『憲法の一部内容を改正することに関する中国共産党中央委員会の提案』は現行憲法の一部内容に対する4回目の改正を行うものである。今回の憲法改正は着手から全国人民代表大会への審議請求の提出まで、まるまる一年間をかけたもので、改正作業には主に次の六つの特徴がある。 一、 共産党の指導を堅持すること 中国共産党は中国の労働者階級の前衛であり、同時に中国人民と中華民族の前衛でもあり、中国の特色をもつ社会主義事業を指導する中核である。党の性質とその置かれている政権党としての地位によって、憲法改正の仕事は党の指導を堅持してこそ、はじめて正しい政治的方向を把握することができることを決定づけている。これまでの3回の憲法改正と同じように、今回の憲法改正は改正作業の着手から改正提案が形成されるに至るまで、ずっと中国共産党中央委員会の直接指導のもとで行われた。党中央は今回の憲法改正の全般的な原則と作業の方針を決め、各方面からの意見聴取の仕事を組織、主宰するとともに、広報活動を通じて党の組織と党員たちにその役割を発揮させ、厳格に法的手続きによって事を運ぶことを堅持し、憲法改正作業の順調な完成を保証した。憲法改正過程のすべての環においても政権党の地位を具現し、憲法改正活動に対する指導的役割を示した。 二、 民主主義を十分に発揚させること 民主主義を十分に発揚させることは中国共産党が憲法改正活動を指導した時に堅持する原則の一つである。この点は今回の憲法改正の過程においてさらに十分に具現された。一、憲法改正の具体的な内容について、あらかじめ改正案を打ち出したり、範囲を決めたりすることはせず、まず下から上へと広く意見を求めたということである。中国共産党中央憲法改正グループは中国南部および北部地域で座談会を何回も開き、地方、諸部門と一部企業の責任者、法学者及び経済学者の憲法改正に対する意見を直接聴取した。彼らは各地方、各部門、各方面による意見と提案に対し真剣に検討を行うことを基礎に踏まえて、憲法改正初案を作成し、さらにより大きな範囲で意見を求めた。胡錦涛総書記はみずから座談会を開催、主宰し、各民主党派中央、全国工商業者連合会の責任者、無党派民主人士の意見を求めた。中国共産党中央憲法改正グループの責任者は一部の理論活動家、法学者、経済学者の出席する座談会を催し、彼らの意見を聴取した。二回の下から上への意見の徴集と繰り返した検討を経て、改正案を形成した。二、厳格に党内の民主主義の手続きにのっとって事を運んだということである。『憲法の一部内容を改正することに関する中国共産党中央委員会の提案』は中央政治局常務委員会から中央政治局に至るまで、最終的には中国共産党第16期中央委員会第3回総会で採択されてから、党中央によって全国人民代表大会常務委員会に提出されたのである。第10期全国人民代表大会常務委員会第6回会議は『提案』に対し熱をこめた討議を行い、常務委員会全員の共通の意見に基づいて憲法改正案(草案)を形成するとともに、全員一致でそれを採択し、第10期全国人民代表大会第2回会議に提出して審議を求めることにした。事実が示しているように、今回の憲法改正の過程は民主を十分に発揚させたものであり、憲法改正の内容は中国共産党の主張と人民の意志との統一を具現したものである。 三、 法定のプロセスに則ること 現行憲法の第64条では、「憲法の改正は全国人民代表大会常務委員会或いは五分の一以上の全国人民代表大会代表が提案を行うとともに、全国人民代表大会代表全員の三分の二以上の多数で採択する」と規定されている。この規定は、憲法の改正は手続きにおいて一般的な法律改正と違い、国の根本的な法律としての憲法の崇高な地位と憲法改正の厳粛性を具現したものである。今回の憲法改正はこれまでの3回の憲法改正と同じように、いずれもこの法定プロセスにのっとって行ったものであり、厳格に法律によって事を運ぶ手本である。 四、 社会発展の客観的な現実から出発すること 現行憲法に改正の必要があるかどうか、およびどの内容を改正するかはすべ て客観的な状況発展の必要から出発しなければならず、現段階の国情によって決まることである。中国は1999年3月の第3回の憲法改正以来、客観的な現実にはすでに大きな変化が生じ、新しい情勢は現行の憲法が時代とともに進み、それによって国の根本的な法律としての役割をよりよく発揮させることを要求している。そのため、憲法をいま一度改正する必要がある。今回の憲法改正の内容はいずれも客観的な現実の要求するところであり、社会主義事業の発展に順応する上で必要なものである。例えば、マルクス主義と現今の中国の現実とが結びついて生まれた「三つの代表」という重要な思想は、現実の中ですでに全中国人民のともに奮闘する思想的基礎となり、国の政治と社会生活におけるその指導的地位を憲法の中で確立するのは理の当然である、ということがそれである。 また例えば、社会の変革につれて、新たな社会階層が現れ、彼らはいずれも社会主義事業の建設者であり、憲法の統一戦線に関する叙述の中で評価されるべきであり、これは新しい時期における統一戦線の実情に合致し、最も広く、最も十分にすべての積極的な要素を引き出すことにプラスとなるものである。さらに例えば、中国の改革開放以来、経済の発展と人民大衆の生活の向上につれて、実生活の中で公民が擁している個人財産が軒並みにいくらか増えたため、大衆は憲法が個人の私有財産にさらに明確に保護を与えることを切に要求しているなどもそれである。要するに、今回の憲法改正は全く現実から出発して社会の発展に順応し、それを押し進めるためのものである。 五、 憲法の適応性と安定性を堅持すること 中国の憲法は現実を反映し、現実を指導するものなので、客観的な現実に対する適応性を持つものである。同時にまた、客観的な現実はつねに変化しているものであるが、憲法は相対的な安定性を保たなければならず、憲法の安定は国の安定の基礎であることを見て取らなければならない。当面、中国の改革開放は全面的に深化し、政治、経済、文化など社会生活の諸分野にすべて大きな変化が生じた。今回の憲法改正はほかでもなく、新たな状況、あらたな変化に順応するためであり、特に第16回党大会で決められた重要な理論的観点と重要な方針・政策を憲法に盛り込まなければならない。このような改正はとりもなおさず憲法の適応性を増強するためである。いま一面においては、今回の憲法改正は憲法の一部内容のみに対する改正であり、大がかりな改正ではなく、改正しても良く、改正しなくても良い内容はみな改正せず、改正しなくてはならない内容のみを改正するのである。こうしてこそ、はじめて憲法の安定性を保つことができるのである。現行の憲法はまもなく行われる今回の改正を含み、何回も改正されたとはいえ、憲法の根本的な原則と制度は別に改められることはなく、例えば社会主義の道を堅持する根本的な方向、中国の特色を持つ社会主義を建設する根本的な任務は従来から変わることなく、人民民主独裁、人民代表大会の制度、公有制を主体とする原則、民族区域自治制度は従来から変わってはいない、などがそれである。事実が示しているように、中国の憲法は安定したものであり、同時に時代とともに進み、絶えず完全なものにし、客観的な現実の必要に順応できるものである。 六、 人民の根本的な利益を出発点と立脚点とすること 人民の根本的な利益は、憲法を改正するかどうか、何を改正するか、どのように改正するかということを決定する基本的な準則である。今回の憲法改正は、憲法の人民性を十分に具現したものである。憲法の改正を通じて、憲法に中国の改革開放と社会主義現代化建設の順調な進展をより確実に保障させることは、最も広範な人民の根本的な利益に合致することである。今回の憲法改正の内容から見て、「三つの文明」(物質文明、精神文明、政治文明)のバランスのとれた発展を憲法に書き込むことは次のような五つの面で促進的役割を果たすことになる――中国を富強、民主、文明的な社会主義国に築き上げることを促進すること。社会主義の公有制を基礎とすることを堅持するという前提のもとで、非公有制経済の発展を奨励、支持、リードすること。私有財産に対する保護を一歩進めて明確するとともに、私有財産と公共利益の必要との関係を正しく処理すること。公民の権利と自由に対し明確に規定を行うことを基礎に踏まえて、「国は人権を尊重し、それを保護する」という規定を増やすこと。国は経済発展のレベルと呼応し合う社会的保障制度を確立するとともにそれを完全なものにする規定を増やすこと、などである。これらすべてはいずれも最も広範な人民の切実な利益にかかわることである。今回の憲法改正の仕事においては最初から最後まで四つの基本原則(社会主義の道、共産党の指導、人民民主独裁およびマルクス主義・毛沢東思想、鄧小平理論)を堅持し、最も広範な人民の根本的な利益を出発点と立脚点としていることは、必ず社会主義制度の優位性を発揮させ、広範な人民大衆の積極性を引き出し、国の統一、民族の団結と社会の安定を守り、経済の発展と社会の全面的な進歩を促す上で役立つことになろう。そのため、われわれは、今回の憲法改正は大きな成功を収める憲法改正となるに違いないと完全に言えるのである。(筆者は中国人民大学法学院教授・許崇徳氏) 「チャイナネット」2004年2月26日 |