雲南省の北上するゾウの群れが連日、注目を浴びている。記者が雲南省の普洱市、シーサンパンナ・タイ族自治州などのアジアゾウの主な生息地を取材したところ、「人とゾウの調和」に関する多くのエピソードを耳にした。
「ゾウが休むとやっとうたた寝できる」ーーアジアゾウの観測員、楊忠平さん
思茅区六順鎮の高さ数メートルの観測塔で、楊忠平さんが望遠鏡を持ち遠くの密林を見つめていた。
楊さんが15日、アジアゾウを観測した。新華社記者・王冠森撮影
楊さんは「ゾウの痕跡を確認すると、直ちにショートメールで警告を出す」と語った。楊さんは毎日、周辺の森林に入り、ゾウが残した足跡と匂いによりその活動の経過を判断する。
楊さんはゾウと共に暮らすようになってから4年目だ。楊さんは苦笑しながら「ゾウが休むとやっとうたた寝できる」と話した。
常にアジアゾウと付き合っていれば、正面からの遭遇が不可避だ。楊さんは2019年12月のある朝、いつものようにゾウの群れを観測していた。霧が濃すぎたため、木の下で休息中の5頭のゾウを発見できなかった。ふと、驚いたおとなの雌ゾウが突進してきた。楊さんは何も考えられず、急いでUターンした。
「これでも最も危険だった方ではない」と楊さんは振り返った。ある時には、うっかり20数頭のアジアゾウの「包囲網」に入ってしまったが、幸いにも攻撃を仕掛けられなかったという。
しかし楊さんは尻込みしなかった。アジアゾウの食料の需要を満たすため、普洱市は近年、観測塔の隣に面積1200ムー余りの「ゾウの食堂」を作った。時間帯及び季節に応じてチサノラエナなどの植物を植えており、一年を通じゾウが食料を探しにやってくる。
楊さんは「最も多い時は51頭のアジアゾウを目にした。ゾウたちはここでのんびり食事をした」と話した。
「子供の世話ならゆっくり理を説くことができるが、ゾウは話せない」ーー「ゾウの父」こと熊朝永さん
「私は然然の父だ」シーサンパンナ・タイ族自治州野象谷にある中国雲南アジアゾウ種源繁育及び救助センターで、熊朝永さんはこのように自己紹介した。熊さんがゾウの「然然」を救った話は長い。
「ゾウの父」が17日、アジアゾウを外の活動に連れ出した。新華社記者・王冠森
野象谷の作業員は2005年7月、川に負傷した小さなゾウを発見した。後ろ左足の傷口が深く化膿しており、命の危険があった。その後、80数人でつくる救助隊が駆けつけ、ゾウを救助センターに送った。
その後、豊富な看護経験を持つ熊朝永さんがこのゾウの「父」になった。このゾウは反発し、獣医を壁に押し付けたことがあった。熊さんは近づくのが怖かったが、焦りを覚えた。「ゾウは痩せて、肋骨が見えるほどだった」
ゾウの栄養を補給するため、熊さんはリンゴを食べる姿を見せるところから始めた。これは熊さんとゾウの距離を縮め、その後の薬物治療と看護の基礎を固めた。雷が鳴ると、ゾウは何晩も続けて悲しそうな声を上げた。熊さんはベッドをゾウのそばに移し徹夜で守った。
こうして十数年たった。「然然」は2019年9月に子供を1頭出産した。熊さんはゾウの赤ちゃんの世話で忙しくなった。「ゾウの祖父に昇格するとは思わなかった」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年6月22日