チベットが平和解放されて以来、現代化の発展につれ、チベット族の伝統的なすぐれたチベット文化が継承、保護、発揚されただけでなく、現代科学教育や報道文化も全面的な発展をとげている。
教育事業が歴史的な飛躍をとげた。旧チベットには現代的な意味での学校はひとつもなく、教育を受けられるのはすべて貴族の子弟に限られ、大多数の勤労大衆は教育を受ける機会がまったくなかった。平和解放の後、国は強力な措置をとり、チベットの教育事業を発展させた。1952年から2007年までに、国は合計225億6200万元(その中ここ5年間の投下額は139億8900万元)を投下し、各省・市もチベットの教育事業を人的、物的および財政面から強力に支援し、さらに全国から7000余人の教師を派遣し、チベットの教育の発展を力添えしている。1985年から、国はチベットの義務教育段階の農民・牧畜民の児童に対し「食費、寮費、学習費用免除」の措置をとり、また2007年には、小、中、高校生の学費、雑費も全面的に免除し、チベットは全国で最初の無料義務教育実施地域になった。近年、学校の施設と学校運営条件に対する国の資金投下は増え続け、2000年から2006年までに18億5000万元投下し、校舎150万平方メートルを新築、改築、増築した。2004年から2007年までにコンピュータ教室133、衛星放送受信ステーション983、教育資源システム1763が設置され、チベットの大部分の小中高校は現代化の教学手段を備えるようになった。チベットにはすでに幼児教育、小中学校義務教育、中等教育、大学教育、職業教育、成人教育、遠隔教育、通信教育、特殊教育などを含む比較的完備した現代教育システムが形成されている。
教育レベルと文化的資質がいちじるしく向上した。現在、チベットには小学校884校、中学校94校、教育施設1237カ所があり、在校生は54万7000人である。非識字率は旧チベットの95%から現在の4.76%に下がった。適齢児童の入学率は旧チベットの2%から現在の98.2%に上昇し、中学校の入学率は90.97%に達し、9年制義務教育は基本的に普及された。チベットには高校14校、中学校・高校教育がともにある学校が9校あり、高校段階の入学率は42.96%である。中等職業学校は7校あり、2007年の在校生は1万9000人である。大学は6校あり、在校生は2万7000人で、入学率は17.4%である。現在、大学、高校・中学校、小学校の専任教師は3万652人おり、そのうちチベット族の人たちとその他の少数民族の人たちが80%以上を占めている。全国には33のチベットクラスのある学校があり、内訳は、中学校19校、高校12校、師範学校2校で、その他にチベット族の編入生を募集する内地の重点高校が53校もある。これらの学校は2008年6月末までに、チベット族の学生3万4650人を募集し、入学させ、在校生は1万7100人に達している。中国の他の地域のチベットクラスの学生の大学入試合格率と進学率は90%以上に達している。一方、中国の他の地域の90余の大学がチベット族の学生を募集しており、すでに卒業生は1万5000人に達し、在校生は5200余人である。一連の博士、修士、科学者、エンジニアなどの人材が頭角を現わし、チベットの発展を推進する新鋭になっている。
現代科学技術は無から有に、急速に発展している。国は多項目の政策法規を制定し、多くの資金を投入し、チベットの科学技術の発展を促進している。現在、チベットには科学研究機構42カ所、各種学術団体56、農業・牧畜業技術の普及機構140余、科学技術モデル基地とモデルスポット37、重点実験室5、工学技術研究センター3カ所がある。現在、各種専門技術者が4万2525人おり、そのうち、チベット族とその他の少数民族の技術者が74.04%を占めている。2000年から2007年までに限っても、チベットは613の重点科学研究プロジェクトを完成させ、そのうち国家レベルの重点プロジェクトは148項目に及ぶ。特に宇宙放射線観測、高原大気研究、青海・チベット高原深層探測、土石流などの地質災害防除、地熱と太陽光エネルギーなどのクリーンエネルギーの開発利用、高原医学研究などの分野で、チベットの科学研究成果は非常に際立っている。中には全国ないし世界のトップレベルにランクされる成果もある。2007年現在、チベットの科学技術が農業・牧畜業の経済成長に対して果たした貢献率は36%に達し、農民・牧畜民はすでに科学技術の発展による最大の受益者になっている。
チベット学の研究事業は空前の発展を見せている。旧チベットでは、チベット学研究の範囲は、主に大五明(すなわち工巧明、医方明、声明、因明、内明)と小五明(詩詞、語彙、音韻、戯曲、暦法)で、重点分野は宗教であり、総人口のごく少数を占める貴族と上層僧侶のためのものであった。現在、チベット学研究はすでに国の社会科学研究の重要な一学科となり、研究対象はチベット族およびチベット社会の各分野にわたり、国とチベットのすべての人びとのための重要な事業になっている。現在、全国には中国チベット学研究センターなど50余のチベット学研究機構があり、3000人近いチベット学専門家・学者がいる。チベット研究は比較的整った学科体系が形成されており、国際チベット学界でも非常に重要な地位を占めている。おおまかな統計データによると、国内ではすでに『チベット通史――松石宝串』、『歴史が作った統一体』、『敦煌土蕃歴史文書』、『元代漢蔵芸術交流』などの研究書数百点を編集、出版し、また『新旧唐書・チベット語史料』、『明代実録・チベット族史料』、『清代実録・チベット族史料』などチベット関連漢文文献叢書400余種を編集、出版し、『薩班・貢嘎堅贊全集』(サキャ・パンディタ・クンガ・ギェルツェン全集)、『敦巴西饒全集』(トンパ・シェンラップ全集)など70余部のチベット語古籍文献を整理、出版し、チベット学の研究論文2万4000余篇を各種の新聞・雑誌に発表した。
マスメディア事業がめざましい発展をとげている。旧チベットには現代的意味での出版業はなく、経典を印刷する印経院が数カ所あっただけだった。現在、チベットには図書出版社2社、オーディオビジュアル(AV)出版社2社があり、自治区全域に及ぶ出版発行体制が形成され、各種チベット語・漢語図書1万1300余種、2億5000万冊を出版している。そのうちチベット語の図書は3000余種で、『四部医典要注』、『新編チベット医薬学』、『チベット百科全書』など200余種の図書は全国的な奨励の対象となり、チベット語の図書は5年連続で20%の伸び率を保っている。チベット音像出版社は1989年の成立以来、前後して『今日のチベット』、『朗瑪堆諧』(チベット舞踊)、『チベット軽音楽』、『蔵西(チベット西部)極地』など各種AV電子出版物100余種を出版・発行し、AV製品33万余本を販売している。最近5年来、AV電子出版は連続13%の伸び率を保っている。現在、チベットには各種印刷工場35、電子組版、平版オフセット印刷、電子色分解、多色印刷などの新しい技術が広く使われている。図書発行ネットワークは自治区全域をカバーしている。2002年から2007年だけで1008万元の資金を投下し、35カ所の新華書店を新築・増改築し、新華書店の総数は67カ所に達する。発行所が272あり、年間発行図書は20余万種で、発行総数は4000余万冊に達する。1800万元を投資して新築された自治区出版物物流配送センターは、1日に図書、新聞・雑誌、AV製品、電子出版物など5万余種56万冊(本)を配送している。
新聞・雑誌に関しては、旧チベットでは清朝末期にラサで創刊された石版刷りのチベット語の『チベット白話報』しかなく、しかも印刷部数は百部足らずであった。現在、チベットで公式に発行されている新聞・雑誌はすでに57種に達し、そのうち、新聞23種、定期刊行物34種で、7つの地区・市にはいずれもチベット語と漢語の2種類の新聞がある。2007年には新聞5550万部、定期刊行物267万冊を出版し、いずれも5年連続で2ケタの伸びを保っている。『チベット研究』、『チベット観光』などの定期刊行物は何回も国家定期刊行物推せん賞、重点社会科学定期刊行物賞などを受賞している。
ラジオ・映画・テレビ事業は旧チベットでは空白の状態であった。チベットの平和解放以来の50余年間に、中央とチベット地方財政がチベットのラジオ・映画・テレビの発展のために投下した資金は12億元に達し、中央の関係部門や他の省・市は技術者や物資器材などの面で大きな援助を提供し、またチベットのために多くの専門技術者を養成した。2007年までに、チベットはラジオ・テレビ局9、中波(AM)中継局39、100ワット以上の周波数変調(FM)ラジオ放送中継局76、50ワット以上のテレビ中継局80、県クラス以上のケーブル中継局、郷村クラスのラジオ・テレビステーション9111があり、ラジオとテレビのカバー率はそれぞれ87.8%と88.9%に達し、すべての行政村でラジオ・テレビが見られる。現在、チベット人民放送局には4チャンネルがあり、日に79時間55分放送している。チベットテレビ局には3チャンネルあり、日に59時間30分放映している。チベット有線ネットワーク伝送センターは50のアナログ信号ケーブルテレビ番組、90のデジタルテレビ番組、11のラジオ番組を送受信できる。各地区・市と一部分の県(市)も相次いでケーブルテレビのネットワークを整備し、自治区全域をカバーするラジオ・テレビのネットワークが初歩的に形成された。現在のチベットには映画放映機構559、管理機構82、農業・牧畜区放映班472、放映ステーション7918カ所があり、映画放映はすでに98%の行政村をカバーし、自治区全域の農民・牧畜民が毎月見られる映画は一人当たり1.6回に達している。
ネット文化の建設はいままさに発展の最中にある。インターネットや携帯電話などの新しい媒体が爆発的な発展をとげ、普及率と使用レベルが絶えず上昇している。チベットのインターネットは1997年から始まり、1999年にはブロードバンドによるアクセスが可能となり、2000年には「チベットの窓」という最初のウェブサイトが創設された。2007年末には、すでにインターネットウェブサイト760、インターネットユーザー8万2858戸、利用者は約20万人に達し、総人口の6%を占めている。チベットの移動電話業務は1993年8月から始まった。当初の交換機の容量は4500戸分しかなく、移動基地局は1つしかなかったが、現在の移動基地局は8300余に達し、携帯電話ユーザーは80万戸に達した。新媒体はすでにチベットの人たちがニュースを知り、情報や知識、レジャーや娯楽情報を入手する重要なルートとなり、人びとの精神文化生活を豊かにし、チベットと世界の距離を縮めた。 |