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japanese.china.org.cn |14. 03. 2020

幸福村の「貧しい支部書記」

タグ: 貧困脱却 対策

   四川省涼山イ族自治州布拖県の中心部を出発し、曲がりくねった山道を3時間進み、記者は金沙江のほとりにある龍潭鎮幸福村に案内された。この日、43歳の村党支部書記の拉馬爾且さんは吉普さんの生活保障手続きの件で動いていた。

 

 2011年に村党支部書記になってから、拉馬爾且さんは1日も休まず、12時前に就寝したことはないという。

 

 

四川省布拖県龍潭鎮幸福村(2019年12月11日、ドローンで撮影)

 

 村は幸福村という名前だが、以前は幸福は村民にとって贅沢なことだった。

 

 赤土の簡素な家、泥道……長年にわたり、貧困は「悪魔の呪文」のように187世帯の村民をこのやせた土地で苦しめてきた。

 

 以前、葉タバコは村民の収入源となる作物で、化学肥料と農薬のコストを引くと、よくて1ムーあたり1000元しか稼げなかった。

 

 2011年、拉馬爾且さんは村党支部書記に当選した。前任の書記は、「自分ができなかったことをできたら感心する。できなければ、退くまで待つしかない」という言葉を残した。

 

 「就任後にいくつかの目標を書き、会議を開いた。放った言葉を実行できなければ、拉馬という姓は名乗らない」と拉馬爾且さんは話した。

 

 道路整備が最初の目標となった。村の葉タバコは山の中腹にあるため、傾斜が大きければ人が背負って下山するしかない。道は全村民の夢である。

 

 有言実行。拉馬爾且さんは3万元の全貯金を投じて設備を借り、道路整備した。最初は村民らは拉馬爾且さんの行動を見ているだけだったが、彼が各家庭に呼びかけ、協力者は増えていった。5本全長3.7キロメートルの農用機械道路は少しずつ掘り進めるしかなく、3年を要した。これはタバコの葉を輸送する道というだけでなく、この村党支部書記の村民からの支持にもつながった。

 

 

村にできたコンクリート道路を歩く四川省布拖県龍潭鎮幸福村の党支部書記の拉馬爾且さん(2019年12月11日)

 

 道が開通し、拉馬爾且さんは村民の生活の質を早急に向上させたいと考えた。貧困脱却対策を実施して以来、彼はプロジェクトと資金を獲得するために鎮と県を3日間奔走した。

 

 幸福村は昔からイヌザンショウを栽培するが、栽培規模は小さく、分散し、技術は遅れ、利益は少なかった。

 

 2015年、拉馬爾且さんは村の「両委員会」のメンバーたちと幸福村でイヌザンショウを大規模栽培することを決め、郷党委員会政府と布拖県関連部門の支援のもと、幸福村のイヌザンショウ栽培基地は県の重点プロジェクトに指定された。

 

 

村民と来年のイヌザンショウ栽培規模について話し合う四川省布拖県龍潭鎮幸福村の党支部書記の拉馬爾且さん(左から3番目)(2019年12月11日)

 

 現在、村のイヌザンショウの1ムーあたり収入は5000元に達している。2019年、幸福村のイヌザンショウ収入は200万元に達し、楽山、成都、雲南からも仕入れに来る。幸福村の1人あたり平均収入は7000元に達し、村民は三輪車やバイクだけでなく、多くの人がトラックや乗用車を保有している。

 

 「以前、貧困家庭には穀物がなく漬け物しか食べることができず、私はトウモロコシ粉を援助していた。現在はどの家庭もおかず3品とスープを食べ、バーベキューや火鍋も食べる」と拉馬爾且さん。

 

 2017年、幸福村は鎮内で最初に貧困を脱却した村になった。

 

 「親ではなく、共産党が自分の家を補修してくれた。今はイ族年の時期で、党の素晴らしい政策と村の素晴らしい支部書記に感謝したい」と話す貧困世帯の馬莫吾作さんの新居はきれいで明るい。

 

 村民は裕福になったが、拉馬爾且さんは貧しくなった。

 

 イヌザンショウ栽培に切り替え後の村のタバコ葉の契約を完了させるため、拉馬爾且さん一家の6ムーの土地は2015年にようやく断片的にイヌザンショウを栽培できた。拉馬爾且さんは、「昨年のイヌザンショウ収入は1万元ほどで、3人の息子の学費も賄えない。自分の月収はわずか1650元で、鎮内のレストランで働く妻の収入に頼っている」と話した。

 

 拉馬爾且さんの長男は今年23歳で、成都の大学に通っている。「他の同級生は奨学金があるのに、どうして自分にはないのか」と息子に聞かれ、拉馬爾且さんは「お父さんは幹部だから、国に面倒をかけてはいけない」と答えた。「前学期は15キログラムほどのそば粉を学校に持って行かせた。幸い先生が配慮してくれ、食堂でよく食べさせてもらっている」と、拉馬爾且さんは涙ながらに話した。

 

 拉馬爾且さんは、ここ数年、自分も辛い思いを多くしているという。公平・公正に対応するため、親戚から罵られたり殴られたりもする。「便宜をあたえる」ことを拒み、いとこが貧困者支援住宅に移転できなかったため石で殴られたという彼は、「悲しくて涙が出た。体より、心が痛んだ」と述べた。

 

 しかし、この「貧しい支部書記」は民衆から信頼されている。2017年、貧困者支援移転により、村は31戸の建設用地の手配に協力することになった。拉馬爾且さんは1日に4回の会議を開き、7日で作業を終えた。現地の郷党委員会政府は作業効率の高さに驚き、村民らの「貧しい支部書記」への信頼と支持を評価した。

 

 拉馬爾且さんは、「自宅を補修するとき、100人以上が手伝いに来てくれて感動した。みんなに認められているのだと知った」と話した。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年3月14日