、分解能を増やしていく。さらには宇宙により鮮明度の高い望遠鏡を作る可能性も否定できない」と話した。
沈氏は「詳細な点がよりはっきりした、角度がより多様なブラックホールの写真を短時間内に撮影し、いつの日か宇宙で系統的なブラックホールの調査を展開したい。これは一般相対性理論など、人類の基礎的な科学の理論をさらに検証する。またブラックホールがどのような存在であるのか、銀河の中心の壮大な渦はどのように形成されるのか、宇宙はどれほど大きいのか、いかに形成され変化していくのかを突き止める一助になる」と述べた。
「我々は何者か 我々はどこから来たのか 我々はどこへ行くのか」という人類の「究極の3つの問い」の答えは、ブラックホールの所にあるのだろうか。
今後に期待しよう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年4月11日