民族自治地方の自治機関は「憲法」第3章第5節で定められた地方国家機関の職権を行使し、同時に「憲法」、「民族区域自治法」とその他の法律の規定に基づいて自治権を行使し、地元の実情に基づいて国の法律、政策を貫徹、実行する。上級の国家機関は民族自治地方の自治機関の自治権行使を保障する。
(一)自民族、自地区の内部事務を自主的に管理する
民族自治地方の各民族人民は憲法と法律から与えられた選挙権と被選挙権を行使し、人民代表大会代表の選出を通じて自治機関を結成し、自民族、自地区の内部事務を管理する民主的権利を行使する。中国の155の民族自治地方の人民代表大会常務委員会は、いずれも区域自治を実行する民族の公民が主任あるいは副主任を担任し、自治区主席、自治州州長、自治県県長はいずれも区域自治を実行する少数民族の公民が担任する。
自治機関が自民族、自地区の内部事務を管理する政治的権利を十分に行使するのを確実に保障するため、上級の国家機関と民族自治地方の自治機関はさまざまな措置をとって、少数民族の各クラスの幹部と科学技術、経営管理など各種の専門人材を大量養成している。2003年末現在、少数民族の幹部と各種専門人材の総数は290余万人に達した。
それと同時に、各少数民族はまた自民族の全国人民代表大会代表の選出を通じて、国家事務管理の権利を行使する。第1期全国人民代表大会以来の各期の全国人民代表大会の少数民族代表の比率はいずれも少数民族人口の比率より高いものである。例えば、第10期全国人民代表大会に少数民族の代表が415人おり、代表総数の13.91%を占めているが、人口の比率より5.5ポイント高いものである。どの民族にも全国人民代表大会代表がおり、人口が100万以上の民族にはいずれも全国人民代表大会常務委員会委員がいる。
(二)自治条例と単行条例を制定する権力を享有する
「民族区域自治法」は、「民族自治地方の人民代表大会は一般の地方国家権力機関の権力を享有するほか、当地の民族の政治、経済、文化の特徴に基づいて、自治条例と単行条例を制定する権利もある」と規定している。「中華人民共和国立法法」は、「自治条例と単行条例は当地の民族の特徴に基づいて、法律と行政法規の規定に対し臨時応変の規定を行い」、「自治条例と単行条例は法に依って法律、行政法規、地方的法規に対し臨時応変の規定を行う場合、本自治地方では自治条例と単行条例の規定を適用する」と規定している。「民族区域自治法」はまた、「上級国家機関の決議、決定、命令、指示は、民族自治地方の実情に適しない場合、自治機関は当該上級国家機関に報告し、認可を得て臨時応変に執行するか執行を停止することができる」と規定している。2003年末現在、民族自治地方は合計133の自治条例、384の単行条例を制定し、民族自治地方が地元の実際に基づいて婚姻法、相続法、選挙法、土地法、草原法などの法律に対し臨時応変の規定と補足規定を行ったものが68件ある。
(三)自民族の言語と文字を使用し、発展させる
民族自治地方の自治機関が公務を執行する時、自民族の自治地方の自治条例の規定に基づいて、当地に通用する1種あるいは数種の言語と文字を使用し、同時に数種の通用する言語と文字を使用して職務を遂行する場合は、区域自治を実行する民族の言語と文字を主とすることができる。内蒙古、新疆、チベットなどの民族自治地方は、いずれも自民族の言語と文字の使用、発展と関係ある規定あるいは実施細則を制定、実施している。
新中国の成立後、国は10余りの少数民族が文字を改良、制定するのを援助した。2003年末現在、中国では22の少数民族が28種の自民族文字を使用している。中国では、司法、行政、教育などの分野でも、また国の政治活動と社会活動でも、少数民族の言語と文字が広く使用されている。いまでは、中国共産党全国代表大会、全国人民代表大会、中国人民政治協商会議などの重要な会議はいずれも蒙古、チベット、ウイグル、カザフ、朝鮮、イ、チワンなど各民族の言語・文字で印刷した書類と同時通訳を提供している。
(四)少数民族の宗教信仰の自由を尊重、保障する
中国の少数民族の大衆はほとんど宗教信仰があり、チベット族の大衆がチベット仏教を信仰し、回族、ウイグル族などがイスラム教を信仰するように、多数の大衆がある種の宗教を信仰する民族もある。民族自治地方の自治機関は憲法と法律の規定に基づいて、少数民族の宗教信仰の自由を尊重、保護し、少数民族公民のすべての合法的かつ正常な宗教活動を保障している。2003年末現在、チベット自治区にチベット仏教の活動施設が1700余カ所あり、寺院に僧侶と尼僧が約4万6000人おり、新疆ウイグル自治区にモスクが合計2万3788カ所あり、神職者が2万6000余人おり、寧夏回族自治区にモスクが3500余カ所あり、神職者が約5100人いる。各種の宗教活動は正常に行われ、少数民族大衆の宗教信仰の自由は十分に尊重、保障されている。
(五)自民族の風俗と習慣を保持するか改革する
民族自治地方の自治機関は各少数民族の在来の風俗と習慣に基づいて生活し、社会活動を行う権利と自由を保障している。それには少数民族の生活習慣を尊重し、少数民族の祝祭日の習俗を尊重、配慮し、少数民族の特殊な食品の経営を保障し、少数民族の特に必要な用品の生産と供給を助成、保証し、少数民族の婚姻、葬儀、埋葬の習俗を尊重することなどが含まれている。それと同時に、少数民族が衣食住行、冠婚葬祭の各方面で科学的、文明的で健康な新しい習俗を推し広めることを提唱している。
(六)経済建設事業を自主的に配置、管理し、発展させる
民族自治地方の自治機関は法律の規定と自地方の経済発展の特徴に基づいて、生産関係と経済構造を合理的に調整し、国家計画の導きの下で、自地方の資金、物資とその他の具体的条件に基づいて、地方のインフラ建設プロジェクトを自主的に按配し、自地方に所属する企業、事業体を自主的に管理している。民族自治地方は国の規定に基づいて、対外経済貿易活動を展開することができ、国務院の認可を経て、貿易港を切り開くことができ、民族自治地方は対外経済貿易活動の中で、国の優遇政策を享受する。各民族自治地方はいずれも国の国民経済と社会発展の総体的計画に基づき、実際と結び付けて、経済・社会発展の計画、目標、措置を制定している。
民族自治地方の自治機関は生活環境と生態環境を保護、改善し、汚染とその他の公害を防除している。法律の規定に基づいて、自地方にある草地と森林の所有権と使用権を確定する。法に依って自地方の天然資源を管理、保護し、法律の規定と国の統一的計画に基づいて、自地方が開発できる天然資源を優先的かつ合理的に開発、利用する。例えば、四川省アバ・チベット族・チャン族自治州は世界自然遺産である九寨溝、黄竜の強みを十分に生かして観光資源を観光産業に転換し、保護の中で開発し、開発の中で保護している。
民族自治地方の自治機関は地方の財政を管理する自治権がある。およそ国の財政体制に基づいて民族自治地方に属する財政収入は、いずれも民族自治地方の自治機関によって自主的に按配、使用される。民族自治地方の財政予算の支出は、国の規定に基づいて、予備資金を設立し、予算に占める予備金の比率は一般の地区より高い。民族自治地方の自治機関は財政予算を実行する中で、収入の超過分と支出の節約分の資金の使用を自ら按配する。それと同時に、民族自治地方の自治機関は国の税法を実行する時、国が統一的に審査、認可すべき税金減免プロジェクトを除き、地方の財政収入に属し、納税面から配慮、奨励する必要のある若干のものに対し、減税あるいは免税を実行することができる。
(七)教育、科学技術、文化などの社会事業を自主的に発展させる
民族自治地方の自治機関は国の教育方針に基づき、法律の規定によって、自地方の教育計画、各級各種学校の創設、学制、学校運営形式、教育内容、教育用語、生徒募集方法を決定する。少数民族の放牧地区と経済が困難で居住が分散している少数民族の山岳地帯では、寄宿と奨学金を主とする公立民族小学校と民族中学を創設し、勉学する生徒が義務教育段階の学業を終えるのを保障する。主に少数民族の生徒を募集する学校(クラス)とその他の教育機構は、条件があれば少数民族文字の教科書を採用するとともに、少数民族の言語を使用して授業すべきであり、また異なる状況に基づいて、小学校の低学年あるいは高学年から漢語課程を開設し、全国に通用する標準語と規範化した漢字を推し広める。
民族自治地方の自治機関は民族の形式と民族の特徴を持つ文学、芸術、報道、出版、放送、映画、テレビなどの民族文化事業を自主的に発展させ、関係機構と部門が民族の歴史と文化方面の書籍を収集、整理、翻訳、出版し、民族地区の名所古跡、貴重な文化財とその他の重要な歴史文化遺産を保護し、優秀な民族の伝統的文化を受け継ぎ、発展させるのを組織、支持している。2004年8月末現在、中国に世界文化遺産、自然遺産、文化と自然遺産が29カ所あり、そのうち民族自治地方にある文化遺産はラサのポタラ宮、麗江古城の2カ所あり、自然遺産は九寨溝、黄竜風景名勝区、「三江並流」自然景観など3カ所ある。そのほか、ナーシー族のドンバ古典文献が「世界記憶遺産リスト」に組み入れられている。
民族自治地方の自治機関は自地方の科学技術発展計画を自主的に決定し、科学技術知識を普及させ、また自地方の医療衛生事業の発展計画を自主的に決定し、近代的な医薬と民族の伝統的医薬を発展させている。2003年末現在、全国に民族病院が157カ所あり、そのうちチベット族の病院が55カ所、蒙古族の病院が41カ所、ウイグル族の病院が35カ所、タイ族の病院が1ヵ所、その他の民族の病院が25カ所あり、ベッドは5829床ある。
民族自治地方の自治機関はスポーツ事業を自主的に発展させ、民族の伝統的スポーツ活動を展開している。2003年末までに、中国は全国的な少数民族伝統的スポーツ大会を7回催した。2003年、寧夏回族自治区で催された第7回全国少数民族伝統的スポーツ大会では、14種目の競技と125種目のエキジビションが行われた。