新疆の発展と進歩

四、民族文化が保護されている


歴史上、新疆の各民族は多種多様な文化を創り出し、中華文化の発展のために独特の貢献を行ってきた。地理的には「シルクロード」の要衝に位置したため、新疆の文化は顕著な地域性と民族性の特徴を持つことになった。新疆の各地区、各民族の文化は蓄積が深く、文化の形態が多様で、民間文芸が豊かである。多年来、国は各少数民族の文化遺産に対して収集や整理、翻訳、出版を計画的に組織し、少数民族の名所旧跡、貴重な文化、そのほかの重要な歴史文化遺産を保護し、政府主導、学術的なサポート、社会的参加という保護の枠組みを作り上げ、各民族のすぐれた文化遺産を継承し発揚させている。

少数民族の音楽・舞踊は新疆の民族文化においてきわめて重要な地位を占めている。新中国成立以来、新疆は各クラスの芸術団を設立し、芸術学校、芸術研究所などの機構を設置し、あまたの民間音楽・舞踊作品を緊急保護・収集・整理・保護し、次々に新しい世代のアーチストを養成してきた。それによって伝統的な民間音楽・舞踊のすぐれた後継ぎが育ち、たえず発展してきた。20世紀90年代には相次ぎ『中国民族民間器楽曲集成・新疆巻』『中国戯曲音楽集成・新疆巻』『中国民間歌曲集成・新疆巻』『中国民族民間舞踊集成・新疆巻』などの集成シリーズを編纂、出版した。それにより新疆各民族のすぐれた伝統的音楽・舞踊芸術の各ジャンルは音声、楽譜、図録、文字、映像などの形で全面的かつ集中的に保存されることになった。

ウイグルの「十二木卡姆(ムカム)」は、歌、舞踊、音楽が一体化したウイグルの古典音楽組曲である。ウイグル族の「音楽の母」と称えられ、中華民族の音楽文化の至宝でもある。新中国成立の直前、「十二木卡姆」はすでに絶滅に瀕していた。新中国が成立してまもなく、当時の新疆省人民政府は1951年8月に「十二木卡姆」を重点的に保護すべき芸術ジャンルとして定め、木卡姆芸術の全面的な調査、収集、整理に力を入れ、さらに1955年に録音、採譜、歌詞の整理などを完成させ、1960年に「十二木卡姆」の楽譜を出版した。それ以後、「十二木卡姆」は口頭伝承から文字伝承への転換を成しとげた。20世紀80年代以来、自治区は新疆木卡姆の研究機構と芸術団を設立し、木卡姆を主とするウイグルの古典音楽と民間歌舞を専門的に収集、整理、研究、公演させ、木卡姆に対する救出、保護、発揚をいちだんと推し進めた。2003年、新疆ウイグル木卡姆は「中国民族民間文化保護プロジェクト」の第1陣の試行項目に指定された。2005年、「中国新疆ウイグル木卡姆芸術」はユネスコによって「人類の口承および無形遺産代表作」リストに収録された。「六十二闊恩爾」(62の組曲からなる美しい楽曲の意味)は、「簣」(器楽曲)を主として民謡、舞踊、弾き語りなどのさまざまな芸術形式を組合わせた総合芸術であり、カザフ族の最も代表的ですぐれた民間伝統文化である。20世紀90年代以来、国は専門機構を設置し、『阿克鵠闊恩爾』(ハクチョウ組曲)を収集、整理、出版した。

新疆の民族民間文学資源は豊かである。多年来、国の大きなサポートの下で、自治区政府は民族民間文学作品に対する保護の緊急措置をとったり計画的に保護を組織し、次々にウイグル族、カザフ族、蒙古族、キルギス族、タジク族、シボ族、ウズベク族などの多くの民謡歌詞、神話・伝説、民間の笑い話、民間故事、寓話、ことわざなどのさまざまな民間文学遺産を収集、整理、翻訳、出版した。また『瑪納斯(マナス)』、『江格爾(ギャンゲル)』、『格斯爾』(チベット族地区では『格薩爾<ゲサル>』と呼ばれる)などの有名な少数民族英雄叙事詩の収集、整理、翻訳、出版、研究などで重要な成果をあげた。『突厥語大辞典』などの一連の少数民族のすぐれた歴史文化遺産が効果的に保護された。ウイグル族の古典文学『熱比亜と賽丁』、『帕爾哈特と西琳』、カザフ族の民間の長編詩『薩里哈と薩曼』などが相次いで整理され、また漢語に翻訳され出版された。『中国民間文学集成・新疆巻』の編纂作業が完了した。

新疆の少数民族の古典籍は、文字の種類が多く、分布が広く、中華民族の伝統文化遺産の重要な構成要素である。20世紀80年代初期、自治区少数民族古典籍収集・整理・出版計画指導グループおよび弁公室が設置され、全自治区の4つの自治州、8つの地区、1つの地区クラスの市、一部の県に関係機構が相次いで設置された。それ以後全自治区では少数民族の古典籍の緊急保護、収集、整理、出版が行われた。2008年現在、自治区少数民族古典籍整理弁公室は合わせて2万518冊(件)の少数民族の古典籍を収集し、リストに登録し、そのうち数百種を整理、出版した。その中には、ウイグル族の不朽の名作『福楽智慧』の3種類の写本の影印本、カザフ族の有名な医学書『医薬志』、シボ族の薩満教(シャーマニズム)の経典『シャーマン神歌』などがある。

新疆の無形文化遺産の緊急保護措置をとり、それをよりよく整理、研究、保護するために、自治区は「新疆無形文化遺産保護研究センター」を設置し、また無形文化遺産保護プロジェクト管理規則と無形文化遺産代表作の申請評定暫定規則を制定し、公布した。2006年と2008年にはキルギス族の叙事詩『瑪納斯』、蒙古族の叙事詩『江格爾』、カザフ族の『阿依特斯』など63の新疆無形文化遺産項目がそれぞれ第1陣、第2陣の国家クラス無形文化遺産リストに登録された。

新疆の文化財・古跡・遺跡はきわめて豊富である。2008年現在、新疆で発見された文化財は4000カ所以上あり、そのうち、全国重点文物保護単位(文化財保護部門)は58カ所ある。国は新疆の文化財・古跡に対する保護と修繕を重視し、文化財保護に関する法律の制定、考古学調査・発掘、文化財の補修・保護、博物の陳列などにおいて大きな進展をとげた。「保護を主とし、緊急保護を第一とする」方針の指導の下で、自治区は重点文化財に対してかなり大規模な緊急補修を行った。中には、克孜爾(キジル)千仏洞、庫木吐拉(クムトラ)千仏洞、森姆賽木千仏洞、柏孜克里克(ベゼクリク)千仏洞、高昌故城、哈密(ハミ)回王墓、伊犁(イリ)将軍府などがある。ウイグル族、蒙古族、回族、シボ族などの少数民族のすぐれた歴史文化遺産を代表する多くの有名な建築、例えば、喀什(カシュガル)のアパク・ホージャ・マザール、霍城(コルガス)禿黒魯のチムール汗マザール、昭蘇(モンゴルキュレ)のラマ廟、和静の蒙古王爺府、且末(チェルチェン)の托乎拉克(トグラクムラ)荘園などが適切に補修され、保護された。2009年、自治区は「シルクロード(新疆区間)重点文化財緊急保護プロジェクト」をスタートさせ、必要な財力と資材を集め、新疆の古代「シルクロード」幹線道路上の大型遺跡保護区と重点文物保護単位に対し、地域ごとに総合的な緊急補修や保護を行った。

ここ数年来、国は喀什(カシュガル)などの有名な歴史文化都市を保護する面で大きな進展をとげた。喀什は歴史上では「シルクロード」の重要都市であり、都市の様相と地域文化が濃厚な民族特色を持っている。しかし、喀什は地震多発地域にあり、旧市街地にあるほとんどの家屋は古く簡素で、耐震性と防火性が非常に後れている。人びとの生命と財産の安全を確保し、住民の居住条件を改善し、喀什の旧市街地の家屋の耐震性を補強し、同時に喀什古城の文化的な景観をよりよく保護するために、2009年2月、国は喀什の旧市街地の危険老朽家屋の改造・総合整備計画を正式プロジェクトとして立ち上げ、国の歴史文化名城の要求に基づき保護に重点を置いた補修を行い、30億元が投入される計画である。古城の改造においては昔の景観の保護を重視し、改造後の建築スタイルも元の建築や文化の特色を保つことになる。

各民族の文化芸術は継承されながら発展をとげている。ウイグル族の「麦西来甫」(歌と踊りからなる民間芸能)、カザフ族の「阿依特斯」(民族楽器のドンブラの弾き語り)、キルギス族の「庫姆孜琴(少数民族の民間楽器)弾き語り会」、蒙古族の「ナダム大会」、シボ族の「西遷祭」(清代に国境警備のために新疆地区へ移住したことを祭る)、漢族の「元宵灯会」(旧暦1月15日の元宵節に行われるちょうちん祭り)などの民族伝統の文芸イベントが幅広く行われている。また時代の大きな変化を物語る、濃厚な民族特色と地域特色を持つすぐれた芝居が、相次いで舞台で上演されている。例えば、新劇『蘊倩姆』、ウイグル劇『艾里甫と賽乃姆』、曲芸『達瓦孜』(空中綱渡り)、カザフ族の『阿依特斯』(曲芸)、キルギス族の「瑪納斯奇」(民族民間史詩「瑪納斯」の伝承者と創作者をさす)が弾き語る『瑪納斯』などがある。新世紀に入って以降、大型民族歌舞『我們新疆好地方』(われわれの新疆はいいところだ)、『天山歓歌』(天山の楽しい歌声)、『喀什噶爾』(カシュガル)など20以上のすぐれた作品が前後して国家クラスの奨励を獲得した。

各少数民族の言語を時代の発展に合わせるために、国は「新疆ウイグル自治区民族言語文字工作委員会」と各クラスの民族言語文字研究機構を設置し、少数民族の言語文字の研究・管理の規範化、基準化、科学化に努めている。政府のサポートの下で、「博格達(ボゴダ)ウイグル語・カザフ語・キルギス語組版(DTP)システム」、「シボ語、満州語の文字処理と軽印刷システム」、多言語画像文字組版システムである「新疆2000」、「アラビア語および多言語組版システム」などのソフトがすでに開発され、ソフトの基準と開発方式を制定することによって、各種の民族文字ソフトのコード、キーボードのレイアウト、入力法などのための基準ができた。