夏を迎えて花が咲き乱れる内蒙古自治区の草原(写真=本誌植野友和記者)
2000年から2017年の間に地球で増えた緑化面積のうち、中国が4分の1を占めており、緑化貢献率は世界一だ。このような成功の背景には、中国で大いに推し進められている生態文明建設がある。その実態をレポートすべく、われわれ『北京週報』の取材班は、内蒙古(内モンゴル)自治区で赤峰市や錫林郭勒(シリンゴル)盟などを訪れた。
どこまでも続く大草原、緑に覆われた山々、大自然の中で生きるさまざまな動物……中国の北辺に位置する内蒙古自治区の生態環境は、この地を訪れる者を魅了してやまない。しかし、そのような美しい自然も、かつては危機に瀕していたというから驚きだ。シリンゴル盟正藍旗の于荘林業・草原局局長は「2000年から私たちは生態環境の修復を始めましたが、その当時には乾燥した気候や人為的な要因もあり、すでに草原の砂地化が見られました」と語る。
内蒙古自治区の人なら皆が知っている中国の有名な歌に「美しい草原は我が家」というものがある。その歌のとおり、漢族、蒙古族を問わず、現地での暮らしは草原と切っても切り離せない。緑あふれる環境を取り戻すため、内蒙古自治区では生態文明建設が官民挙げて推し進められていった。とりわけここ5年ほどの成果は大きく、今日のような素晴らしい自然が保たれている。
湖畔に広がる草原の中の道を走る車(写真=本誌尹康記者)
では、具体的にどのような取り組みが行われているのか。その重要なキーワードは「持続可能性」だ。シリンゴル盟阿巴嘎(アバグ)旗で長年牧畜業を営む方の話によれば、現地では草が成長期していく4月5日から5月5日の間、放牧を行わないのだという。この取り組みによって家畜が芽吹いたばかりの草を食べ尽くさないようにし、草原の生態を持続可能なものとしている。また、放牧禁止エリアを設けて砂地化した土地を草原にする措置や、農地を森林に戻す「退耕還林」も盛んだ。いずれも生態環境のキャパシティーを超えた利用を防ぐことが目的であり、果てしなく広がる内蒙古自治区の草原を見れば、成功を収めているのが分かる。
さらに注目すべきは、現地の農民や牧畜民がそれらの施策を積極的に受け入れている点である。政府からの手厚い補助金や環境保護意識の高まりも原因としてもちろんあるが、生態環境の回復が人々に増収をもたらしていることも大きい。近年、中国ではエコツーリズムが人気で、大型連休などには大勢の人々が内蒙古自治区を旅行先に選ぶ。農村観光は多くの雇用やビジネスチャンスを生み、豊かな自然を活かした特産品の生産も盛んに行われている。前出のアバグ旗の牧畜民の話では、現在彼らの1世帯当たりの年間平均収入は十数万元から二十数万元にまで増加しているという。このように内蒙古自治区、そして中国では生態保護と経済発展の両立が成し遂げられているのだ。
中国の生態文明建設を語る上でたびたび登場する「緑水青山は金山銀山である」という言葉の通り、生態保護の取り組みによって緑が保たれている草原や山々は、まさしく金山のごとく人々に経済面でも豊かさをもたらしている。環境保護や生物多様性の維持、持続可能な発展などが世界中で喫緊の課題となっている今、中国における生態文明建設の事例は各国に大きな示唆を与えるものに違いない。
「北京週報日本語版」2021年7月20日