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japanese.china.org.cn |30. 07. 2019

バリアフリー映画、視覚障害者と社会の接点に

タグ: 映画 視覚 障害 バリアフリー

 

 真っ暗な映画館内で、スクリーンに説明文が表示されると、客席の一部の人は目を細めてそれをじっと見つめ、なるほどと納得し笑みを浮かべた。一部の人は眉にしわを寄せ、説明文と共に画面の世界に入ろうとしているようだった。この映画の観客は変わっており、モノを目にすることができないか、その輪郭しか見えなかった。視力がなくても映画を観賞できるのだろうか。


 「上手に説明文をつければ、視覚障害者でも光と影の画面を感じられる」この映画を企画した、「上海光影之声バリアフリー映像文化発展センター」の創業者である韓穎さんは「このようなバリアフリーの映画により、視覚障害者は現実社会の媒介を感じ、さらに一般人を自分たちに近づかせることで新たな社会的価値を生み出すことができる」と話した。


 視覚障害者にとって、映画とは単なる娯楽ではなく、この現実社会と交わる接点でもある。韓さんはどの映画を上映するかという問題についてアンケート調査を行った。多くの視覚障害者からは、今流行っているものがいいとの回答を得た。韓さんは「私たちは特殊な集団だが、この社会に再び溶け込みたいと強く願っている」と話した。彼女は24歳で病気にかかり、何も見えなくなった。映画が大好きだった彼女は、自分で集めた人形を触り、社会を感じることしかできなかった。


 視覚障害者は映画により、生の社会生活、時代の発展を感じ、人生を見つめ直すことができる。韓さんは初めてバリアフリーの映画を見た時に、感動のあまり「すべての細胞が震えた」という。映画『海洋天堂』の説明文を書いた時、彼女は涙が止まらなくなった。「より深いものを徐々に感じることができるようになった。映画を通じこの力をより多くの障害者に届け、失明により残念な人生にさせないことが、私の今の使命だ」


 映画を選び、説明文を書いてチェックをし、アフレコをつけて編集し最終審査を行う。バリアフリー映画の誕生は、韓さんが想像していたよりもはるかに複雑だった。特に説明文の作成は映画の内容と合致し、かつ芸術性を持たなければならない。韓さんは「映画の画面の言葉、各シーンの言葉をどのように描写するべきだろうか。セリフとセリフの間の限り有る時間に、いかに正確に画面の説明を入れるべきだろうか。執筆者には文才、それから精神力と忍耐心が必要だ」と説明した。


 バリアフリー映画の誕生は、全社会の参与の成果だ。現在、主な執筆者は民間からのボランティアとなっている。バリアフリー映画の説明文は非常に長く、作成に80時間以上かかる。計108分の映画『僕のワンダフル・ジャーニー』の場合、説明文とセリフの原稿は73枚、計2万4873字で、1カ月以上の時間がかかる。その後さらにプロにボランティアでアフレコをしてもらう。これらのボランティアの忍耐心と精神力が、この事業を支える礎になっている。


 幸い、2012年に上海市の映画館で初めてバリアフリー映画が専門的に上映された。17館が毎年203回上映し、延べ2万人の視覚障害者にサービスを提供している。作品の中には、アリババ・ピクチャーズが配給するアカデミー賞受賞作の『グリーン・ブック』や『僕のワンダフル・ジャーニー』などの有名映画が含まれる。上海は2014年にさらに地域コミュニティにおけるバリアフリー映画上映プロジェクトを開始し、文化サービスを視覚障害者の自宅に届けている。現在まで228カ所で上映されており、2020年までに市内のフルカバーを実現する。


 韓さんは社会からの注目と支援に感謝している。バリアフリー映画普及の貢献により、彼女は今年3月の「中国善人ランキング」に入選した。韓さんは、アリババ・ピクチャーズのような大手がバリアフリー映画をより重視し、すべての映画にバリアフリー版を作ることに期待している。「映画という小さな窓を通じ、社会が障害者への理解を深め、よりやさしく友好的になれれば幸せだ」

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