中国の若者が巻き起こす中国製品ブーム｢国潮｣の未来

文=小林正弘

清華大学法学博士 

Genuineways Law Firm パートナー

　ここ数年、車、スマートフォン、家電など、中国製品の品質やデザインの向上には目を見張るものがある。経済のダイナミックな成長と中国製品の品質向上を背景に、若者の視点から、自国文化のもつ価値の再認識が行われ、中国伝統文化の復興ともいえる機運が高まっている。その象徴が、空前の中国製品ブーム「国潮」といえるだろう。今、中国では品質やデザインに中国的要素を巧く取り込んだ商品が、ファッション、食品、玩具、アニメ、ドラマなどの幅広い分野で展開され、特にZ世代の若者たちの強い支持を集めている。

　Z世代の若者たちは、主に1995年から2009年に生まれた10代~20代のネット世代だ。彼らは、Wechatなど各種スマホアプリを通じて、国内外の多様な情報に触れながら、独自の感性や世界観を形成しており、盲目的に外国製品を支持するのではなく、自分の好みやネット友人サークル内の口コミ情報に基づいて商品を選択する傾向がある。そして、中国企業はこのようなZ世代の消費行動を研究し、そのニーズに合った個性的な商品・デザインの開発や関連ライセンスの取得等に注力している。

　その中でも特に若者の人気を集めているのが漢民族の伝統衣装「漢服」だ。4000年の歴史があり、各時代ごとに形態が異なり、種類も数百種に及ぶと言われ、大変に奥が深い。先日、円明園を訪れた際には、桃の花の下で、漢服に身を包み綺麗なメイクを施した若い女性達が専門のカメラマンを連れて写真撮影に興じていたり、ご当地特製グッズやアイスを購入し、その写真をネットでシェアして楽しむ微笑ましい光景が見られた。中国各地の庭園や古都市などの観光スポットには漢服レンタル店もあり、気軽に漢服を着て写真を撮ることができる。また、私の娘もテレビドラマやアニメの影響で、漢服が好きになり、友達と一緒に漢服を着て公園や街などに遊びに出かけたりしている。

　国潮ブームがきっかけとなり、中国伝統文化を深く探求する若者が増えれば、そこに新しい活力と変化が生まれ、中国文化の新たな魅力として世界に波及していくだろう。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年5月23日