中国の気候変動政策と行動

五、気候変動に適応するための政策と行動


中国は農業、森林やその他の自然生態系、水資源などの分野、海岸帯、沿海地域などの脆弱な地区で、気候変動に適応するための政策と行動を積極的に実施し、積極的な成果をとげた。

農業

国は『農業法』、『草原法』、『漁業法』、『土地管理法』、『突発的重大動物疫情応急条例』、『草原防火条例』などの法律、法規を制定、実施し、農業分野の気候変動に適応するための政策、法規システムを確立し完全なものにしている。農業インフラの建設を強化し、耕地水利基本建設を展開し、農業灌漑面積を拡大し、灌漑効率と耕地全体の排水・灌漑能力を高め、畑作の節水技術を推し広めることにより、農業の防災・抗災、減災と総合的生産能力を増強している。「種子プロジェクト」を実施し、生産量が高く、品質が優れ、干ばつ、冠水、高温、病虫害などに強い抵抗力のある品種を育成する。

中国は優良品種の普及に力を入れ、優良品種のカバー率を高めている。重大な動物疫病の予防・抑制を強化し、動物の防疫システムを確立し完全なものにし、動物疫病監視測定と警告を強化し、動物疫病の予防と抑制能力を高めている。草原の退牧還草、牧草地の囲い込みによる植生の回復、人工草原の建設などを展開し、草原の防火用インフラ建設を強化し、草原の生態環境を保護し整備している。水生生物の育成と保護活動を展開し、水生生物資源と水生生態環境を保護している。

森林などの自然生態系

多年来、中国は『森林法』、『野生動物保護法』、『水土保持法』、『防砂治砂法』、『退耕還林条例』、『森林防火条例』、『森林病虫害防除条例』などの関係法律法規を制定・実施し、森林やその他の自然生態系の保護に力を入れている。国は自然保護区、湿地、天然林保護などの関係法律法規を積極的に制定し、全国の生態環境建設と保護計画の全面的な実施を推し進めている。

中国は林地、林木、野生動植物資源の保護管理をさらに強化し、天然林の保護、退耕還林(耕地を林に戻す) 、退耕還草、野生動植物自然保護区、湿地保護プロジェクトに引き続き力を入れ、森林の持続可能な経営と管理を推し進め、水土保持生態建設を展開している。国の森林資源と生態状況に対する総合的モニタリング・測定システムを確立し、健全化している。森林火災、病虫害の評価システム、緊急対応案および専門チームの育成を強化し、全国の森林防火、病虫害防除中長期計画を実施し、森林火災、病虫害の予防と抑制能力を高めている。生物種と生息地を整備、回復、拡大し、絶滅危惧種およびその生存に必要な生態系に対する保護を強化している。生態脆弱地域、生態系機能の回復と再建に力を入れている。

水資源

中国は『水法』、『洪水防止法』、『川筋管理条例』などの法律法規を制定しまた実施し、全国で重要な大河川流域の洪水防止計画などの水利計画を編制し、国情にかなった水利政策法規システムと水利計画システムを初歩的に確立し、大河川流域の洪水防止・減災システム、水資源の合理的な配置システムと水資源保護システムを初歩的に構築した。同時に、水土流失の総合管理を強力に推し進め、2007年末現在、全国で合計水土面積約100万平方キロを初歩的に整備し、水土資源を効果的に保護し、生態環境を改善した。

中国は全国の水資源総合計画、流域の総合計画などの編制作業を加速し、主要大河川流域水量の分配案を制定し、南水北調(南部の水を北部に引く)などの流域を越えた引水プロジェクトの実施を加速させ、水資源の配置構造を最適化し、特別な干害状況にある地域の応急給水保障能力を高めている。水資源の統一管理と統一調達を強化し、国家の初期水権分配制度、水権移転制度および水資源の節約と保護制度を策定した。大河川の洪水予防プロジェクトの建設と山津波災害の防止システムの建設に力を入れ、ダム、川筋、堤防、遊水区を主とする大河川の洪水予防・減災プロジェクトシステムと管理措置を主とする山津波災害の防止システムを基本的に構築し、洪水を防ぎ、干害と闘う国家の指揮システムを完全なものにし、洪水リスク管理制度を確立し、洪水・冠水による災害を防ぐ能力を高めている。生態が深刻に悪化した流域に対し、地下水汲み上げ制限を実施し、地下水の過度の汲み上げを大いに制限し、積極的な措置をとって修復し保護している。気候変動が中国の水資源に与える影響についての研究をさらに強化し、大気中の水、地表水、土壌水と地下水の転換メカニズムと最適化・配置技術の研究を強化し、汚水の再生利用技術、海水淡水化技術の研究、開発と普及に取り組んでいる。

海岸帯および沿海地域

『海洋環境保護法』、『海域使用管理法』および『海気相互作用業務体系発展計画(要綱)』などによって、国家は海洋分野が気候変動に対応する業務体系の建設目標と内容を決め、総合管理の政策決定メカニズムと協調メカニズムを確立し、気候変動によるマイナス影響を軽減し、それに適応するように努めている。海岸帯と沿海地域が気候変動に適応する能力の建設を強化している。海気相互作用の調査研究を展開し、海気相互作用の認識を深め、海洋環境の立体的観測ネットワークを初歩的に形成し、海洋災害の抑制能力を高めた。

海洋災害の応急対策予備案システムとそれに応じるメカニズムをさらに確立し健全にすることにより、中国は沿海地域の海洋災害の防御能力を全面的に高めている。気候変動に対応した海洋分野の観測とサービスのネットワークを整備し、海洋分野の気候変動に対する分析評価と予測を展開している。海水面の観測予測分析評価システムを確立し、海水面の変化の分析評価とアセスメントをさらに進展させる。近海と海岸帯の生態系が気候変動に抵抗、適応する能力を高め、海洋生態系の保護、回復技術の開発および普及強化を推し進め、海洋保護区を建設し管理を強化し、沿海湿地と海洋生態環境の修復活動を展開し、典型的な海洋生態回復モデル区を確立し、沿海防護林を力を入れて造林している。海岸帯の管理を強化し、沿海都市と重大プロジェクト施設の災害防護基準を高め、沿海地域の地下水の過度の汲み上げと地盤沈下を抑制している。河川とダムから水を引いて淡水で塩分を薄めるなどの措置をとり、河口での海水逆流と塩潮の遡行に対応している。

そのほかの分野

中国は極端な気候事件に対するモニタリング測定・警報能力の建設を強化し、天候およびそれに由来する災害と、二次災害に対するふさわしい応急処置メカニズムを基本的に確立した。強い台風、地域的な豪雨・洪水・冠水などの極端な天候と気候事件に対する予防が大きく進展をとげ、天候と気候変動の総合観測システムを初歩的に確立した。

気候変動によって引き起こされる感染症と流行地区の拡大に対し、国家は監視測定、抑制のネットワークをさらに強化し、健康保障システムを確立し完全なものにする。都市の洪水予防と冠水排出計画を制定し、都市の洪水予防プロジェクトの設計基準を高めた。重大なプロジェクトの設計、建設、運行において気候変動要素を考慮し、それに応じた新たな基準を制定し、将来の気候変動の影響への適応をはかっている。