中国の民族区域自治


四、民族自治地方に対する国の支持と援助



「憲法」は「国はあらゆる努力を尽くして、全国各民族の共同の繁栄を促進する」と規定している。「民族区域自治法」は一歩進んで上級国家機関が民族自治地方の発展加速を支持、援助することを法的義務と明確に規定している。中国政府は一連の措置をとって、「憲法」と「民族区域自治法」の規定を貫徹、実行している。

(一)民族自治地方の発展加速を際立った位置におく

国は国民経済と社会発展計画を制定する時、民族自治地方の特徴と必要を十分に尊重、配慮し、全国の発展の全体的配置と総体的要求に基づいて、民族自治地方の発展加速を際立った戦略的位置においている。西部地区と民族自治地方の発展を加速するため、中国政府は2000年から西部大開発戦略を実施しはじめ、全国の5つの自治区、27の自治州および120の自治県(旗)の中の83の自治県(旗)は西部大開発の範囲に組み入れられ、ほかに三つの自治州が国の西部大開発優遇政策を参照、享受している。西部大開発戦略実施5年来、西部地域は陸続と60件の重点プロジェクトを新規建設し、投資総額は約8500億元に達する。これは民族自治地方の経済・社会発展を促す上で重要な役割を発揮した。

(二)民族自治地方のインフラ建設プロジェクトを優先的かつ合理的に配置する

国は民族自治地方にインフラ建設と資源開発を配置する時、投資の比率と政策的銀行ローンの比率を適宜に高めている。民族自治地方の関係資金を必要とする場合は、異なる状況に基づいて関係資金の減免を配慮する。中国政府は第1次5カ年計画(1953年~1957年)から、民族自治地方で一部の重点建設プロジェクト、例えば内蒙古の包頭鋼鉄基地、寧夏の青銅峡水力発電所、新疆の石油探査など、および四川=チベット、青海=チベット、新疆=チベットなどの幹線自動車道路と包頭=蘭州、蘭州=西寧、蘭州=ウルムチの主要鉄道幹線を配置した。1990年代には、寧夏の中衛から陝西の宝鶏までの鉄道、新疆の南疆鉄道、ターチョン空港など多くの大型交通施設を建設した。2000年以来、国は投資して「西部の天然ガスを東部に送る」、「西部の電力を東部に送る」、青海・チベット鉄道など多くの重要なプロジェクトを建設することを通じて、民族自治地方がいちだんと資源の強みを経済の強みに転化するように援助している。

国はチベットのインフラ建設と基礎産業の発展に対し特殊な按配を行っている。1984年から1994年にかけて、国はチベットの43件のプロジェクトに投資し、全国の9省・直轄市がその建設を援助し、投資総額は4億8000万元に達した。1994年から2001年にかけて、中央政府は39億元を直接投資して、30件のプロジェクトを建設し、東部の発達地区は対応支援として9億6000万元を投資して、32件のプロジェクトの建設を援助した。第10次5カ年計画(2001年~2005年)期に、中央政府はチベットに312億元を投資して、117件のプロジェクトを建設している。

1999年から、中国政府は相継いですべての民族自治地方に恩恵が及ぶ「貧困県の県外に延びる道路建設」、「西部の各県を結ぶアスファルト道路工事」、「県と県の間および農村の道路建設」などの交通インフラ建設を大規模に実施し、総額1000億元近くを投資して、22万5000キロの農村と県クラスの道路を新規建設、改造して、一部の少数民族地区の立ち遅れた交通条件を著しく改善した。

(三)民族自治地方への財政支持を強化する

国民経済の発展と財政収入の増加に従って、各クラスの政府は民族自治地方への財政転移支払いを強化している。国は一般的な財政転移支払い、特別財政転移支払い、民族優遇政策の財政転移支払いおよび国の確定したその他の方式で、民族自治地方への資金投入を増やし、民族自治地方の経済発展と社会進歩を促し、発達地区との格差をちくじ縮小している。1955年から、中国政府は「民族地区補助費」を設立し、1964年に「民族地区予備資金」などの特別資金を設立するとともに、少数民族地区の財政予備費の設立比率を高めるなどの優遇政策をとって、民族自治地方が経済を発展させ、人民の生活レベルを高めるのを援助している。1980年から1988年にかけて、中央の財政は内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの5自治区および雲南、貴州、青海など少数民族が比較的に集中している3省に対し、財政10%逓増の定額補助制度を実施した。1994年、国は分税制を主とする財政管理体制改革を実施したが、もとの少数民族地区への補助と特別資金給付政策はすべて保留されている。国は1995年から実行した過渡期の転移支払い規則の中に、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの5自治区と雲南、貴州、青海など少数民族が比較的に集中している3省およびその他の省の少数民族自治州に対し、少数民族地区を対象とする政策的転移支払いの内容を特に増設して、政策的傾斜を実行している。

(四)民族自治地方の生態建設と環境保全を重視する

中国政府の確定した「全国生態環境建設計画」の四つの重点地区と四つの重点プロジェクトはすべて少数民族地区にある。国の「天然林保護プロジェクト」、耕地を森林に戻し、牧場を草地に戻すプロジェクトは主に少数民族地区で実施されている。四川のルォルガイ湿地自然保護区、雲南のシーサンパンナ自然保護区など全国に226カ所ある国家クラス自然保護区のうち、半数近くが少数民族地区にある。このほか、国はまた新疆で「タリム盆地総合整備プロジェクト」、青海の玉樹チベット族自治州で「三江源保護プロジェクト」を実施するとともに、南部のカルスト地区の生態整備を非常に重視している。

(五)特殊な措置をとって民族自治地方の教育事業発展を援助する

国は民族自治地方が9年制義務教育を普及させ、各種の教育事業を発展させるのを援助している。民族自治地方は国が9年制義務教育を基本的に普及させ、青壮年の非識字者を一掃する難関突破計画を実施する重点的地区である。国が実施している「貧困地区義務教育プロジェクト」も、主に西部の少数民族地区を対象としている。同時に、国は民族大学および民族クラス、民族予科を創設して少数民族の学生を募集している。大学と中等専門学校が新入生を募集する時、少数民族の受験生に対し採用の要求と条件を適度に緩め、人口の特に少ない少数民族の受験生に特殊な配慮を与えている。現在、中国に民族大学が13校あり、主に少数民族の人材を育成している。同時に発達地区で民族中学校を開設するか普通中学に民族クラスを設けて、少数民族の生徒を募集している。中国政府は少数民族の高級中堅人材の育成を強化するため、2005年から少数民族地区で修士コースと博士コースの大学院生2500人を試験的に募集することを決定し、2007年までに年間募集人数が5000人、在校生総数が1万5000人の規模に達するように努める。

(六)少数民族の貧困地区に対する扶助を強化する

中国政府が1980年代中期から組織的、計画的な貧困扶助活動を大規模に展開して以来、少数民族と民族地区は終始国の重点的な扶助対象である。1986年に初めて確定された331の国家重点扶助貧困県のうち、民族自治地方の県は総数の42.6%を占める141県ある。国は1994年から「八・七貧困扶助難関突破計画」を実施し始め、その確定した592の国家重点扶助貧困県のうち、民族自治地方の県は総数の43.4%を占める257県ある。2001年から実施し始めた「中国農村貧困扶助開発綱要」は、またも民族地区を重点的な扶助対象に確定し、新たに確定された592の国家貧困扶助開発重点県の中で、民族自治地方(チベットを含まない)の県は総数の45.1%を占める267県に増えた。同時に、チベット全域は国の貧困扶助開発の重点的扶助範囲に組み入れられた。

1990年、国は少数民族の貧困県を重点的に扶助するため、「少数民族貧困地区衣食扶助基金」を設立した。1992年、国は主に民族自治地方の発展と少数民族の生産と生活面の特殊な困難の解決に用いる「少数民族発展資金」を設立した。国は2000年から「辺境地区を繁栄させ、人民を富裕にする行動」を組織、実施し、人口がわりに少ない(10万人以下)22の少数民族に対し特殊な扶助措置をとって、重点的に辺境地区、人口のわりに少ない民族の集まり住む地区のインフラ建設および貧しい大衆の衣食問題を解決している。

(七)民族自治地方の社会事業への投入を増加する

国は民族自治地方の医療衛生事業への投入を強化し、少数民族地区の人民大衆の医療保障レベルを高めている。2003年、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの5自治区に投入した医療衛生特別資金は累計13億7000万元に達し、主に公共医療衛生システム建設、農村の医療衛生インフラ建設、専門病院の建設、農村の合作医療、重大な疾病の予防・治療などに用いられている。

1998年、中国政府はどの村もラジオを聴取し、テレビを視聴できるプロジェクトを実施し始め、中部地区の国家貧困扶助重点県と西部地区に特別補助を与えて、少数民族地区のラジオ・テレビ事業の発展状況を大いに改善した。2003年末までに合計4億5000万元の資金を補助し、11万7345の行政村の7000余万村民のラジオ聴取とテレビ視聴の問題を解決した。そのうち、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットの5自治区と青海、甘粛、雲南、貴州、四川など少数民族がわりに集中している省では、5万4365の行政村がラジオ聴取・テレビ視聴プロジェクトを実施した。2004年、国はまた全国のすでに電力が通じている50世帯以上の自然村で、ラジオを聴取し、テレビを視聴できるプロジェクトの実施を始めたが、2年内にプロジェクトが9万件完成する予定で、そのうち、上述の少数民族地区の建設任務は5万9000件ある。

(八)民族自治地方の対外開放拡大を助成する

国は民族自治地方の生産企業の貿易自主経営権を拡大し、地方の強みをもつ製品の輸出を奨励し、優遇の国境貿易政策を実行している。国は民族自治地方が地理的位置と人文面の強みを生かして、陸地周辺諸国に対する開放と協力を拡大するのを奨励、支持している。1992年、中国政府は辺境沿い開放戦略を実行し始め、13の対外開放都市と241の1類開放港を確立し、14の辺境経済技術協力区を設置したが、そのほとんどは民族自治地方にある。

(九)発達地区と民族自治地方の対応支援を組織する

中国政府は先に富裕になった地区と民族が遅れた地区と民族を援助し、最終的には共に富裕になるように力を入れている。1970年代末から、中国政府は少数民族地区の経済・社会事業発展を援助するため、東部沿海の発達地区と西部地区の対応支援を組織し始めた。1996年は対応支援をさらに明確にし、北京が内蒙古を、山東が新疆を、福建が寧夏を、広東が広西を、全国がチベットをそれぞれ支援することを確定した。1994年から2001年にかけて、15の対応支援省および中央各部・委員会は716件のプロジェクト建設を無償援助し、31億6000万元(中央政府の投資を含まない、以下同じ)の資金を投入した。第10次5カ年計画期に、全国各地がチベットの建設プロジェクト71件を支援し、10億6200万元の資金を無償投入した。

(十)少数民族の生産と生活面の特殊な必要を配慮する

少数民族の風俗習慣を尊重し、各少数民族の生産と生活面の特殊な用品の必要に適応し、それを満たすため、国は特殊な民族貿易と民族特需用品生産供給政策を実行している。国は1963年から民族貿易企業に対し、利潤留保、自己資金、価格補助金を配慮するという「三つの配慮」政策を実行し始めた。1997年6月、国は第9次5カ年計画(1996年~2000年)期に毎年中国人民銀行が民族貿易施設の建設と民族用品の指定生産企業の技術改造に用いる1億元の利息控除貸付けを提供し、県以下(県を含まない)の国有民族貿易企業および末端の供給販売協同組合の付加価値税免除などを含む民族貿易と民族用品生産面の新しい優遇政策を実行し始めた。2003年末現在、全国に少数民族特需用品の指定生産企業が1378社あり、これらの企業は流動資金貸付け利率、技術改良貸付け利子控除、税金減免などの面で優遇政策を享受している。少数民族の日常生活における茶などの特需用品の重要性にかんがみ、辺境販売茶などの少数民族特需用品の安定供給を保証するため、国は第8次5カ年計画(1991年~1995年)期に辺境販売茶備蓄制度を確立した。2002年に、辺境販売茶の原料と製成品の備蓄管理を実行し、備蓄代理部門に貸付けを提供してそれを助成し、中央財政が備蓄に用いる貸付けの利息を負担するなどを内容とする「辺境販売茶備蓄管理規則」を制定した。